「子どもの近視にはメガネorコンタクト? それとも治療?」近視のリスクと最新治療を眼科医が解説

子どもの近視予防 #4~近視のリスクと最新治療~

眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO:窪田 良

現在、自由診療であれば、近視の治療にはさまざまなものがあります。

角膜の表面にレーザー照射する「レーシック」、眼内にレンズを入れる「ICL(インプランタブル・コンタクトレンズ)」などの治療も徐々に主流になってきていますが、いずれも子どもには推奨されません。成長過程にある子どもは屈折力や視力が安定していないためです。

・コンタクトで治療する「オルソケラトロジー」
子どもに適応される近視治療としては、まず、相談者さんがおっしゃっている「オルソケラトロジー」があります。ハードコンタクトレンズを寝ている間に着用する治療法です。コンタクトレンズによって一時的に角膜をギューっと圧迫して形を変え、その形状記憶によって翌日の日中は視力が回復してメガネを着用しなくてもよい、というもの。

今ある最新治療の中ではもっともよい方法だと思いますが、使用できる子どもに限界があったりなどの課題もあります。初年度に15~30万円程度、2年目以降は3~6万円程度かかるので、高額な治療です。

・まぶしい目薬「アトロピン点眼薬」
もうひとつ、子どもの近視治療の選択肢として最近登場したのが、「アトロピン点眼薬」です。眼圧検査や屈折検査のときに用いる点眼薬で、点眼すると瞳孔が開き、まぶしく感じます。

この点眼薬を「低容量にして長期間差し続けると近視抑制に効果がある」とシンガポールの医師が発表し、現在、中国や台湾では臨床試験が行われています。日本でも臨床試験中で、現在は自由診療なので月に2500~4000円程度の費用がかかります。こちらは、遠くない未来に承認されるかもしれません。

・目の外遊びをめざした「クボタグラス」
私が経営する会社でも、近視治療を研究・開発しています。まずは台湾で義務化されている「1日2時間の外遊び」(#3参照)を日本の子どもたちにもぜひ実践してほしいです。とはいえ日本では義務化されていないので、難しい場合も多いでしょう。

そこで、1日2時間の外遊びをしたのと同じ効果が期待できる「クボタグラス」というメガネを開発し、2022年から発売しました。米国では子どもも使える安全基準を満たした医療機器として登録されています。現在も国内外でさまざまな臨床試験を行っていて、世界で近視予防や抑制につかえる技術になることを期待しています。価格は77万円と高額です。

これらの最新治療は、近視が増えているアジア圏で進んでいます。まずは「近視は病気」という認識を広めることで、さまざまな研究や開発が加速し治療法が確立していく、と私は考えています。

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眼科医として臨床や研究を重ねた後、眼科領域の治療に関する研究開発を行うベンチャーを起業した窪田先生。

「世界から失明をなくす」ことを使命に活動している窪田先生ですが、その前段階にある「近視」について、もっと多くの人に正しい知識と危機感を持ってほしい、とお話ししていました。子どもの近視、あきらめずに向き合っていきたいです!


取材・文/遠藤るりこ

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「近視は治療が必要な『病気』である」という認識が、世界的に高まってきています。目に関するリテラシーを上げることが、今まさに必要。眼科医で創薬や医療デバイスの研究開発を行う窪田良先生が目について「役立つ」、「世界基準の」情報を伝える一冊『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)。
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くぼた りょう

窪田 良

Ryo Kubota
眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学院在学中に緑内障原因遺伝子「ミオシリン」を発見、「須田賞」受賞。 虎の門病院勤務を経て、2000年から米国に拠点を移し、ワシントン大学医学部眼科学教室助教授就任。2002年に創薬ベンチャー・アキュセラ、2016年に窪田製薬ホールディングスを上場。 「世界から失明を撲滅する」ことをミッションに掲げ、眼疾患に関する研究開発を行う。近著に、『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)。 ・窪田製薬ホールディングスHP ・クボタグラスHP

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慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学院在学中に緑内障原因遺伝子「ミオシリン」を発見、「須田賞」受賞。 虎の門病院勤務を経て、2000年から米国に拠点を移し、ワシントン大学医学部眼科学教室助教授就任。2002年に創薬ベンチャー・アキュセラ、2016年に窪田製薬ホールディングスを上場。 「世界から失明を撲滅する」ことをミッションに掲げ、眼疾患に関する研究開発を行う。近著に、『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)。 ・窪田製薬ホールディングスHP ・クボタグラスHP

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe