「子どもの近視にはメガネorコンタクト? それとも治療?」近視のリスクと最新治療を眼科医が解説

子どもの近視予防 #4~近視のリスクと最新治療~

眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO:窪田 良

近視は失明のリスクにつながる重大な病気

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目というのは、視力が下がってしまっても、メガネやコンタクトで矯正することができますよね。だから、「メガネかけたら大丈夫でしょ」と安易に考えている方が非常に多く、それが近視治療や目の健康に関する正しい知識と危機感を持てない大きな理由のひとつとなっています。

しかし私は、「近視というのは立派な病気」というスタンスです。近視は、「いろいろな目の病気を引き起こす原因になり得る」からです。具体的な病気は、「網膜剝離」「緑内障」「白内障」「近視性黄斑症」などがあります。

近視とは、「近見(きんけん)作業」(物を近くで見る作業)から、目の中の奥行き「眼軸(がんじく)」が伸びて屈折異常が起きた症状のこと。簡単に言うと、近視とは眼球が伸びてしまった状態なのです。

眼球が伸びれば当然網膜も伸び、薄くなって破れたり穴が空いたりしてしまいます。これが「網膜剝離」です。日本人の失明原因第1位の「緑内障」は、眼圧が上昇することで視野が狭まる病気。近視の人は、普通の人よりも眼圧にもろい状態なので、視神経に影響を及ぼすリスクが高いとされています。

「白内障」も、近視による眼球の変化が引き起こしていると考えられます。「近視性黄斑症」は、まさに近視が引き金になって起こる病気です。網膜が伸びて薄くなると、血流が悪くなります。その際、出血したり、物がゆがんで見えたりするようになるのが近視性黄斑症で、日本人の失明原因の上位を占める病気です。

近視が失明に関わる重大な病気を引き起こすリスクがあるというのは、なかなか想像しにくい事実だと思います。「自分が失明するなんてあり得ない」と考えている人は多くいますが、近視の方にとってこのような病気はけして他人事ではないと知っていただきたいです。

近視により将来的な病気のリスクが高まることが明らかになった。  引用:『近視は病気です』(窪田良著/東洋経済新報社刊)より

メガネやコンタクトの正しい選び方・使い方

話はそれましたが、最新治療について語る前に、子どものメガネ着用とコンタクト装着についてもお話ししましょう。

以前は「度の強いメガネをかけると、近視が進行する」と考えられていました。メガネで視力1.2や1.5まで見えるように矯正してしまうと「見えすぎて近視が進む」とか「よく見えることに慣れると良くない」のようなイメージが浸透しており、「子どもには、弱めの度数で矯正するのが安全だろう」という風潮もあったのです。

しかし、これは大規模臨床試験によって「度の弱いメガネをかけている子どものほうが、近視がより進行する」と判明し、全面的に否定されました。私たち眼科医も、最新の研究によってこの事実を知ることになったのです。近年は、フルコレクション(完全矯正)と呼ばれる、しっかりと度数の合ったメガネをかけることが推奨されています。

コンタクトについては、中学生くらいから着用を開始する子どもが多いでしょう。何歳になったら、という明確な基準はありませんが、清潔に扱えるかがポイント。そして、装着時間をできるだけ短くすること、毎日一定の時間使用することなども重要です。

よく「メガネとコンタクト、どっちが目にいいですか?」と聞かれることがありますが、小さな子どもには、コンタクトレンズよりも扱いやすいメガネのほうがいいと私は考えます。

画期的な最新“近視治療”が続々

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