コロナ“第7波”で受診難! 子どもが発熱したら? 家庭内対処を専門家が解説

新型コロナ第7波の今、パパママ、子どもたちが知っておきたいこと #3~突然の発熱への対処法~

国際災害レスキューナース:辻 直美

新型コロナ“第7波”が猛威をふるう今、子どもの発熱を「夏風邪かな」「よくあること」などと決して軽視してはいけない。  写真:アフロ
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子どもが突然の発熱。新型コロナウイルス第7波で感染が急拡大している今、相談窓口の電話はなかなかつながらず、受診や検査までの時間がかかるケースも多発しています。

8月2日には、日本感染症学会などが「軽症なら受診を控えて」と緊急声明を発表しました。こうした中、子どもの急な発熱にどのように対処すればいいのでしょうか。

『新型コロナ✕防災マニュアル』(扶桑社)の著者で、国際災害レスキューナースの辻直美(つじ・なおみ)さんに聞きました。

※これまで(#1#2)を読む

突然の発熱で真っ先にやるべきは脱水状態の回避

新型コロナウイルスの第7波では、子どもの感染者も増えています。

厚生労働省が7月28日に公表したまとめ(※1)によると、7月23~29日までの1週間の間に感染が確認されたのは125万472人(前週比36万5659人増加)。そのうち、19歳以下は33万6501人と全体の26.9%を占めていました。
※1=データからわかる─新型コロナウイルス感染症情報

第7波の影響で、全国の発熱外来にはかつてないほど多くの受診希望者が殺到し、予約がとりづらい状況が続いています。ようやく受診先が見つかっても、医師の診察やPCR検査を受けられるまで何時間も待つことになるケースも珍しくありません。

こうした中、子どもが熱を出したら、どうすれば良いのでしょうか。国際災害レスキューナースの辻直美(つじ・なおみ)さんはこう解説します。

「現在の感染状況下では、熱が出たらまず、新型コロナ陽性を疑いましょう。

『夏風邪かもしれない』『うちの子はすぐ熱を出すから』という思いが頭をよぎるかもしれません。でも、感染拡大中の現実から目を背けると、家族はもちろん、周囲の人を感染リスクにさらすことになります。

感染を広げないためには、子どもも自分も家から出ないのが大原則。その上でまずは子どもが脱水状態に陥ることがないようケアし、状態を観察しましょう」(辻さん)

新型コロナに限らず、子どもの発熱には下痢や嘔吐がつきもの。

猛暑の中、「発熱」「下痢」「嘔吐」が重なると、多くの水分と塩分(電解質)を失い、脱水状態になるリスクが高まります。とくに乳幼児や高齢者は注意が必要だと、辻さんは指摘します。

「発熱への対応は、首とわきの下、両足の付け根を氷のうやタオルに包んだ保冷剤などで冷やす『3点クーリング』が基本です。

これらは一気に、同時に冷やすことが重要で、首だけ冷やしても意味がないので気を付けて。また、おでこを冷やすのは気持ちがいいだけで、熱を下げる効果はないことも知っておいてください。

3点クーリングをしたうえで、水分と塩分、糖分を素早く吸収できるスポーツドリンクまたは経口補水液を少しずつ飲ませます。

脱水症状は尿の色にも表れるので、おしっこの色もよく観察してください」(辻さん)

排尿時の色に関しては厚生労働省の「尿の色で脱水症状チェック」(※2)が参考になります。
※2=尿の色で脱水症状チェック(厚生労働省)

出典:厚生労働省「尿の色で脱水症状チェック」

解熱剤については、どのように考えればよいでしょうか。

「熱が出るのは体内に入ってきたウイルスや細菌を排除し、体を守る防御本能のひとつ。熱が出ても元気があり、水分や食事がとれるようなら、むやみに解熱剤を使わないほうがいいと言われます。

ただ、38℃以上の高熱が続いて、水分や食事が十分とれなかったり、寝付けなかったりする場合は解熱剤の力を借りて体力の消耗を防いだほうがいい場合もあります。

子どもの解熱剤は大人用のものではなく、小児用のものを飲ませる必要があります。

『安易に使わない。ただし、むやみに怖がらず、必要なときは適宜使う』というのが小児科医のスタンダードな対応です。小児用の解熱剤は1日3回しか使えません。8時間効果があり、6時間で効果がだんだん切れます。

ここで熱が上がってこなければ、それ以上飲ませなくて良いですし、熱が上がるようなら再度服用させます。こうした時間経過による変化を知っておくと慌てずに済みます。

日ごろからかかりつけ医に解熱剤について聞いておくことはもちろん、すぐ病院にかかれないときに備え、市販薬を用意しておくことも大切です」(辻さん)

抗原検査は家族全員で実施 抗原検査キットを家族1人に2個ずつ用意

脱水症状を防ぐためのケアをひと通り終えたら、次は発熱外来受診の段取りです。

発熱など新型コロナウイルス感染症が疑われる症状がある場合の相談窓口は地域によってさまざま。また、各自治体が医療機関の負担を減らすために検査キットの無料配布を始めています。

「自分が住んでいる自治体ではどのような相談窓口が設けられているのか、発熱外来をやっている病院やクリニック、検査キットの配布場所や申し込み方法はあらかじめ調べておくことをおすすめします。

相談窓口の電話番号をスマホに登録したり、一覧表を作って家族みんなが見えるところに貼っておけば、もしものときに役立ちます。

ただ、感染拡大状況下では相談窓口に電話をかけてもすぐにはつながらず、すぐ受診や検査を受けられない可能性も大いにあります。混雑していれば、抗原検査キットを受け取れるまでに時間がかかることも想像できます。

できれば、市販の抗原検査キットを家族1人につき、最低2個ずつ用意しましょう。そうすれば、いざというとき『電話がつながらない』『検査もできない』と慌てずにすみます」

抗原検査は発熱した子どもだけではなく、家族全員で実施。小児科では、大人は診てもらえないため、もし、パパママの抗原検査の結果が「擬陽性」または「陽性」であれば、受診先を小児科ではなく、一緒に診てもらえる病院やクリニックに変えたほうがいいと、辻さんはアドバイスします。

「結果が分かったら、子どもの濃厚接触者にあたる可能性がある人に①子どもの発熱状況(いつから、どれぐらいの熱があるか、他の症状もあれば)、②家族全員の抗原検査の結果を連絡しましょう。

濃厚接触者にあたるかどうかの判断は、東京都福祉保健局がまとめた『濃厚接触者判断チェックリスト』(※3)が参考になります。
※3=濃厚接触者判断チェックリスト(東京都福祉保健局)

『気まずくなりたくない』『陰性であってほしい』などの理由で連絡を先送りするケースも見聞きしますが、なるべく早く連絡することをおすすめします。コロナ陽性の可能性があるとわかれば、相手も病院のお見舞いや高齢の親と会うのを避けるなど、リスク回避ができます。

何日も経ってから、『実はあのとき、陽性でした』と伝えるよりも、早めに伝えたほうが人間関係も壊れずにすみます」(辻さん)

「濃厚接触者判断チェックリスト」(左が表、右が裏)は、いざとなったらすぐ使えるよう、出力して家族みんなが見えるところに貼っておくのもおすすめだ。
出典:濃厚接触者判断チェックリスト(東京都福祉保健局)
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