まずは、いろいろな見方があることを知ろう
──自分らしい見方を育てるには、どうすればいいのでしょう?
古田さん:「自分らしい見方」を身につけるには「いろいろな見方がある」ことを知る、これに尽きます。「これが正しい見方だ」という思い込みは捨てましょうということです。
自分が知らない世界を知ることで、自分が知っていた世界とのギャップに驚き、ものの見方の幅が広がります。子どものうちからそういう経験を積み重ねることが、自分らしい見方を鍛える手立てになると思います。
──美術史の教員である古田さんは、人が美術を学ぶ意義をどのように考えていますか?
古田さん:美術を学ぶことは、現実の生活において直接の役には立たないと思います。絵を見たからといって、風邪が治るわけではありませんから(笑)。でも、だからといって「要らない」と切り捨てていいのか。そこで一度、立ち止まることに意味があると僕は思います。
社会がコスパ、タイパと効率主義になっている今、意識が“効率”にとらわれてしまうと、それ以上のものは生まれません。しかし、人間にとって美術は必要なものだったということを、長い長い歴史が証明してきていると思います。
古田さん:もしかしたら“今”の時代に美術を役立てようという考え自体が拙速(せっそく)で、私たちはもっともっと長いスパンで物事を考えなければならないのかもしれません。
人の存在や歴史といった根本的な問いに対して、その答えはすぐには出ないものですから。
さまざまな美術品と直に向き合うと、「なぜ、作者はこれを作ったんだろう?」という理由を直感的に感じ取れることがあります。
そういった美術品が集まって少しずつ歴史が作られ、その一番新しいところに自分がいるということを認識する。言葉に表すことができないようなそうした経験や感覚は、芸術に触れることでしか得られないものだと思います。
激変する社会を生きていくうえでは、多角的なものの見方ができること、そして自分らしい見方を持つことがとても重要だと思います。今回の展覧会では、「いろいろなものの見方がありますよ」ということを伝えたいと考えています。
編集部が提案! おうちでできる「藝大式・美術のミカタ」
最後に、本と子育てのウェブメディア「コクリコ」編集部より、古田教授のお話をふまえた、この夏をさらに楽しむためのおうちでの「ひと工夫」をご紹介します。
古田教授のお話にあった「既存の解説を疑い、自分なりの言葉で表現する」というステップ。これは展覧会を観た直後だけでなく、おうちでの日常会話でも簡単に実践できます。
例えば、お子さんがお気に入りの絵本やイラストを前にしたとき、親が「上手だね」と評価するのではなく、教授お墨付きの質問「ひとことで言うと、どんな感じ?」と投げかけてみてください。
子どもから「なんだかウズウズする」「色が強そう」など、主観的な言葉が出てきたら大成功。大人に教えられた正解ではなく、自分自身の目で世界を客観的に捉える、一生モノの「観察眼」の第一歩がおうち学習から始まります。
取材・文/木下千寿
撮影/柏原力
全2回の1回目
2回目を読む※2026年●月●日公開
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