【働くママの労働問題】「103万円の壁 結局どうなったの?」働いている人みんなに関係する話[社労士が回答]

103万円の壁(前編) 働くママのお悩み解決 職場問題モヤモヤ相談室【連載】第5回 (2/2) 1ページ目に戻る

社会保険労務士、行政書士:小西 道代

2025年度から「103万円の壁」は「160万円の壁」に変更! でも……

103万円の壁とは、所得税の支払いが生じる境界線のこと

103万円の壁というと、パート・アルバイトだけにかかわる話だと勘違いする方もいますが、所得税のことなので、正社員、派遣、契約社員にも関係する内容です。

自分だけでなく、働いているパートナーにもかかわることなので、まずは前提を理解しておきましょう。

さて、ニュースなどでは「壁」に関してさまざまな金額、情報が飛び交いましたが、2025年の税制改正で、「年収に応じて非課税枠を最大160万円※まで引き上げる」ことになりました
※金額の内訳は次表参照(基礎控除95万円+給与所得控除65万円=最大160万円)

措置は、令和7年度(2025年度)の年末調整から実施されるわけですが、ここで注意してもらいたいことがあります。

それは「年収に応じて」壁の高さが変わるということです。次表のとおり、所得税がかからない壁の金額が160万円になる方は、年収200万円以下の給与所得者のみになります。

表は編集部で作成
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壁は、年収が高いほど徐々に低くなり、控除額が減ります。たとえば、年収が475万円以下なら壁は153万円に、年収665万円以下なら壁は133万円です。

さらに、年収200万円~850万円までの方の基礎控除額は、2025年度と2026年度の2年間限定で5万円~30万円が上乗せされているため、その期間が終わると壁の高さはもっと低くなり、非課税枠はいずれも123万円に下がります。

年収200万円~850万円までの方は2025年度と2026年度の2年間は手取りが多少、増えますが、限定措置の終了後は非課税枠が縮小するので、手取りが減ることを把握しておきましょう。

─働くママの声への回答─

2025年度から「103万円の壁」は「最大160万円の壁」に変更されます。
ただし、年収に応じて壁の高さ(非課税枠)が変わることも把握しておきましょう。

今が働き方を見直す最終のタイミング! 所得税の非課税枠160万円まで働いたら手取りはいくらになる?

パート・アルバイトとして働いている場合、所得税の非課税枠が最大160万円になったのだから、その金額まで働きたいと思っている方もいるはずです。では、160万円まで働いたら、手取りはいくらになるでしょうか。

ただし、ここで忘れてはならないことがあります。非課税枠160万円は所得税の話であり、そのほかの公的負担である「社会保険料」と「住民税」の要件は変更されていないことです。

つまり現在、パートナーの扶養になっている方が160万円まで働いた場合は、扶養から外れて「社会保険料」と「住民税」が発生します

社会保険料は年間約24万円、住民税は自治体にもよりますが約3万円かかるため、手取りは約133万円になります。

現在、パートナーの扶養になっている場合は、扶養内でこのまま働くか、将来を見据えた保障を確保し、少しでも収入を増やすために扶養を外れてできる限り働くか、働き方を考える最終のタイミングがきているといえるでしょう。

年内やこれからの働き方について、パートナーと改めて話し合って、家計を見直してみてください。

※「103万円の壁 結局どうなったの?」は次回、後編をお届けします。テーマは、扶養内パートで働く場合、いくらまでなら働ける? などです(後編を読む/公開日までリンク無効)。

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こにし みちよ

小西 道代

Mishiyo Konishi
社会保険労務士、行政書士

社会保険労務士法人トップアンドコア代表。行政書士法人グローアップ代表。All About労務管理ガイド。大学卒業後に日本マクドナルドに入社。多数の店舗運営を行い、幅広い年齢層の人々と一緒に働くことで労務管理・組織運営に興味を持つ。その後、法律事務所や社会保険労務士事務所に勤務。カフェ経営も経験し、労働者と経営者の両視点を養い、働く場には風通しのよい労働環境や組織づくり、ルールが重要だと痛感する。現在は正社員から派遣社員、アルバイト、経営者の広い視点を活かした労務相談を行っており、事案のアドバイスだけでなく解決へも導いている。 著書に『正社員で働く人のための労務問題のトリセツ』(つちや書店)がある。

社会保険労務士法人トップアンドコア代表。行政書士法人グローアップ代表。All About労務管理ガイド。大学卒業後に日本マクドナルドに入社。多数の店舗運営を行い、幅広い年齢層の人々と一緒に働くことで労務管理・組織運営に興味を持つ。その後、法律事務所や社会保険労務士事務所に勤務。カフェ経営も経験し、労働者と経営者の両視点を養い、働く場には風通しのよい労働環境や組織づくり、ルールが重要だと痛感する。現在は正社員から派遣社員、アルバイト、経営者の広い視点を活かした労務相談を行っており、事案のアドバイスだけでなく解決へも導いている。 著書に『正社員で働く人のための労務問題のトリセツ』(つちや書店)がある。