子どもの勉強 「苦手意識」を克服する「没頭力」を人気教育家が解説

教育家・石田勝紀さんに聞く、勉強に「好奇心」を持ってもらう引き出し方 #2 苦手意識を自然となくす方法

教育家:石田 勝紀

教育家の石田勝紀さん。20歳で起業し、学習塾をはじめた異例の経歴をお持ちです。
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これまで5万人以上の子どもに学習指導をしてきた教育家・石田勝紀さんに聞く、「勉強に興味が持てない」子への対処法。

1回目では、勉強はエンターテインメント性を持って、子どもの好奇心を引き出す方法を教えていただきました。

2回目では、「自分は勉強が苦手」だと思い込んでいる子どもへの対処法についてです。ママパパは、子どもの苦手意識をどのように払拭してあげるとよいのでしょうか?


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石田勝紀(いしだ・かつのり)
1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。

ありのままの子どもを認めることが苦手克服の第一歩

──勉強に対して、最初から苦手意識を持っていたり、「勉強」と聞いただけで気持ちが落ち込んでしまう子がいます。そうした子たちの意識を変える方法はありますか。

石田勝紀さん(以下、石田さん):まずは苦手意識をどこで身につけてしまったのかを考えてみましょう。

原因はひとつとは限らないんですよ。親の期待が高すぎることで、子どもが心に負担を感じる場合もあれば、先生の何気ないひと言に傷ついたり。

また、授業中、ほかの子はできているのに自分だけできない場面で「自分は勉強が苦手なんだ」と、本人が勝手に思い込んでしまうケースもあります。

でも、もし苦手意識があっても、無理になくそうと思わないほうがいい、と私は思っています。

例えば、食べ物に置きかえてみましょう。ピーマンが苦手だと思い込んでる子に、細かく刻んでみたり、ハンバーグに練り込んでみたり。なんとか食べてもらおうとしても、子どもは、そういう大人の作為には敏感ですよね。緑色のかけらが目に入った途端、その料理自体を拒否してしまう。

こうなると、料理を作る親御さんのほうもつらいし、食べるほうの子どももつらくなってしまう。これと勉強も同じで、親が強制すると子どもはやらないし、やったとしても形だけになる場合が多いんです。

苦手意識というのは、意識すればするほど克服できないもの。だから、まずは苦手を置いておいて、子どもが得意なことに目を向けてみましょう。

「お子さんの得意分野を知っていますか?」(石田さん)

石田さん:ただ、これには親御さんの忍耐力も必要です。この状態になるまでは、少し時間がかかりますから。だけど、親は子どもの長所を見つけて、教えて、応援してあげましょう。好きなものへの「没頭力」こそが、勉強への苦手意識を克服する第一歩になります。

──まずは「好きなこと」を伸ばすことが大切なんですね。とはいえ、どの分野に対しても、そこそこの興味しかなかったり、さほど熱心に取り組めない子の場合は、どうしたら良いでしょうか。

石田さん:それは、本人が没頭できるものにまだ出会っていないと考えられます。その場合は、どんどん浅く広くいろいろ体験させて、幅を広げていきましょう。いずれリンクして、好きなこと、得意なことの発見につながりますよ。

勉強の世界に限って言えば、すべての科目が苦手だったとしても、それぞれ程度の差はあると思うんです。
例えば、「超苦手」、「苦手」、「見たくもない」とか。でも「これならやってもいい」ぐらいというものがひとつあれば、その科目に集中したほうが成績も上がりやすいんです。「超苦手」、「苦手」な科目はやっても伸びませんから(笑)。

最初のひとつが上がり始めれば、ほかの科目にも関心を示すようになっていきます。

──それは面白いですね。そして何より、親の意識の転換が必要だと思いました。

石田さん:そうですね。短所を直すのは時間もかかるし、それと同時に長所を伸ばすことも難しいので、どっちつかずになってしまいます。

「自分はこれが得意だ!」と胸を張れるものを持つ子のほうが、これからの時代を自分らしく生きられるのではないか、と私は思っています。

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