「国際バカロレア」認定校が127校に 幼稚園〜高校で「知識」だけでなく「概念」も学ぶ理由〔専門家が解説

「国際バカロレア」 #1 玉川大学大学院教授・星野あゆみ先生インタビュー

認定校は私立・公立・インターまでさまざま

──国際的なカリキュラムということですが、学習内容も一般的な日本の学校とはだいぶ違うのでしょうか?

星野先生:IBは先ほど挙げた10の学習者像やさまざまなスキルを育むために「どう学ぶか」の枠組みを定めたもので、「何を学ぶか」はPYP とMYPは各国、各学校に委ねられていますし、DPやCPでも学習指導要領の内容とうまく整合性を取りながら決めることが可能です。

日本国内の認定校も、インターナショナルスクールから私立や公立の一条校(学校教育法第1条に規定されている幼稚園や学校)までさまざまですが、一条校では、学習指導要領で定められている内容をIBのプログラムに合わせて組み直すなどの工夫をして指導しています。

つまり、世界で活躍できるスキルや人間性を磨きながら、日本で必要とされる学力もきちんと獲得することができるのです。

「ただ教えたことを覚えさせるのではなく、なぜ学ぶのか、この学びが社会でどう役に立つのかを意識する学習をし、自律的な学習者を育てるのもIBの特徴です」(星野先生)。

認定校が増えている理由

──ここ数年でIBの認定校が増え、注目されているのはどうしてでしょうか?

星野先生:実は日本でのIB教育の歴史も意外と古く、1979年から始まっています。そこから普及に向けてさまざまな検討や協議が重ねられて、2013年に文部科学省との協議会が立ち上がりました。

──国としてもIBを推しているんですね。

星野先生:これまで日本の学校ではとにかくたくさんの知識を詰め込む教育が行われてきました。しかし、さまざまな格差や、少子高齢化、温暖化など、答えのない問題が山積みの今、求められる人材も変わってきています。AIの存在感も高まっていますしね。

2020年から完全実施された現在の「学習指導要領(注1)」には、「主体的・対話的で深い学び」という言葉が盛り込まれ、探究心や批判的思考力の育成が求められるようになりました。実はこの内容がIBとシンクロする部分がとても多いんですね。

しかし多くの学校では、実際に何をどう変えていけばよいかわからないというのが現実です。先生たちはとても忙しく勉強する時間がなかなかとれませんし、何より先生たち自身が知識詰め込み型の教育しか受けてこなかったからです。

そこで、最新の研究に基づいて開発更新されているIBのプログラムを導入する学校が増えているのです。

注1:文部科学省「新学習指導要領」

国際バカロレアの試験は日本語で受けられる科目も

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