
【区立西新宿小学校】通知表・単元テスト・宿題廃止から2年 「子ども主体」へ変わった学校に「適度なぐだぐだ」が必要なワケ
学校の「当たり前」を考える 西新宿小学校の改革 #4 子ども主体の授業・行事
2025.05.20
新宿区立西新宿小学校校長:長井 満敏
子どもが「はつらつ」と取り組む体験型学習
改革により長井先生が最も着手したかったのは、子どもたちが自分の興味や関心のあることを学べる環境づくり。その一つが「プロジェクト西新宿」という体験型学習です。
4年生以上を対象に、地域の企業や大学、専門学校などがワークショップ型の授業を開設し、子どもたちは希望する講座を選びます(参加は自由)。
長井先生は講座開始の経緯を、「西新宿小学校は周辺にたくさんの企業や学校があることが強み。そこをいかして新しい学びを創っていきたいと考えました」と話します。
2023年度から年間3回ほど開催し、毎回70~100人前後の子どもたちが参加。講座は各回10種類以上あり、普段の学習とは異なるユニークなものがずらりと並びます。

2024年度2月の実施内容を見ると、獣医体験やエアコン分解、プログラミング、メイクアップにボルダリング、モルックなど盛りだくさんです。
実際に講座の様子を取材すると、そこには、純粋に目の前のことを楽しむ子どもたちのはつらつとした姿がありました。
プログラミング講座では、専用ソフトを使ってオリジナルゲームを制作します。子どもたちは解説書に沿って自分のペースで進め、わからないことは講師2人がサポートします。

開始直後からひっきりなしに質問の手が挙がり、子どもたちは真剣そのもの。全員が集中しているためか空気がピンと張り詰め、心地よい緊張感が漂っていました。
次に訪ねた「メイクアップの世界を知ろう」の教室では、まったく異なる雰囲気で講座が進んでいます。楽しそうな会話や笑い声が飛び交う中、子どもたちは熱心に手を動かしていました。
美容専門学校が開講したこの講座では、プロ仕様のメイクパレットを使い、フェイスチャートと呼ばれるイラストに自由に色をのせていきます。みんな目を輝かせ、自分の「好き」をメイクで表現していました。

興味を深める探究学習も導入
2024年度からは、年間を通して興味分野を学ぶ「テーマ学習」も開始しました。「プロジェクト西新宿」が単発講座であるのに対し、テーマ学習は継続的に行う探究学習に近いといいます。
4年生以上が提示されたテーマからやりたいものを選択し、年間18時間(2時間連続で9回)、総合的な学習の時間を活用して学びます。テーマは事前に子どもたちから取ったアンケートと、先生方の得意分野を勘案して設定しました。
スポーツ、プログラミング、ファッション、物語、歴史など、こちらも多種多様な内容です。また、テーマ学習でも外部講師を招いたり、フィールドワークを行ったりする回があるなど、子どもたちの好奇心を刺激する工夫も取り入れています。
「とはいえ、実際にやってみると、改善点もたくさん見えてきました」(長井先生)
長井先生が担当したサイエンスグループでは、興味の方向性、子どもたちの経験面などから、当初想定した「自分でテーマ設定して進める学習」は難しかったといいます。このため、1回ごとにみんなでテーマを決めて、一緒に取り組む形にしました。
一方で、物語や歴史などのグループは、各々が好きなテーマを設定し、調べたり創作したりしながら深めることができたといいます。いずれにせよ、「先生が教える」とは別の学習スタイルの実践につながりました。2025年度も、課題を改善しながら継続していく予定です。