【親の残念な口癖】が子どもの成長に悪影響 幸せな親子になれる「言い換え」と「テクニック」を〔教育評論家・親野智可等先生〕が徹底解説

子どもをダメにする親の口癖 #3

教育評論家:親野 智可等

宿題には、意欲的にさせるコツがあります。  写真:アフロ
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やってほしいことに対しては、ワンクッションという魔法を!

─問題─
遊びに夢中で宿題にとりかからなかったり、宿題はやったけれど字が汚かったり、誤字を書いていた子どもに対して、ご自身に近い対応を次から選んでみてください。

① 「宿題しなさい!」と、何度も言い聞かせる。
② 「この字がダメ。書き直しなさい」と、ダメな部分を指摘してやらせる。
③ 「宿題、ちゃんとやったら100円よ」と、ご褒美をチラつかせる。
④ 「たくさん遊んだね/よく書けているね」と、まずは状況を丸ごと肯定的に受けとめたり、褒めたりする。

「①~④の中で親御さんにとってほしい対応は、④です。

①と②は、宿題は不愉快なものだと伝えていることになります。③のご褒美作戦には副作用があり、かつて私の教え子にも『いくらくれる?』が口癖の子がいて、物事の価値観に影響が出ていた子がいました。

子どもに取り組んでもらいたいものがある場合は、まずは丸ごと肯定的に受けとめたり、褒めていい雰囲気をつくったりしてから、やってほしいことに導きましょう」(親野先生)

親が心がけたい言い換えフレーズ

「宿題しなさい!」
「この字がダメ。書き直しなさい」
「宿題、ちゃんとやったら100円よ」
「たくさん遊んだね。楽しかったね。そろそろ宿題しようか」
「よく書けているね。この字はバランス良くきれいに書けているから、これと同じようにこっちの字を直そうよ」

大人でも上からガミガミ命令されたり、「字が雑だから、書き直し」と頭ごなしにいわれてやる気が出る人はいません。

子どもであればなおさらなので、まず先にいい雰囲気をつくるというワンクッションをおいてから、取り組んでもらいたいことにつなげましょう。

〈子どもの夢中〉は脳力を伸ばす絶好のタイミング

「早く宿題をしてほしい」「早くご飯を食べてほしい」と、大人はつい子どもを急かしてしまいますが、子どもが遊びに熱中しているなら、たまには付き合ってあげることも大切です。

好きなことに集中しているとき、脳の中ではニューロン同士をつなぐシナプスが増えていっています。

情報処理を担うシナプスの数は、頭の良さに関係しているといわれているので、子どもがひと区切りつくまで見守ってあげる日をつくってもいいでしょう。

「今日も子どもと一緒に楽しく暮らそう!」で、幸せな親子関係に

親の言葉は子どもにとって最大の環境であり、子どもの成長に環境が与える影響は非常に大きいと親野先生はいいます。

実際、親御さんの中には、自身の親が何気なく口にしたひと言を大人になった今でも覚えていて、それを思い出しては苦しくなっている方もいるはずです。

だからこそ、子どもには、否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉をかけることが大切です。

「子どもの将来を思って、親は応援するつもりでつい厳しい口調になってしまいますが、勉強やしつけに一生懸命になるよりも、『今日も子どもと楽しく暮らそう!』という気持ちを優先してください。

立派な親にならなくていいから、幸せな親子になってほしいと私は心から思っています」(親野先生)

肯定的な言葉を使うと、親子関係が良くなり、子どもの自己肯定感や他者肯定感が自然と高まります。声かけひとつで子どもは変わっていくので、今日から子どもが伸びる言葉を選んで使ってみてください。

─◆─◆─◆─◆─◆─◆

◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。

【子どもをダメにする親の口癖】の連載は、全3回。
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※公開日までリンク無効

取材・文/梶原知恵

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おやの ちから

親野 智可等

Chikara Oyano
教育評論家

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。