「理科嫌い」の原因は? 子どもを理科好きに育てるコツを理科実験の第一人者が伝授

我が子が未来の科学者に!? 楽しく理科の力をつける方法 #1

「これなんだろ?」「どうしてこうなってる?」から理科の力は育っていきます。  写真:アフロ

子どもの勉強で親が教えたり、塾や習い事の中で力を入れたいと思ったりする科目には「国語」「算数」「英語」が並ぶでしょう。学校の宿題としても出される率が高く、中学やその後の高校、大学受験も考えると意識せざるを得ません。

しかし、「理科」という分野も先に挙げた科目と同じくらい重要です。なぜなら現代社会は科学や技術の上に成り立っていて、私たちの生活に直結しているからです。

「科学の楽しさをすべての人に」伝えるために実験の開発などを行い、理科教育の改善にも長年にわたって尽力している滝川洋二(たきかわ ようじ)先生に、理科の力の重要性を伺います(全3回の1回目)。

◆滝川洋二先生プロフィール
教育学博士。NPO法人ガリレオ工房理事長。NPO法人理科カリキュラムを考える会理事長。東京大学非常勤講師。ケンブリッジ大学にて理科教育研究を行った経験も持つ。「科学の楽しさをすべての人に」伝えるためにさまざまな取り組みと理科教育の改善に尽力している。テレビドラマ『ガリレオ』や映画ガリレオ『沈黙のパレード』の実験の監修者でもある。

私たちの暮らしは衣食住どれをとっても科学と技術の結晶

小学校で勉強する科目は、どれも等しく重要です。

それは小学校で得た知識の上に中学校や高校、それ以降の勉強が積み重なっていくという意味もありますが、子どもたちが大人になった際の判断する力や、考える力、理解する力の元も小学校での教育がベースになるからです。

とはいえ、親御さんとしては学校から出される日々の宿題や近い将来に訪れる受験のことを考えると、国語や算数、英語に目を向けざるを得ません。

主要科目のうち、理科分野はどうしても二の次になってしまいますが、理科教育の重要性を長年にわたって説いている滝川洋二先生は、理科の力をつけるメリットを次のように話します。

「これは理科を学ばなければならない理由にもつながることですが、私たちの生活、つまり衣食住のすべてが科学や技術の恩恵の上に成り立っていることを考えればわかるでしょう。

例えば無農薬野菜を食べるためには農業技術がないと野菜を育てることができません。

加えて、遠方で作られた食べ物を家で新鮮な状態で食べるには、輸送技術はもちろんのこと、配送段階でもおうちでも冷蔵技術が必要なんです。そうやってようやく、私たちの口に入るんです」(滝川先生)

先生のいうように、食事ひとつ、食材ひとつをとってみてもさまざまな科学と技術の上に成立しています。

実際1日の暮らしを順に追ってみても、現代はそれらがないと生活していけないことがわかり、その重要性を感じずにはいられなくなります。

理科の力がないと「命が危ない」ってどういうこと?

滝川先生は理科の力がないと、生活する上で「危ない」と続けます。それはいったいどういうことなのでしょうか。

「実は、理科の力が備わってないと世の中のデマを見抜くことができないのです。

現代はネット上でたくさんのフェイクニュースが流れていますが、理科の基礎的な知識や精神を持っていないとウソの情報に飲み込まれてしまう危険性があります。

新型コロナウイルスが流行した当初、食べ物による予防法など、さまざまなウワサが流れたことを覚えているでしょうか。

これらのどれが正しく、どれがデマかを見極めるには、ウイルスの仕組みをはじめ、人の生物学的側面などと照らし合わせる必要がありました。

学校で学んだことですべてが対応できるわけではありませんが、情報を精査する必要が出てきた場合、人体やウイルス、環境などの知識や自分で調べたことを整理して論理的に考えるという理科の力が、自分や家族の生活を守ることにつながります」(滝川先生)

滝川先生は、理科はいい意味での「批判的な精神」を育むといいます。これは「この情報は正しいのだろうか?」「別の視点で考えたらどうなるか?」といった探究心を指します。

疑問に思う気持ちや物事を解明しようとする行動は、この先の新しい技術や発見を生み出す力としても表れるのです。

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