「理科嫌い」の原因は? 子どもを理科好きに育てるコツを理科実験の第一人者が伝授

我が子が未来の科学者に!? 楽しく理科の力をつける方法 #1

子どもが理科嫌いになるワケ

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学校の勉強は学年が上がると当然、難しくなります。それに伴って、どの教科においても嫌いや苦手を感じる子は出てきますが、理科の場合、そうさせないためには何が大切なのでしょうか。

「子どもが理科への興味を失わないようにする前に、まずはなぜ理科嫌いや苦手になるのか理解することが大切です。

実は子どもは本来、花や葉っぱ、動物に興味を持っているなど、理科が好きな子が多いと思います。

ただそれが、学年が上がって理科の中に計算が出てきたり、難しい解説(理論)が出てきたりすると、理解が追いつかなくなって理科嫌いや苦手になってくるのです。

また、これは日本の教科書の問題点でもありますが、おもしろさに欠けていることも嫌いあるいは苦手を生む要因だと感じています。

僕は海外で使われている理科の教科書を手にしたことがあるのですが、子どもがひとりで読んでも理解できるような工夫がされていました。

日本の教科書は短い言葉で正しく書かれてはいるのですが、先生などからの説明がないと子どもだけで一から理解をするのは難しいのです。

さらに教科書には学ばなければならない内容は書かれてはいますが、子どもたちの心の流れは踏まえられていません。

例えば、第1単元は天気がテーマで、第2単元は水溶液、第3単元は振り子といった具合に教科書が構成されているとします。

天気への興味が湧き上がって子どもは空に対してたくさんのワクワクや疑問を持ったのに、単元が終わると次はまったく別の内容が始まります。

先生にしても、新しい単元が始まるごとに0から授業をスタートし、子どもたちの学習する気持ちを高めていかなければなりません」(滝川先生)

滝川先生は、理解に関しても、学ぶ意欲に関しても置いてけぼり状態になると、理科嫌いや苦手になると話します。

せっかく楽しく勉強していたのに、目の前の内容についていけないと子どもは感じると、次第に「なんでこんなことをやらなきゃいけないのだろう……」と思うようになり、理科離れが進んでいきます。

学年が上がると勉強は難しくなるのは当然ですが、理解度も心理面も置いてけぼり感があると理科離れを引き起こしやすくなります。  写真:アフロ

子どもの理科嫌い・苦手をなくすために親が日常でできること

理科という分野は、衣食住すべてに結びついています。ですから、子どもの理科への興味を伸ばすきっかけは意外と日常に転がっています。

「例えば雨が降ってきたら、外に出て水の流れを親子で見てみるのもいいでしょう。雷が鳴ったら空を見上げてみたり、音の方向に耳を澄ませてみたりするのもいいですね。

自然現象は、理科への興味の芽生えと意欲を継続させるごく身近な動機になります。

以前、小学校中学年を受け持っていた先生で、こういったちょっと『おや?』と思う自然体験を作文や詩の創作まで落とし込んでいた方がいました。

知識を教えるというよりも自分たちの生活の中から関心や好奇心を広げていて、かつ子どもたちの学ぶ(知る)のが楽しいという気持ちを上手に高めた好例だと感じました」(滝川先生)

図書館で子どもの興味と物事を解釈する力を育てる

自然現象をはじめ、子どもが花や草、あるいは動物などに対して疑問を持ったなら、親子で図書館に行って調べてみることも理科の力を高めるコツです。

「図書館に行ったなら、子どもの興味に合わせて意識的に理科の本を探してみてください。実は子ども向けに書かれた本はとても優秀です。

僕は文献なども読みますが、いまだに子ども向けの本も参考にするぐらい、それぞれがおもしろく、絵や図、写真を多用してわかりやすく書かれています。

また、本に触れることで読解力もつきます。まだ本が読めない年齢の子なら、親御さんが読み聞かせることでその力を伸ばしてあげることができます。

本を読むことは本当に重要です。小学校高学年で理科が嫌い、あるいは苦手になる子は、難しい解説(理論)が理解できない傾向にあるのですが、これは文章を読み取る力が足りないことが原因のひとつと考えられます。

ですから、子どもが身の回りに疑問を抱いたときは興味を広げ、あるいは深めてあげるチャンスでもありますが、物事を解釈する力も育ててあげられる機会だと捉えるといいでしょう」(滝川先生)

滝川先生は水というテーマだったら、水のことを同じように書いている本をいくつも比較して読むのもおすすめだと話します。

読み比べをすると「こっちの本は海の水がどうしてしょっぱいのかをテーマにしている」「あっちの本は水がどこからやってくるのか書いてある」など、ひとつの物事に対して視点と知識を広げてあげることができます。

図書館という施設や本は、子育てや教育の場でたびたびその重要性が取り上げられます。滝川先生も理科の力を育み、理科離れをさせない要素としてそれらの利用を強く訴えます。


次回は、子どもの理科への興味を楽しく高めるコツとして、おうちでできる簡単な観察や実験を紹介します。

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滝川 洋二(たきかわ ようじ)
教育学博士。NPO法人ガリレオ工房理事長。NPO法人理科カリキュラムを考える会理事長。東京大学非常勤講師。元東海大学教育開発研究所所長。元東京大学特任教授。元国際基督教大学高等学校教諭。ケンブリッジ大学にて理科教育研究を行った経験も持つ。「科学の楽しさをすべての人に」伝えるためにさまざまな取り組みと理科教育の改善に尽力しており、その功績が讃えられて2005年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。テレビドラマ『ガリレオ』や映画ガリレオ『沈黙のパレード』の実験の監修者でもある。

【主な共著や監修書】
「どうすれば『理科』を救えるのか──イギリス父子留学で気がついたこと」(亜紀書房)
「発展コラム式 中学理科の教科書 改訂版 物理・化学編 」「同 生物・地球・宇宙編」(講談社 ブルーバックス)
「小学館の図鑑NEO 科学の実験~あそび・工作・手品~」(小学館) など多数


取材・文/梶原知恵

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かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。