【親の残念な口癖】が子どもの自己肯定感に悪影響 「我が子が友だちとケンカした」親がとるべき正解の対応〔教育評論家〕が伝授

子どもをダメにする親の口癖 #2

教育評論家:親野 智可等

「先生に𠮟られた」「友だちとケンカしちゃった」と子どもからいわれたら、親としてどんな対応をしますか?  写真:years/イメージマート
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「今日、先生に𠮟られちゃった」に対する正解の対応とは?

─問題─
『今日、先生に𠮟られちゃった』『友だちとケンカしちゃった』といって、しょんぼりしている子どもに対して、ご自身に近い対応を次から選んでみてください。

① 「あなたが悪いことをしたんでしょ」と、指摘する。
② 「気にしなくても大丈夫」と、すぐに励ます。
③ 「明日、謝ったらいいよ」と、すぐにアドバイスする。
④ 「𠮟られたんだ/ケンカしたんだ、大変だったね」と、まずは丸ごと受けとめる。

この場合の対応でいいものは、④のみ。①、②、③は、実はNGの対応です。

①はNG対応と知っている方が多いので避けられていますが、②や③のようにすぐに励ましたりアドバイスしたりしてしまう方は多いのではないでしょうか。

しかし、これだと子どもは話したいことが十分話せなくなってしまいます。ストレスをため込むことになり、気持ちの整理もできません。

愚痴をいえなくなった子どもは、気持ちをすっきりさせられないばかりか、『パパ(ママ)は話を聞いてくれない! すぐお説教する』とも思ってしまいます。

ですから、ここは④のようにまずは共感的に受けとめることが必要です。そうすれば、子どもは『パパ(ママ)は自分の話を聞いてくれる。わかってくれる』と感じます。

そして、パパママへの信頼感が爆上がりしたところで、『それで、どうしたの?』と、子どもの話を聞いてあげる流れがベストです」(親野先生)

親が心がけたい言い換えフレーズ

「今日、先生に𠮟られちゃった」
「友だちとケンカしちゃった」
「𠮟られたんだ/ケンカしたんだ、大変だったね。それで、どうしたの?」

子どもはたくさん話して、親に共感してもらえると、自分の中で気持ちを整理していきます。励ましやアドバイスは、発散させたあとに行うのがいいタイミングです。

共感せずに、急に励ましたりアドバイスしたりすると、子どもは「パパ(ママ)は気持ちをわかってくれないのに、○○すればいいだなんて見当違いだ」「そんな簡単な問題じゃないんだ」と不満を募らせます。これがのちに、親の話を聞かなくなる原因になります。

共感と安易な同調の違いを理解することも大切

前述の答え「④」は共感の姿勢です。しかし、共感を通り越して「安易な同調」になってしまう人もいるので、ここは区別する必要があると親野先生は続けます。

「『共感』と『安易な同調』の区別や理解は難しいので、たとえば4年生から遊べる遊具があったとして、3年生の我が子が、それで遊びたいといってきたときの親の対応で考えてみましょう。

AとB、どちらの対応をしますか?

「面白そうだね。でも、4年生から遊べるものだから、来年になるまで待とう。あっちにも面白い遊具があるから行ってみよう」

「面白そうだね。○○ちゃん(くん)は体が大きいから4年生に見えるし、誰もみていないから、遊んでも構わないね」

Aは共感、つまり和して同ぜず(協調はするけれど、同調はしない)という姿勢です。

一方、Bが安易な同調です。この場合は、ルール違反を積極的に子どもに教えていることにもなるので、どちらが親がとるべき対応か、おわかりになるでしょう」(親野先生)

「安易な同調」は、ママ友同士や職場でも気をつけるべきことです。

その場にいない人の悪口を聞いたときに、「それは困りますね」などの共感でやめておけばいいのに、「ねえ、知ってる? ○○さんて、あのときもこんなことをしたのよ……」などと、余分なことをいって悪口をヒートアップさせてしまうのは安易な同調です。

相手が子どもでも大人でも、大切なのは「安易な同調」ではなく、「共感」することです。常に適切な「共感」を心がければ、人間関係を良好なものにしていくことができます。

次回は、「仲良くしなきゃダメだよ」「次はこっちも頑張ろう」など、親が反射的に使っている言葉の言い換えフレーズを解説します。

─◆─◆─◆─◆─◆─◆

◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。

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取材・文/梶原知恵

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おやの ちから

親野 智可等

Chikara Oyano
教育評論家

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。