
小学4年生が見つけた科学の法則とは? 筑波大学主催「科学の芽」賞受賞・科学の芽えほん原案者にインタビュー!
『たおれる? たおれない? 3本あし』原案者・菊地灯さんを取材
2026.01.28
小学4年生で、筑波大学朝永振一郎記念「科学の芽」賞を受賞した菊地灯(きくち あかり)さん。その研究が、絵本になりました! 高校1年生になった灯さんに、自由研究の思い出や現在のようすについて取材しました。
菊地灯さんは、2019年、小学4年生のとき、「3本足のひみつ」という自由研究で、筑波大学朝永振一郎記念第14回「科学の芽」賞(小学生部門)を受賞しました。
「科学の芽」賞とは、筑波大学が主催する、小・中・高生の優れた自由研究に与える賞。2006年に創設された全国規模の科学コンクールで、2025年に20周年を迎えました。
『たおれる? たおれない? 3本あし』の試し読みは、こちら(公開日までリンク無効)
──6年前の受賞研究は、ピアノコンクールの前日、ピアノのペダルを踏むための足台のあしが1本折れてしまった、どうしよう、というところから始まります。3本あしでもしっかりしている足台を見て、灯さんは、3本でも倒れないのはどうしてか? その条件を調べてみようと思い立ちました。今振り返ってみていかがですか?
菊地灯さん(以下灯さん):この実験は、わたしにとって、今でもとても印象深い研究です。改めてレポートを読みかえすと、当時の気持ちが懐かしくよみがえってきました。
3本あしが、安定して立つ場所を、あしの位置を変えながら、アクリル板にマーカーで点を打っていく実験です。はじめは好奇心から楽しく実験を行っていたのですが、進めていくうちに「この研究で3本あしが安定して立つ条件を見つけることはできるかな?」と、心配が大きくなっていきました。
あせりを感じながらも、それでも板の形やあしを置く位置のパターンを変えながら、思いつくまま実験を続けていくと、突然、はっと「すべての図形がアクリル板の中心点を通っているみたいだ!」と気がつきました。
──「自分で」考えた実験で大きな発見ができたのはすばらしいですね。物理の範囲にもおよぶような法則を見つけ出しました。
灯さん:このときの感動は映画のコマ送りのように今でもしっかり覚えています!
はじめ、円の図形が必ず中心点を通っていることに気づいて、「もしかしたら……」と急いでほかのすべての図形を調べてみました。
大発見の予感に、そのときは手が震えていて、祈るような気持ちでした。そして、すべての図形が中心点を通っていることを確認できたとき、飛び上がって歓声をあげました。まさに、「ひらめいた!」と頭の中に明るい光が灯った瞬間でした。
──とても根気のいる実験ですね。レポートを見ていると、細かく、まんべんなく、点をつけています。大人だと、ここはセーフだろうと先に進んでしまうかもしれません。
灯さん:そうですね。おっしゃるとおり、研究を続け、点をつけていると「ここはきっと大丈夫だろうな」とか「ここは無理そうだな」ということが、だんだん感覚的にわかってきます。
それでも、やはり子どもだったので「もしかしたら急にダメな点があるかもしれない」と思い、たくさんの場所で確認しました。途中でやめたいと思ったことは、一度もありませんでした。
──こつこつと結果を積み上げていく実験です。時間もかかりますし、材料を集めるのも苦労しそうです。実験をしている灯さんに、お母様はどのように接していらっしゃいましたか?
菊地るみ子さん(母):灯の実験助手のような立場だったと思います。灯が古い積み木を取り出してくるなど、この実験に使えそうな道具を、家中をひっくり返して探し回るすがたを見て、「ホームセンターへ行ってみようか?」と声をかけました。
それから、実験の撮影係を頼まれました。実験は、本人が自分のペースで行っていましたが、途中うれしそうに結果を教えてくれたときは「すごいね!」と一緒によろこんで、結論を見つけられるか心配していたときは、「ここまでの実験だけでもとてもおもしろい研究じゃない」とはげましました。
──今回、この受賞研究が絵本になりました。お気持ちをお聞かせください。
灯さん:お話をうかがったときは驚きました。子どものころのつたないところもある研究なので、このようなすばらしい作品になって、とてもうれしいです。絵本の表紙に自分の名前が印刷されていることが夢のようです。
──絵本の主人公は、かんちくたかこさんが灯さんをイメージして、その文を読んだ北村裕花さんが絵にしました。ご本人から見ていかがですか?
灯さん:かわいい女の子に描いていただきました。私も当時、ときどき髪型をツインテールにしていまして、絵本と同じです。
きっと当時の私はこういうようすで、一生懸命実験していたのだろうなとほほえましい気持ちで絵本を読みました。
──絵本の思い出があったら教えてください。
灯さん:幼いころ、寝る前に絵本の読み聞かせをしてもらっていました。好きな絵本はたくさんあります。いわさきちひろさんの絵はとても好きですし、松谷みよ子さんの「ちいさいモモちゃん」シリーズ、かこさとしさんの「からすのパンやさん」シリーズは、とくに好きでした。
中学生のとき、祖母の家で「なかよし いじわる 元素の学校と周期表」という古い絵本を見つけ、「わかりやすくておもしろいな」と読んでいたのですが、かこさとしさんが執筆された本であることに気づき、とても驚きました。
──科学がテーマの絵本もお好きなのですね。好きなものに邁進する灯さん、今はどのようなことに夢中になっていますか?
灯さん:音楽に関わることが好きです。ピアノはずっと続けていて、街でストリートピアノを見つけると、ときどき弾いて楽しんでいます。クラシックだけでなく、テレビや映画で流行っている曲を自己流にアレンジして弾いたりします。
──受賞の経験はその後に、なにか影響を及ぼしましたか?
灯さん:絵本のあとがきにも書きましたが、「実験はたくさんやってみるものだ」と実感できたことが、今もさまざまな場面ではげみとなり、活かされています。
やろうと決めて自ら始めたことでも、ゴールが見えず、不安でくじけそうになることがあります。そういうとき、私はこの実験のことを思い起こします。
「今の自分にできることはなにか」「あきらめないで、とにかくできることを続けよう」「チャレンジし続ければ、いつか何らかのゴールにたどり着くはず」、そう考えることができるのは、この研究での経験があったからだと思います。
──「実験はたくさんやってみるものだ」すてきな言葉ですね。今もこの気持ちを持ち続けている灯さん、科学を楽しんでもらいたい子どもたちにあらためてメッセージをいただけますでしょうか。
灯さん:この研究を行ったことで、私自身「よかった」と思えることがたくさんありました。
ひとつは、研究の材料は私たちの身近なところにいくらでもあるとわかったことです。私の場合、ピアノコンクール前日のハプニングがきっかけでしたが、くらしの中で何気ない「なぜだろう?」を感じたら、それはすてきな研究の始まりだと思います。そういう「なぜだろう?」をたいせつにすると、きっと科学がますます楽しくなると思います。
そして、なにより「実験はたくさんやってみるものだ」と身をもって体験できたことが、いちばんの財産だったと思っています。実験から得られる結果はもちろんですが、研究の過程で経験したこと、がんばったことは、やった本人にしか得られないかけがえのない宝物だと思っています。
──すてきなお話をありがとうございました。

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2026年1月22日公開予定 公開日までリンク無効
取材・文/川嶋 隆義(スタジオ・ポーキュパイン)
受賞作品写真/提供:筑波大学
ほかの写真すべて/提供;菊地灯さん

川嶋 隆義
「本をとおして人々を自然好きにしてしまうのだ!」を合い言葉に自然科学、生物専門に書籍の企画編集をするスタジオ・ポーキュパインを主宰。 写真撮影、ライティングと制作に深く関わって本作りをする。ポーキュパインは哺乳類ヤマアラシの英名。
「本をとおして人々を自然好きにしてしまうのだ!」を合い言葉に自然科学、生物専門に書籍の企画編集をするスタジオ・ポーキュパインを主宰。 写真撮影、ライティングと制作に深く関わって本作りをする。ポーキュパインは哺乳類ヤマアラシの英名。




































































































