
3歳までの子どもなら、いちばん重要な他者は親です。
その後、年齢に応じて子どもの世界は親以外の他者との交流により広がっていきます。しかしコロナ禍で、親以外の大人と密接に関わる機会が失われたため、非認知能力を育むチャンスを得られなかった子どもが多くいます。
冒頭でお伝えした「今年の学生はずいぶん幼い印象だ」という就活の現場での言葉は、子どもたちの非認知能力がかつてよりも低下していることを示しているといっていいでしょう。
子育ての前に「親育て」が必要なワケ
社会的な事情で外の大人たちとのコミュニケーションが生まれにくい以上、子どもたちの非認知能力を育むために、今まで以上に大きな役割を果たすのが親子関係です。ただ、家庭内でうまくコミュニケーションがとれていないケースが多々あります。
私は講座で、子育てではなく「親の心育て」を標榜しています。なぜなら、子どもの非認知能力を育むには、親自身の非認知能力を高める必要があるからです。
親の心が成熟し、子どもと適切なコミュニケーションをとれるようになることで初めて、子どもは親を信頼でき、良い関係を構築できます。
信頼関係を築ければ、子どもは親の言葉を聞き入れやすくなり、自分のことを親に話してくれるようにもなります。それにより、親は子どものことをさらに理解できるようになります。
こうしたコミュニケーションを積み重ねることで、子どもの非認知能力は育まれていくのです。
数値化できないけど確かに存在する「心のスキル」
では、非認知能力とは具体的にどういうものなのか。
非認知能力は、数値化できないために認知能力の陰に隠れていた存在でした。今までの子育てでは、この認知能力を伸ばすことが重視されてきました。でも、私たちの能力は数値化できるものだけではありません。
たとえばあなたの周りにこういった人はいませんか?
「結果が出るまで誘惑に負けずに、粘り強く情熱を持ってがんばれる人」
「社交的でよく気がつき、文化祭などの行事で仲よく協働できる人」
「トラブルが起きても物事を楽観的に捉え、自信にあふれている人」
このように、「数値化はできないけどたしかに存在する能力」を「非認知能力」といいます。これはいわば「心のスキル」です。
こういう能力が高いと、ただ知識が多くて勉強が得意なだけではなく、友達が多かったりリーダーシップがとれたり、いざ大人になったときにたくましく生きていけることが多いのです。