【動画】絵本作家さんに聞く絵本作りのポイント「肩の力を抜いて」「チャレンジしてほ欲しい」ながしまひろみさん×まつながもえさん対談

『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』デジタルお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT」ユーザー絵本作家インタビュー

ながしま:私は「CLIP STUDIO PAINT」を使って、落書き感覚でラフな絵を描いていきます。

『ぞうくんはいちねんせい』は、「主人公を動物にすると、読んでくれる子どもが絵本の世界に入りやすいのでは」という編集さんのアドバイスを受けて「なるほど」と思い、ぞうにしました。

『ぞうくんはいちねんせい』作:ながしまひろみ アリス館
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まつなが:私も、アイデア出しの段階から「CLIP STUDIO PAINT」を使っています。主人公になるキャラクターは、子どもたちに感情移入してもらえるように、子どもらしさがあったり、共感してもらえるようなキャラクターにしたいなと思いながら作ります。最初は直感で作りますが、迷ったときは、周りの人に見せて感想を聞いて。そうやってみんなの意見を取り入れながら、キャラクターを作り上げていく感じですね。

──おはなしの流れと、全体の構成はどのように作っていきますか?

ながしま:最初はシナリオを書くようにテキストを書いて、「Adobe InDesign®」でテキストのみのページ割りを作ります。そのテキストのみのページ割りを見ながら、「CLIP STUDIO PAINT」で絵を描き、最後にデータを合体させる方法で作っています。

『ぞうくんはいちねんせい』の制作では、コマ割りのページと一枚絵のページをどういうふうに続けていくかを意識してミニラフを作りましたが、『そらいろのてがみ』と『まっくらぼん』の場合は、「CLIP STUDIO PAINT」でページに直接文字を置いていきました。

「CLIP STUDIO PAINT」でページ割りをした後、ラフを描いていく過程。『ぞうくんはいちねんせい』作:ながしまひろみ アリス館

ながしま:「CLIP STUDIO PAINT」で実際のページの大きさでデータを作っているので、編集さんとのやりとりで、ページを入れ替えたり削ったりするのも楽なんです。それで作った構成でいけるかなと思ったら、iPadでラフを描いていきます。

まつなが:私もおはなしはテキストで書いています。そこから1枚の中に3見開き分の枠を置いたミニコンテ紙に、ラフを描きます。そうすると、同じような構図が重なっていないか、ページをめくるときにきちんと時間が切り替わっているか、全体を俯瞰して見ることができるからです。

まつながもえさんが、『こけしぞろぞろ』のミニコンテを描いている様子。

──構図を作るときに気をつけていることはなんですか?

まつなが:15見開きという限られた枚数なので、読者が「前にも同じ場面があったような気がする」と感じないように、同じような場所で起きている出来事でも、構図を変えてまったく違う場面に見せようと意識して描いていますね。

あと、撮りためておいた写真をもとに、絵を描くことも多いです。長い自撮り棒にスマートフォンをつけて、いろんな角度から撮った写真をいっぱい集めておくんです。その中の選りすぐりの構図を参考に、絵本の構図を変えていきます。

文字は、読者が読んだときに、なるべく自然にキャラクターがセリフを言っているように見える場所に置きたいと考えています。デジタルなので、文字と絵をレイヤー分けして、文字の位置をいろいろ動かしてベストな場所を探して、文字位置に合わせて絵の構図を考えます。そしてテキストをページに割りつけた段階で、どんな絵を描くかイメージをつくり、その絵のイメージをまずは文章(自分への指示書のようなもの)にします。その後、その指示書をもとに絵を描いていきます。

ページを開いたとたん、口からお湯を出している大きなこけしと「ばーーんと おふろだ」に目を奪われる。『こけしぞろぞろ』作:まつながもえ 講談社より

──絵本には一枚絵だけでなく、コマ割りの絵本もあります。おふたりは、絵本でのコマ割り表現にどのような可能性を感じていますか?

ながしま:見開きの一枚絵が続くおはなしは、時間の感覚がゆっくりに感じられますが、そこにコマを入れることで、一瞬の変化が生まれると思います。逆に、小さな絵の連続で見ていたものが、急に大きな見開きの絵になることで、広がりを感じることもあるのかなと思いますね。

一枚絵とコマ絵を組み合わせて、時間の経過を表現。『さがるまーた』vol.2掲載『ねえねえ もぐらくん』より

ながしま:漫画を描くときには、1ページの中での読みやすさや、読者が退屈しないようにいろんな角度からキャラクターを描いたり、キャラクターの感情を構図で表現したりと、割と感覚で描いています。絵本の場合は視点を固定して、風で髪が少しだけなびいたというような、ほんの一瞬の間に起きた微細な動きをコマ割りで描くという、アニメーション的な表現もできると思います。

まつなが:そうですね。私も、場面転換やここはていねいに見せたいと思ったときにコマ割りを使っているので、時間の表現にはピッタリかもしれません。

ながしま:あと絵本では、1ページ2~3コマで、シンプルなコマ割りを意識しています。縦書きの右開きか横書きの左開きかでフキダシやテキストの位置も変わってくるので、絵と合わせて調整が必要ですね。

使いやすいツールを絞って極めよう

──おふたりが実際に「CLIP STUDIO PAINT」をどのように使っているのかを聞きたいのですが、デジタル作画に慣れるのに、どれくらいかかりましたか?

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