「漫画」を読むのは「劣った読書」? 「子どもに安心して渡せる漫画」を話題の〔出版ジャーナリスト〕が徹底解説

出版ジャーナリスト・飯田一史が児童書ファンのための漫画サイト「ビブリオシリウス」を分析

出版ジャーナリスト・ライター:飯田 一史

欧米ではコミックの読書を積極的に推進

近年、欧米ではコミックの読書も「本物の読書」として推奨されている。

未就学児や児童向けのグラフィックノベルも増え、大手児童書版元から刊行されている(日本のマンガはティーン以上向けという扱い)。

図書館の司書も保護者もコミック肯定派になってきたのには、いくつも理由がある。

まず、「子どもが自ら選んだ一冊の本を読み切った」という達成感を与えるものになるからだ。読書の入り口になり、また、読書体験が途切れたときも戻ってきやすい。

それから、映像がはびこる現代において、絵と字の組み合わせから成るコミックが、自発的に読み解くビジュアルリテラシーを高めてくれるという考えがある。

スマホやタブレットでYouTubeやTikTokをただ眺めているくらいなら、スクリーンタイムの代わりにコミックを読んでくれたほうがずっとマシ、と語る保護者も多い。

写真:Hakase/イメージマート
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さらに、生まれつき字を読むのが得意ではない人、画像があったほうが理解しやすい人もいるが、そうした人たちにも読書の楽しみや本からの学びを提供できる。

日本では「読書バリアフリー」は視覚障害者、身体障害者の方向けの取り組みが中心だが、目が見えていて本が持てたとしても、じっと字を追って読むのが苦手な人はいる。そうしたニューロダイバーシティ(発達特性を踏まえた多様性)的な観点からも、コミックは「字だけの本」では届きづらい人たちにまで届く可能性を持っている。

いまでは児童文学から現代文学までのグラフィックノベル版、日本風に言うと小説のコミカライズもさかんにつくられている。

日本では「マンガは子どものもの」ではなくなっている?

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