課題図書〔小学生中学年の部〕全冊レビュー〔2025年青少年読書感想文全国コンクール〕 子どもの視野を拡げる“目からウロコ“の課題図書を読む

「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんがレビューする「2025年課題図書」

松嶋 有香

書影『ふみきりペンギン』
『ふみきりペンギン』作・絵:おくはらゆめ、あかね書房、1,430円
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〈あらすじ〉
左利きのゆうとは、ふみきりでペンギンに出会います。大好きな子とクラスが分かれてしまったるりは、公園で白いへびの遊具にぺろりんとなめられます。鏡の中のライオンは、ななことまいにしか見えません。子どもの世界には不思議なことがいっぱい。

また、これらの一見関係のなさそうに見える出来事は、同じテーマ「ふつうってなんだろう」で描かれ、実は複雑にからみあっています。

〈この本で読書感想文を書くときのポイント〉
読み進めていくと、別々の話だと思っていたことが、実は角度を変えて書かれていることに気づきます。

急に疎遠になったように感じた友達にも、理由と葛藤があった。多角的なものの見方ができるようになってくる年に、こういう本に出会えることが大切だと感じます。

自分の考えの変化に気づけたら、そこを言語化するといいかもしれません。

『バラクラバ・ボーイ』転校生が被っている帽子を脱がそうとするクラスメイトのユニークな作戦

書影『バラクラバ・ボーイ』
『バラクラバ・ボーイ』作:ジェニー・ロブソン、訳:もりうちすみこ、絵:黒須高嶺、文研出版、1,540円

〈あらすじ〉
転校生のトミーは、目だけが見えるニット帽、バラクラバ帽をかぶっています。

なぜ? どんな理由で?

クラスメイトたちは、あの手この手でバラクラバ帽を脱がすユニークな作戦を立てます。そしてついに、なぜトミーはバラクラバ帽をかぶっているのか、その真実が明らかに。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
このクラスメイトたちの作戦はなかなかおもしろいのですが、自分だったら、どんな作戦を立てるか、考えてみるのも楽しいでしょう。

最後に真実が明らかになりますが、それを読んでみて、自分が考えた作戦で成功したかどうか、検討してみるのもおもしろいかもしれません。

インパクトのある表紙が目を引く『たった2℃で…:地球の気温上昇がもたらす環境災害』

書影『たった2℃で…:地球の気温上昇がもたらす環境災害』
『たった2℃で…:地球の気温上昇がもたらす環境災害』文:キム・ファン、絵:チョン・ジンギョン、童心社、1,980円

〈あらすじ〉
生き物が生き生きと過ごす海中、サンゴ礁、流氷、海岸、高山……。ところが、それぞれ1ページめくると目を覆いたくなるような悲惨な絵に変わります。

でもこれは直視すべき現実の問題。「地球は温暖化という病気にかかった」という表現を通じ、その病気を治すにはどうしたらいいか、そのことを考えさせられる本です。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
暑い夏休みに考えるのに、ぴったりな本です。

日本は年々暑くなっています。気象庁によると、2024年の日本の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差は+1.48℃で、1898年の統計開始以降、2023年を上回り最も高い値となりました。

この本に登場する少女と猫とともに、地球温暖化について、子どもたちが初めて自分事として考えられる本になっている素敵な本。大人も、しっかりと考えてみましょう。

多様性について考える一冊『ねえねえ、なに見てる?』

書影『ねえねえ、なに見てる?』
『ねえねえ、なに見てる?』絵と文:ビクター・ベルモント、訳:金原瑞人、河出書房新社、1,793円

〈あらすじ〉
同じものでも、見ている人によって違うように見える。それが体験できる本。

家族が囲む食卓は、科学者のママ、ゲーム好きのパパ、ペットの犬オレオには、それぞれどう見える? 菜食主義者からは?

さまざまな捉え方に違いはあるけれど、それに良し悪しはない。むしろ「そういうふうに見えるの?」という、新たな発見ばかり! そんな多様性について考える一冊です。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
まずは、色覚異常のトーマスから始まります。「障がいだから仕方がない?」そういう考えは、次々と表現される11人の登場人物の見え方を知るたびに、揺らいでいきます。

もしかしたら、自分と同じように世界を見ている人は、一人もいないのかもしれない。そんな観点から多様性について考えを広げてみましょう。巻末の「訳者あとがき」も必読です。

本選び、読書感想文のテーマ選びに役立つ情報がいっぱいでしたね! 本を選んだら、次は「読書感想文」の宿題を片付ける番。そこでおすすめするのが、ゆか先生が指導している『2週間7つのステップで「読書感想文」を完成させることができる、「親子インタビュー式読書感想文の書き方」』です。

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【読書感想文に対する認識が180度変わる!】連載企画「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんが解説 教材:課題図書『ぼくの色、見つけた!』

嫌な宿題ナンバー1に挙げられる「読書感想文」。しかし「自分の気持ちを文章で書く」という機会を避け続けていると、「やばい」「すごい」で会話を成立させる大人になってしまうかも!?
迷える親子に文章力養成講座「カキマクル」のゆか先生こと松嶋有香さんが、「親子インタビュー式読書感想文」の効果を解説する、連載企画です。

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まつしま ゆか

松嶋 有香

Yuka Matushima
文章力養成コーチ、教育コンサルタント

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」