

「あらしのよるに」シリーズは、オオカミとヤギの「食うもの」「食われるもの」の関係を超えて結ばれた絆を描く、友情物語です。
1994年に出版された最初の物語『あらしのよるに』から、『あるはれた日に』や『くものきれまに』など、シリーズは7作品、380万部を突破しました。

さらに2025年2月には、ファン待望の8作品目を刊行します。タイトルは『あいことばはあらしのよるに』。ガブとメイの物語から、ますます目が離せません。
30周年を記念して「あらしのよるに」シリーズを愛する著名人から、スペシャルメッセージをいただきました。第2回は、落語家の立川志の輔さんです。
志の輔さんは、20年以上前に仕事で『あらしのよるに』を読んでから、作品の大ファンだそう。落語家として数多くのお話を語ってきた志の輔さんは、『あらしのよるに』の魅力をどう読み解いているのでしょうか。
目次
食欲を我慢する「理性的なオオカミ」に驚きました

志の輔:私と「あらしのよるに」の出会いは、朗読をする仕事をいただいたこと。ガブもメイを演じ分けて、もちろんナレーションも私がしゃべる、当時は新しいやり方でした。
落語の世界にいますから、たくさんの物語をしゃべってきた人間です。そんな私でも「あらしのよるに」には驚きました。動物が主人公なのに繊細な話の展開で、かつ誰が読んでもわかる普遍的なテーマを描いているから、興味深い。
まず、動物が主人公であるところに、この物語の魅力があります。古くから恐ろしさの象徴として描かれるオオカミですが、『あらしのよるに』に登場するガブには理性があります。
ヤギは大好物だけど、メイのことが好きだからこそ、食べちゃいけないと留まっている。「オオカミってそう考えることもあるんだ」と読者は裏切られます。
メイだってそうです。暗闇で意気投合した動物が、オオカミだったと知っても逃げない。なぜなら友情を信じているからです。姿を見ないで通じ合った経験から、ガブの優しい性格を見抜いているんですよね。
ガブにもメイにも、想像を超える複雑な心模様がある。我々読者は、その「人間らしさ」に共感せざるを得ないのです。