ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』に隠された謎とは!? 誰かに話したくなる〈目からウロコのキリスト教〉

『Wonder! 目からウロコのキリスト教』

関西学院中学部宗教主事:福島 旭

写真:Paylessimages/イメージマート

「キリスト教」と聞くと、何を思い浮かべますか? 実はクリスマスやカレンダーなど、私たちの日常はキリスト教由来の文化であふれています。そんな教えが記された世界最大のベストセラー『聖書』は、「いつ、どこから読んでもいい」多彩なジャンルを網羅した本。

関西学院中学部で聖書科を担当する「ポン先生」こと福島旭先生によれば、キリスト教を知ると、見慣れた世界がガラリと変わって見えると言います。この記事では、福島先生の著書『Wonder! 目からウロコのキリスト教』の一部を抜粋し、日常や文化を形づくったキリスト教の驚きのエピソードや歴史を紐解いていきます。

今回は、「ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』の謎」についてお伝えします。

『Wonder! 目からウロコのキリスト教』
Amazon・楽天で見る

まだまだ深まる『最後の晩餐』の謎

ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』に隠された謎

ミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂に描かれた絵画で、大きさは420×910cm。レオナルド・ダ・ヴィンチが1495年から制作し、1498年に完成した。イエス・キリストが十字架にかけられる前夜、12人の使徒と食事をした「主の晩餐」と呼ばれる聖書の場面を描いたもの。イエスが「あなたがたのうちのひとりで、私と一緒に食事をしている者が、私を裏切ろうとしている」と語った直後の情景を描いた、と考えられている。

『最後の晩餐』にはさまざまな仕掛けがあります。この作品の一番の特徴は、「イエスを含めた13人すべてが横一列に並んでいること」。

当時の一般的な食事形態は椅子ではなく床に座り、片足を立てて、円座で食事をしていたと考えられているのに、この並び方はまるで映画の撮影を意識したようにも思えます。

円座での食事場面を描くと、顔が見えない弟子が出てしまいます。最後の晩餐のときにイエスが裏切り者にパン切れを浸して与えた、という聖書の描写との整合性をとるために、横一列の構図が生まれたのかもしれません。

ダ・ヴィンチ以外にも「最後の晩餐」を横一列の食卓で描いている作品はたくさんありますが、ほとんどの作品がユダをのけ者として描いています。ひとりだけテーブルの手前に座っていたり、光輪(アウレオラ)がなかったり、と差別化されています。

ユダがテーブルの手前に座っていると、遠近法でイエスよりも大きく見え、観る者の目はユダに注がれます。ダ・ヴィンチはユダを他の使徒たちと同じ並びにしただけでなく、イエスの近くに座らせています(イエスから見て右側2番目の席がユダ)。

イエスを裏切った報酬である銀貨30枚が入った袋を右手に握らせることで、観る者に誰がユダなのかを示しています。

また、この作品には一点透視図法という遠近法が使われており、イエスの顔を消失点として、そこから放射状に線を引いた位置に壁の装飾やテーブルの角が配置されていることも特徴です。この手法により絵が立体的になり、一番奥にいるイエスに視線が集まるよう工夫がされています。

13人を横一列に配置したことで、イエスを中心に弟子が3人×2組ずつのシンメトリー(左右対称)の美しい構図ができあがりました。

イラスト:一ノ瀬 かおる

このシンメトリーを成立させるために、ダ・ヴィンチが知恵を絞ったのだろうと思われる部分があります。

『ヨハネによる福音書』13章には、ペトロに指示されたヨハネがイエスの胸元によりかかったまま、「(裏切り者は)誰のことですか」と聞いた、と書かれています。

ダ・ヴィンチ以外の画家たちは、イエスの胸元によりかかっているヨハネを描いていました。

ヨハネは中性的な容姿で描かれることが一般的です。ダ・ヴィンチもイエスの隣に、女性のように見えるヨハネを配置しています。

ダ・ヴィンチはユダの隣のペトロがヨハネを引き寄せて耳打ちをする様子を描くことでイエスから引き離し、シンメトリーを完成させました。

この絵の直前まで、ヨハネがイエスの胸元によりかかっていたのだろう、と思わせたことで、観る者に物語性や時の流れを意識させる効果もあります。

ペトロの動きによって、イエスとヨハネの間に大きなV字の空間ができました。これは、両手をテーブルに置いているイエスの正三角形の姿勢と相対しており、それもまた、観る者が自然とイエスに注目してしまう効果を生んでいます。

数多くの仕掛けが盛り込まれた『最後の晩餐』には、まだまだ隠された謎や秘密があるようです。

ユダの背後に見えるナイフを持った右手も謎のひとつです。ヨハネに耳打ちしているペトロが、腰に当てた右手にナイフを隠し持っているようにも見えますが、誰の手にも見えない、という説もあります。

使徒たちの陰に隠れている14人目の人物がいるのでは……何かを暗喩しているのでは……と謎は深まるばかりです。

\ほかにも〈目からウロコな知識〉公開中!/

Wonder! 目からウロコのキリスト教 関西学院中学部のポン先生によるワンダフルな授業

「キリスト教のなりたち」から「生活とキリスト教の関係」や「文化芸術の中のキリスト教」など……思わず人に話したくなる知識が満載の『Wonder! 目からウロコのキリスト教 関西学院中学部のポン先生によるワンダフルな授業』は、好評発売中です。

本記事でご紹介した内容のほかにも、明日話したくなるキリスト教のアレコレが盛りだくさん。この一冊でキリスト教に詳しくなれる、世界観が変わる、キリスト教入門にぴったりの一冊になっています。ぜひ、お手に取ってご覧ください!

Wonder! 目からウロコのキリスト教 関西学院中学部のポン先生によるワンダフルな授業

Wonder! 目からウロコのキリスト教 関西学院中学部のポン先生によるワンダフルな授業

福島 旭(著)  谷口 雅美(著)  一ノ瀬 かおる(イラスト)

発売日:2026/02/19

価格:定価:本体1650円(税別)

福島 旭
ふくしま あきら

福島 旭

Akira Fukushima
関西学院中学部宗教主事

京都市出身。関西学院大学大学院修了後、島根、広島で牧師および幼稚園園長を務め、現在は関西学院中学部宗教主事・人権教育主任・教諭、関西学院会館宗教主事、関西学院大学講師。冠句作家。保護司。琉球音楽ユニット“Sari Sari Moon” のギター& ボーカル担当。著書『GOODNEWS ~新約聖書』、『EXODUS ~旧約聖書』( 共に新教出版社) 他。

京都市出身。関西学院大学大学院修了後、島根、広島で牧師および幼稚園園長を務め、現在は関西学院中学部宗教主事・人権教育主任・教諭、関西学院会館宗教主事、関西学院大学講師。冠句作家。保護司。琉球音楽ユニット“Sari Sari Moon” のギター& ボーカル担当。著書『GOODNEWS ~新約聖書』、『EXODUS ~旧約聖書』( 共に新教出版社) 他。

谷口 雅美
たにぐち まさみ

谷口 雅美

Masami Taniguchi
作家

兵庫県尼崎市出身、神戸女学院大学卒業。第44 回創作ラジオドラマ大賞と第58 回講談社児童文学新人賞でそれぞれ佳作に入選。著書は『大坂オナラ草紙』『私立五芒高校 恋する幽霊部員たち』『わたしのカレーな夏休み』『殿、恐れながらブラックでござる』(全て講談社)など。戯曲やラジオドラマの脚本も執筆。

兵庫県尼崎市出身、神戸女学院大学卒業。第44 回創作ラジオドラマ大賞と第58 回講談社児童文学新人賞でそれぞれ佳作に入選。著書は『大坂オナラ草紙』『私立五芒高校 恋する幽霊部員たち』『わたしのカレーな夏休み』『殿、恐れながらブラックでござる』(全て講談社)など。戯曲やラジオドラマの脚本も執筆。