大人の手助け 意識するポイントは?
梶山先生:子どもたちが、すべて自分で研究できるのは、すばらしいことです。しかし、子どもたちがなにか発見したとき、その先に進むのに、どうしても力が足りないときはあります。
そんなときは親や先生、大人が手をさしのべてあげるのがよいと思います。
とくに小学生などは、限界もありますし、大人の手助けでもう一歩進めるならば、研究はよりよいものになっていきますよね。保護者が全部やってしまうのは、もちろんだめですが(笑)。
──毎年、「科学の芽」賞の応募者と身近に応対されている事務担当の當房さん・白石さんは、毎年の作品をご覧になって、どのように感じますか?
事務担当・當房さん:受賞者の親御さんには、お子さんの興味に協力的な方が多いように見えます。子どもが「こうしてほしい」ということを面倒がらずに付き合っている。親御さんも楽しんでいるんじゃないかと思います。
事務担当・白石さん:ときに生活より優先している! と感じるときもありますね。実験や観察のために家の冷蔵庫をひと夏提供する方もいます(笑)。生き物の研究など、親にとっては、きっと苦手なテーマもあると思うのですが、理解されて、よく寄り添っているなと思います。
──親が思ったように手をさしのべられないときもあるかと思います。
梶山先生:もし親御さんが、子どもたちの研究を手伝ったり、場を用意したりできないときは、学校の先生に相談する方法もあるし、博物館や科学館を調べて行ってみると学芸員さんが相談にのってくれたり、いろいろなワークショップがあったりと助けを受けることもできます。
このとき気になるのは、こうした博物館や科学館でのイベントへの参加が「託児所」になってしまうケースです。子どもを預けてお任せするのではなく、一緒に参加して楽しんでほしいと思います。
思い出にもなりますし、家に帰ってからいろいろ話をできれば、子どもさんも嬉しいし、「科学の芽」がもっと育つかもしれません。「楽しい!」と思う経験は、とても大事です。
効率にこだわらず、もしかすると無駄になったり、遠回りになったりするかもしれないけど、そうした時間のなかから自分の好きなことやりたいことを見つけ出すことができるのではないかと思います。
──無駄や遠回りもときには必要と。
「タイパ」より「ぼーっとする時間」の確保を
梶山先生:「タイパ=タイムパフォーマンス」という言葉を最近よく耳にします。無駄なく詰めこむのが良いこととされるようですが、効率を重視しすぎるのもどうかと思います。
タイパ的時間の使い方は、情報を入れて作業をする時間で、そこには、「考えるための時間」は入っていないのではないだろうか、と感じます。
例えば、電車の中でずっとスマートフォンを見ている人をよく見かけます。これは、自分で考える時間を減らしているのではないでしょうか。
「どのように解決しようか」という課題が自分のなかにあったときに「そうか! こうすればいいんだ!」と思いつくのは、電車でつり革につかまってぼーっと乗っているときだったり、お風呂やトイレに入っているときだったり、通勤通学で自転車に乗っているときだったりしますよね。
いまは、大人はもちろん子どもたちも忙しいですし、情報があふれる社会にいます。
しかし、四六時中、人からの情報を入れているということは、自分で考える時間を失うことにつながるのではと心配しています。
あたらしい情報を取り入れるのはよいことでもあるのですが、入れた情報をもとにどう考えるかが必要で、そのための時間を確保することは、独創的な発想の源のひとつと考えます。
朝永振一郎博士の色紙のことばは、こう続きます。
「よく観察してたしかめ そして考えること これが科学の茎です。そうして最後になぞがとける これが科学の花です」
自分で見つけた「科学の芽」を育て、「科学の花」が咲いたときの喜びや感動を、子どもたちといっしょに体験できたら、きっと親にとってもすばらしい経験となることでしょう。
取材・文/川嶋隆義(STUDIO PORCUPINE)
撮影/安田光優
「科学の芽えほん」シリーズ



※表紙のデザインは変更になる場合があります
[以下続刊]
2026年3月刊行予定
『科学の芽えほん ネコは 天気を あてられる?』
かんちく たかこ・文 高橋 和枝・絵 坂﨑 希実・原案
2026年4月刊行予定
『科学の芽えほん トマトパスタが はねる なぞを とけ』
かんちく たかこ・文 北村 みなみ・絵 今野 柚希・原案
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「科学の芽」賞の趣旨
ノーベル物理学賞の受賞者で、筑波大学の前身である東京教育大学の学長を務めるなど、筑波大学にゆかりのある朝永振一郎博士の功績を称え、国内外の小・中・高校生を対象に自然や科学への関心と芽を育てることを目的としたコンクール。
優秀な作品に「科学の芽」賞を授与し、受賞者には、表彰式で筑波大学長から表彰状及び記念品が贈られます。
朝永振一郎記念「科学の芽」賞への支援
朝永振一郎記念「科学の芽」賞は、ノーベル物理学賞受賞者である朝永振一郎博士の生誕100年を記念して創られた科学コンクールです。賞の名称は、朝永博士が子どもたちに向けた「ふしぎだと思うこと これが科学の芽です」という言葉から引用したものです。
当コンクールには、毎年、国内外の250近い学校から小・中・高校生の各部門を合わせて2000件を超える応募があり、その中から極めて優秀と認めた作品に「科学の芽」賞を授与しています。
また、「科学の芽」賞に続く優秀作品には「奨励賞」や「努力賞」を審査員からの講評を添えて授与するほか、応募者全員に「参加賞」を贈り、子どもたちの「科学の芽」を育てようとしています。
将来の世界を担う子どもたちの自然科学への探究心を育てるため、「科学の芽」賞の運営にご支援をいただけたら幸いです。ご支援いただける方は、筑波大学「附属学校ぽろーにあ基金」(以下のURL)からお願いいたします。

川嶋 隆義
「本をとおして人々を自然好きにしてしまうのだ!」を合い言葉に自然科学、生物専門に書籍の企画編集をするスタジオ・ポーキュパインを主宰。 写真撮影、ライティングと制作に深く関わって本作りをする。ポーキュパインは哺乳類ヤマアラシの英名。
「本をとおして人々を自然好きにしてしまうのだ!」を合い言葉に自然科学、生物専門に書籍の企画編集をするスタジオ・ポーキュパインを主宰。 写真撮影、ライティングと制作に深く関わって本作りをする。ポーキュパインは哺乳類ヤマアラシの英名。


















































































