筑波大教授に聞く 子どもの「ふしぎ」を成長につなげる 親が「タイパ」より優先すべきこと

「科学の芽」賞 梶山正明教授インタビュー (3/4) 1ページ目に戻る

成果よりも「大切」なこと

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梶山先生:この賞を審査してくれている筑波大学や附属の小・中・高等学校の先生たちも「芽=ふしぎの発見」に注目して、応募研究に目をとおしています。そして「自分で」を大事にしています。

結論を導き出すまでの過程で、自分で考え、自分の手を動かして観察・実験、努力をしたかを評価したいと考えています。

研究レポートは、読みやすくまとまっているのが大切ですが、必ずしもきれいにまとまっているのが高評価というわけではありません。

きれいでなくとも、目のつけどころが自分らしくて、審査している先生たちが「こうきたか~!」と、うなってしまう研究も応募されてきます。そういう作品は、選ぶほうもときめきますね。

──大人が子どもの発見を育むには、どうするのがよいですか?

梶山先生:子どもたちの研究をきちんとしたものにしようと、なにからなにまで調べて仕上げようとすると、子どもたちにとっては苦しいものになるかもしれません。

それよりも「自分で見つけた事実」に目を向けてほしいのです。

科学の研究というのは、うまくいかないことがたくさんあります。子どもの思いつきからはじまるものだと、もっとうまくいかないかもしれません。でも、やってみなければ、どうなるかもわかりません。

大人の研究ですと、成果が出ないと評価されません。でも、子どもの研究は「がんばったけれど、うまくいきませんでした」でもいいわけです。

──「うまくいかなかった」でも、よいのですか?

梶山先生:「科学の芽」賞では、成果よりも「自由な発想」と「自分で考えること」を大事にしています。

子どもらしい発想や解決の方法は、ときには失敗もするわけですが、「考えてやってみる」自由な発想があれば、情報や知識を深めていないからこそ出てくる「意外性」も含んでいます。

それは新しい事実の発見を生む可能性を秘めているともいえます。

「よい結果」にたどり着かなければいけないなんてことは気にせず、練習だと思って、「科学の芽」を育ててあげてほしいです。

個性的な受賞作が書籍化

──歴代の受賞作を取り上げた絵本シリーズが刊行されますね。原案となった実験はどれも個性的ですね。

梶山先生:
シリーズでは5作が選ばれていますが、原案の子たちの実験には彼らのなかで発見があって、自分で考え、研究を進めているのが魅力的です。

▲橋本類さんの受賞作「ダンゴムシは本当にいついかなるときでも迷路の達人なのか」を絵本化した『ダンゴムシは めいろの たつじん?』。本作をはじめ、全5つの受賞作が「科学の芽えほん」シリーズとして刊行される。

この絵本は、原案者の視点が大事にされていて、「科学の芽」の発見、観察・実験のやり方がきちんと丁寧に表現されています。原案の子たちも主人公は自分だと思えて、とても嬉しいのではないでしょうか。私も嬉しいですね。

『ダンゴムシは めいろの たつじん?』(原案:橋本類さん「ダンゴムシは本当にいついかなるときでも迷路の達人なのか」)の受賞作は、ジグザグにダンゴムシが進む「交替制転向反応」という性質を利用した研究です。

この性質はよく知られていますが、橋本さんはそれを知って、いろいろな方法で調べたら、もっとダンゴムシのことがわかるのでは、という知的探究心を起こすんですね。

彼は知りたいことに対して仮説を立てて、それを調べるために自分で装置を考えてつくります。そこにはオリジナリティーや工夫があってすばらしいのです。

こうして絵本を見ていますと、ダンゴムシのことをよく知らない大人にとっても驚きがたくさんありますし、橋本さんの実験の独創的な手法には大人もうならせられます。

▲『ダンゴムシは めいろの たつじん?』より

──ダンゴムシの橋本さんは生きものに対する愛を感じます。好きってだいじですね。

梶山先生:生物の研究をする子たちは、とくにそうかもしれません。ダンゴムシは、大人にも人気ですよ。『ダンゴムシは めいろの たつじん?』で、ダンゴムシの顔が正面から描かれた絵を見て、筑波大学の先生方もその愛らしさに「これこれ!」と盛り上がっていました。

好きなものって、ほかの人にはわからないときがありますよね。この子はなんでこんなに好きなのかなぁと思うこともあるのですが、大人は理解して受け入れてあげるのがよいと思います。

──科学的興味を継続していく秘訣のようなものがあれば教えてください。

梶山先生:子どものころ好きだったことは、大人になっても好きであり続けるという方は多いのではないでしょうか。子どものころのいろいろな経験は、大きくなってからも好きなものの可能性を広げることにつながります。だからいろいろな経験をさせてあげてほしいんです。

「科学の芽」賞では、3年前から「科学の芽」賞だけでなく、それに準ずる奨励賞、努力賞の受賞者にも、審査をした先生方からのコメントを返すようにしています。

応募してくれた子どもたちに、どんなことが良かったのか、こうしたらもっと良くなる、ということを伝えたいのです。それが、翌年の励みになり、また研究をして応募してくれたらと願っています。これは、「科学の芽」賞の自慢できるところです。

「タイパ」じゃない? 自由な発想を導き出す方法

──自由研究など、大人がどこまで手をさしのべていいかといった悩みもありそうです。

大人の手助けでもう一歩先へ
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