「パパ育休は我が家に不要」と言う親たちの背後にひそむ昭和の呪いとは

コラムニスト・石原壮一郎の子育て「昭和~令和」ものがたり【01】 「激変した“男性の育休”事情」

コラムニスト:石原 壮一郎

政府が取得を促す男性の育休。とはいえ、取りづらい真の理由はどこにあるのか。コラムニスト・石原壮一郎が語る。  写真:アフロ
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子育てをめぐる状況は、令和に入って大きく変わっている。しかし、世間や親から受け継がれた「昭和の呪い」が、今でもまだママやパパを悩ませ苦しめている場面は少なくない。

昭和に生まれ育ち、平成に親になり、令和で孫に遊んでもらっているコラムニスト・石原壮一郎ジイジが、ガンコな「昭和の呪い」を振り払いつつ、令和の子育てを前向きに楽しむ極意を指南する。

今回は、ここ数年で制度も意識も激変した「男性の育休」について。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)PROFILE
コラムニスト。1963年三重県生まれ。1993年のデビュー作『大人養成講座』がベストセラーに。以降、『大人力検定』など著作100冊以上。最新刊は『失礼な一言』(新潮新書)。現在(2023年)、4歳女児の現役ジイジ。

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現在の「男性の育休」事情

少子化がいよいよ深刻になって、政府もようやく対策に本腰を入れ始めました。そのひとつが「男性の育休」を推進すること。

法律が何度も改正され、2022年4月からは、企業から従業員への育休制度の説明や取得の促進は「義務」になりました。

そんな背景もあって、男性の育休取得率は2012年度の1.9%から、2021年度は14.0%に上昇(厚生労働省調べ)。とくに2019年度からの2年で約2倍に増えています。2022年度の数字はまだ発表されていませんが、おそらく大きく上昇しているでしょう。

政府は男性の育休取得率の目標を「2025年度に50%、2030年度には85%」としています。今はまだ、男性の育休は「当たり前」ではありません。

やがては「当たり前」になるのでしょうか。そのときは、今より「子育てがしやすい社会」になっているのでしょうか。

【根深く残っている「昭和の呪い」】

・子育てに熱心な男は、仕事がおざなりになりがちだ

・男が育休だなんて、嫁さんの尻に敷かれているようで情けない

・夫が家にいたって役に立たない。むしろ仕事で稼いでくるべき

数年前まで男性の育休は「後ろ指を指されること」だった

世の中って、けっこう変わるもんですね。それも意外とスピーディに。

ほんの数年前までは、男性が育休を上司に申請したら「育休を取りたいって!? ふざけるな!」と相手にされなかったり、育休を取った男性が同僚から白い目で見られたりするのが「当たり前」でした。今もそういうケースが完全に消滅したわけではありませんが、格段に減ったのは間違いありません。

昭和の日本では「夫が稼いで妻が家庭を支える」という役割分担が、社会の前提になっていました。自営業や農業など夫婦で仕事をしている場合も、子育ては妻の仕事でした。

そもそも昭和の終わりごろになるまで、女性の「育休」が認められていたのは、教員や看護師など一部の職業だけです。結婚を機に仕事を辞める「寿退社」こそが女性の幸せの形であり、モーレツに働いて妻子を養うのが男の甲斐性であり生きがいとされていました。

平成に入って、結婚しても仕事を続ける女性が増加します。続いては子どもが生まれても仕事を続ける女性が増え、やがてそれが「当たり前」になりました。平成3年には、男性を含む全労働者を対象にした「育児休業等に関する法律」が成立(施行は翌年)します。

ただ、中身が不十分だったこともあり、男性の取得は現実的ではありませんでした。「子育ては母親の仕事」という意識も、両親ともにまだまだ強かったと言えるでしょう。

娘が幼かった平成ひとケタのころは、保育園の送り迎えで父親の姿を見ることは希(まれ)でした。小学生になった平成10年代でも、フリーランスである私が平日の授業参観に行くと、教室にいる男親は自分ひとりという状況が何度かありました。ほかのお母さん方からは、奇異な目で見られていたかもしれません。

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