「パパ育休は我が家に不要」と言う親たちの背後にひそむ昭和の呪いとは

コラムニスト・石原壮一郎の子育て「昭和~令和」ものがたり【01】 「激変した“男性の育休”事情」

コラムニスト:石原 壮一郎

「育児を手伝う」は非難される言葉に

昨今では、男性が「自分もできるだけ育児を手伝う」と口にしたら、「その他人事みたいな言い方はなんだ!」と強く非難されます。

ただ、平成のころには、むしろ「意識の高さを示す感心なセリフ」でした。平成22年に「ユーキャン新語・流行語大賞2010」に選出された「イクメン」も、すでにわざわざ使うのが恥ずかしい言葉になっています。

「育児はパパとママで協力して行うのが当然」「育児はパパとママで協力して行ったほうが楽しい」という意識は、ずいぶん広がりました。育休取得率の増加は、その延長線上にあると言えるでしょう。

我が子の成長を日常的に実感し、妻と一緒に喜べるのは、とても幸せなことです。今まで多くのパパは、その幸せを十分に堪能しないまま生きてきました。

ママも子どもも、パパと一緒に子育てをしたり、パパに深く関わってもらったりという幸せをたっぷりとは味わってはいませんでした。もう遠慮はいりません。育休を取れる人は、どんどん取りましょう。

ただ、そう簡単に「心置きなく」とはならないのが人の常。「パパとママで一緒に子育てをする」という幸せが目の前にあるのに、伸ばしかけた手を引っ込ませようと袖を引っ張るものがあります。それが、最初にあげたような「昭和の呪い」。パパだけでなく、ママにも昭和の呪いがかけられています。

何ごとも過渡期には戸惑いや試行錯誤が付きもの。制度が改正されても、育休を取る人への冷たい視線や、本人の後ろめたさが消滅するわけではありません。家事の分担や仕事と育児とのバランスも、落ち着きどころを見つけるまでには時間も手間もかかるでしょう。

パパのあなたが「やっぱり育休は取らなくてもいいかな」と迷ったり、ママのあなたが「どうせパパが家にいても役に立たないし」と思いそうになった場合は、その背後で「昭和の呪い」がほくそ笑んでいないかを疑ってみましょう。もちろん、総合的に判断して「パパの育休は必要ない」という結論になった場合は、後ろめたさを感じる必要はありません。

「昭和の呪い」に惑わされず、一生のうちに何度もない「夫婦でしっかり子どもと向かい合える貴重な時間」を胸を張って満喫しましょう。「男性の育休」が当たり前になっても、子育てがたいへんなことに変わりはありません。でも、当たり前になればなるほど、ママとパパが「たいへんだから楽しい」と思う心の余裕を持てるに違いありません。

【令和のパパママに贈る言葉】

時代の風は、子育てするあなたたちの味方です。無責任や周囲の声なんて気にする必要はありません。価値観が違う両親や義両親の意見も、適当に聞き流しましょう。パパが「育休」を取得することは、これから先も「父親と母親をちゃんとやっていく」ための第一歩です。

「赤ちゃんはまだ?」「独身は自由でいいね」等々、普段の何気ないやりとりに実は“失礼”がひそんでいます。日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャーする『失礼な一言』(新潮新書)。
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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか