【パパ育児】「ママのダメ出し」が辛い人こそ必見! 脳科学で考える目からウロコの「解決方法」

母性神話は噓? 京都大学大学院・明和政子教授に聞く「今だからこそ必要な“パパ育児”」 #3

京都大学大学院教育学研究科教授:明和 政子

ママがダメ出しをしてしまうのも、親性脳の発達度合いの違い?  写真:アフロ
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産後パパ育休制度の施行などによって、育児に積極的に参加しようとするパパも増えてきています。しかし、慣れない育児に試行錯誤するパパも多いはず。それが初めての育児であれば、なおさらです。

さらには、「男性だから育児がうまくできないのでは」「子どもはママのほうが好き」といった、日本社会にはびこる固定観念にとらわれ、苦しんでいる方もいるかもしれません。

そこで連載第3回では、パパ育児に関する悩みについて、科学的な観点やご自身の子育て経験から、京都大学の明和政子教授がアドバイスします。(全3回の3回目。1回目2回目を読む)

◆明和 政子(みょうわ まさこ)
京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。京都大学霊長類研究所研究員、京都大学大学院教育学研究科准教授を経て、現在同教授。日本学術会議会員。「比較認知発達科学」という学問分野を切り拓き、生物としてのヒトの脳と心の発達の原理を明らかにしようとしている。

Q1.積極的に育児をするものの、なかなかママのようにうまくできず、落ち込んでしまいます。

A1.今は、親性脳が発達している最中です。経験を積めば発達していくので、落ち込む必要はありません。

まずは、周囲の助けをどんどん借りましょう。そうしながら育児経験を無理せず積み重ねていけば、自分が納得できる育児ができるようになります。

特に今の若いパパ・ママは、これまで赤ちゃんという存在が身近におらず、触れ合った経験がないまま大人になった世代です。初めて触れる赤ちゃんがわが子であることも珍しくありません。

親性脳の発達はこれから、という状態で子育てをスタートさせるわけですから、子育てがうまくいかなくて当たり前です。

これは、パパだけではなくママも同じ。「女性なのに育児がうまくできない」と悩む方も多いですが、子どもに触れた経験がないのですから、どうしたら良いのか見当がつかなくて当然です。

親性脳は育児経験によってゆっくりと発達します。育児経験を積むと、子どものふるまいに対して自分がどうすべきかを脳が予測するようになるので、不安も軽減されます。

また、育児がうまくいかないと感じるのは、子どもそれぞれの個性に左右される場合もあります。しかし、親も子もよく笑い、よく食べて、ぐっすり寝ることができる毎日を過ごせていたなら、それだけで育児は大成功ではないでしょうか。

過度に落ち込みすぎず、日々の育児を通して得られる発見、感動のほうを大切にしてほしいです。

Q2.ママが育児にダメ出ししてきて、やる気を失ってしまう。

A2.親性脳の発達度合いが違うから。もしくはママが過度に不安になっているのかも。

第2回(#2を読む)でも紹介しましたが、親性脳では大きく2種類のネットワークが活動します。ひとつめは、子どもの変化に無意識的に素早く反応するネットワーク。もうひとつは、状況に応じてどのようにふるまうべきかを推論するネットワークです。

ある研究では、育児を主に担っているママでは、2つの脳内ネットワークが協調的に活動していました。しかし、育児にあまり関わっていないパパでは、これらのネットワークの活動がはっきりとはみられませんでした。

つまり、日常的に育児に関わっているママは子どもに敏感に反応しますが、育児に関わらないパパの脳は育児場面で敏感に反応しないのです。

こうした親性脳の活動の違いは、子どもへの対応の違いにつながっているとみられます。「子どもが泣いているのにどうして気づかないの?」と、パパの態度にイライラしてしまうママも多いでしょう。

親性脳は育児経験によるところが大きいわけですから、パパを感情的に責めてしまうだけでは、根本的な解決とはなりません。「親性脳を一緒に発達させていこうね」などと話し合われるのはいかがでしょうか。

親性脳の発達の度合いによる問題のほか、ママが過度に不安になっていることも考えられます。

この場合は、パパがママの心に寄り添ってあげてください。「よくやってくれてるね」と褒めたり、「うまくできなくてごめんね」と一歩引いた態度をとるなど、相手の立場にたったふるまいを示すことでママの不安は和らぐはずです。

もちろん、ママもパパもどちらも頑張っているのですから、「どうして自分だけが」と感じてしまうのは仕方ありません。ですが、ヒトの育児の基本は共同養育です。

子どもを育てるという同じ目標を共有しながら、自分と同じように相手もストレスを抱えていることを意識し、支え合うことが必要です。進化の過程で優れた前頭前野をもったヒトは、それが可能なのです。

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