掛け布団は危険! 乳幼児突然死症候群や窒息死を防ぐポイントを解説

乳幼児睡眠コンサルタントが教える! 「睡眠時の危険から子どもを守る予防策#2」

それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆もなく睡眠時に突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群。冬に発症が増えることから、この時期に今一度、安全な睡眠環境について整えておくことが非常に大切です。

乳幼児突然死症候群の原因は明らかになっていないものの、暖めすぎによる「うつ熱」や、うつ伏せ寝などが発症率を高めることがわかっています。また、日本では軽い掛け布団であれば使用して良いとされていますが、米国では掛け布団の使用は危険とされています。

後編では、乳幼児突然死症候群・窒息死の予防策を、日本人初の乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あや(あいば あや)さんに教えていただきます。
(全2回の2回目。#1を読む)

乳幼児突然死症候群や窒息死の予防策とは?

前編では、乳幼児突然死症候群が発症しやすい年齢や、睡眠中の窒息死の発生実例をご紹介しながら、アメリカと日本の予防策の違いまで説明しました。

続く後編では、乳幼児突然死症候群および窒息死の発生リスクを下げるための対策について、「安全な睡眠環境」「予防に有効な習慣」の2つの面からお伝えしていきます。

■安全な睡眠環境とは?

1.乳児を仰向け(背部を下にして)で寝かせる。

乳幼児突然死症候群は、うつ伏せでも仰向けでもどちらでも発症します。ですが、過去のデータによりうつ伏せ寝のほうが発症率が高いことがわかっています。

頭の形を気にして、うつ伏せ寝をさせるママ・パパも中にはいらっしゃるでしょう。しかし、医学的な理由で医師からうつ伏せ寝を勧められていない限りは、仰向けで寝かせるようにしてください。それが、乳幼児突然死症候群を防ぐ大きなポイントになります。

2.暖めすぎ(着衣、毛布、暖房、高い室温)に注意する。
米国小児科学会は、乳幼児突然死症候群を発症させるリスクとして「うつ熱」を指摘しています。うつ熱とは、睡眠中の赤ちゃんが着せすぎ・暖めすぎなどによって高体温になった状態です。

うつ熱の状態になると、体内では2つの反応が起きます。「熱を放出する反応」と「熱をつくることを抑える反応」です。

熱をつくることを抑えるために、身体は呼吸を休んだり、筋肉を使わないようにします。その結果、必要な酸素を取り込めず乳幼児突然死症候群につながってしまうといわれています。

明確に室温○度というのは示すことができませんが、睡眠時の赤ちゃんに最適な室温は、「大人が肌寒いと感じる程度」といわれています。大人が寒く感じるからといって、赤ちゃんに掛け布団をかけたり、厚着をさせ過ぎないようにしましょう。

もし赤ちゃんが冷えてしまうのが心配なのであれば、寝返りができないうちはおくるみ(スワドル)、寝返りができるようになったら、スリーパーを使用するようにしましょう。

3.柔らかい寝具、枕、ぬいぐるみ、掛け布団などを寝床に置かない。
赤ちゃんの寝床には、基本的に何も置かないことが鉄則です。前編で紹介したとおり、窒息事故が起きたときの状況に、「掛け布団等の寝具が顔を覆う・首に巻きつく」「ベッド上の衣類やクッション等で顔を覆われる」などがあります。

そのため、窒息の原因になり得る柔らかいブランケットや枕、ぬいぐるみなどは置かないようにしましょう。また、掛け布団も軽い・重い関係なく、窒息につながってしまうことがあるため、使用はしないでください。

4.乳児は親(養育者)のベッド・布団ではなく、同室でベビーベッド・布団に寝かせるのが望ましい。

睡眠時の安全を確保するには、ベビーベッドの使用が推奨されています。 写真:PIXTA

米国小児科学会は、安全な睡眠環境は「ベビーベッドが一番安全」「硬いマットレス」と繰り返し伝えています。大人のベッドにベッドガードを設置し、一緒に寝ている方もいらっしゃいますが、マットレスと柵の隙間に顔が挟まり窒息してしまうこともあります。

また、「硬いマットレス」を推奨しているのは、柔らかいマットレスだと顔が埋まり、窒息のリスクを高めてしまうからです。

なお前編でお伝えしたとおり、添い寝も場合によっては危険なので、できるだけ赤ちゃん用の寝床に寝かせること。もし添い寝をする場合は、ママ・パパが疲弊していないとき、そして周りに窒息のリスクを上げる枕やぬいぐるみ、掛け布団などがないことを確認した上で、行うようにしましょう。

■予防に有効な習慣とは?

1.乳児をタバコの煙に曝露させない。
これまでの調査により、タバコも乳幼児突然死症候群の大きな危険因子と考えられています。また、妊娠中に喫煙すると、発症率を高めるという調査結果も。乳幼児突然死症候群の発症リスクを下げるには、喫煙をしないこと。また、妊婦や赤ちゃんのそばで喫煙をするのも避けることが大切です。

2.できるだけ母乳で育児する。
厚生労働省と米国小児科学会の双方がミルクで育てられた赤ちゃんよりも、母乳で育てられた赤ちゃんのほうが、乳幼児突然死症候群の発症が少ないことを伝えています。働いているママや忙しいママも増えた現代では、難しいケースもあるかもしれませんが、可能な範囲で母乳育児を心がけましょう。

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