この4月(2022年)から、高校の家庭科の授業のなかで「金融教育」がスタートしました。子どもが将来お金で困らないようにしてあげたい、と思うのが親の常。でも、お金の勉強をすべて学校任せで大丈夫なのでしょうか?
「期待し過ぎてはいけない」と言うのは、経済アナリストで金融教育の専門家である森永康平さん。
父・森永卓郎さんから息子へ、そして子どもたちへ受け継がれていく「お金との付き合い方」。森永家では、どんな教育がされているのでしょうか。 ※連載全5回の1回目
森永家では「お金の英才教育」をしない。その理由って?
僕の父親(森永卓郎氏)は経済アナリストだし、僕自身が金融教育ベンチャーを経営しているので、家でも我が子にすごく特別な英才教育をやってるんじゃないか? 小さいころからバリバリと経済学を教えこんでいるんじゃないか? って思われるんですが、……してないんです。
3人の子どもがいるんですが、上から8歳、6歳、4歳という並び。真ん中、下の子はまだ計算もできないような年齢なんですよ。
じゃあ、何もしてないかっていうと、していなくもない。でも、やってること自体はいたってフツーです。
おこづかいは少額ですが現金であげています。今はキャッシュレスの時代ですが、小さい子どもは金額の数字を見ても理解できないので、硬貨の重さで実感させるんです。
子どもにそれぞれ色違いになるように豚の貯金箱を与えているので、目の前で硬貨を入れさせて、お金の重みを体感させています。貯めると豚さんが重くなるし、使うと軽くなるよね……といったふうに、わかりやすい。
「スーパーのチラシ」でお金のバランス感覚を養う
そして、足し算引き算を小学校で習っているいちばん上の子とは、新聞の折り込みチラシを一緒に見ています。
チラシのいいところは、あらゆる商品の値段が1枚にまとまっているため、子どもが興味ないようなモノの値段についても知れる点。
最寄り駅の圏内に何軒かスーパーがあるんですが、それらのチラシを見比べながら「なんでキュウリの値段は微妙に違うんだろうね」と聞いてみる。
家から徒歩5分以内で行けるスーパー、自転車に乗るような距離のスーパー。10円しか違わないんだったら歩いていけるスーパーのほうがお得なんじゃないか? とか何気ない会話のなかでコスト感覚やトレードオフの発想を身に付けさせるんです。
そうじゃないと、「どんな苦労をしてでも一番安いものを買うのが正解」といった偏った判断に繋がっていっちゃうんですよね。
実際には、選択肢って複数あるんです。選択肢は平等なのに、コスト感覚やトレードオフの発想がないと、どうしても「一番安いものを買う」一択になってしまう。
そうした思い込みが、日本人にありがちな「お金は貯めるのが絶対に正しい」という思考停止に繋がっていくんです。
一番家から近くて、一番安かったらお得かもしれない。でも、車じゃないといけないような微妙な距離で、ガソリン代をかけていったらコスト的にどうなのか、とか、新鮮な野菜を安く買えるんだったら移動時間が多少かかっても構わない、など、いろんな観点で秤にかけてみることです。
本来は、選択肢の中で「自分にとってどれが本当に満足度が高いか?」という視点で選択をすべきなので、こうしたことからお金のバランス感覚を養っていってもらいたいですね。