叱る? ほめる? イヤイヤ期の子どもと向き合うパパママの基本的な心構え
【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「イヤイヤ期」子どものなかで起きていること#1
2023.03.16
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一
Q1 イヤイヤ期の「わがまま」を叱ってもいいのか?
イヤイヤ期の「わがまま」を叱ってもいいのか?
A1 時には叱る必要もある。でも、まずほめることを意識して
親御さんからすれば「わがまま」と言える子どもの行動。この正体は、自己主張です。もっと水遊びをしたい、おうちに帰らず遊んでいたいなど、子どもは「したいこと」を自己主張するようになります。
一方、親の視点では「してほしくないこと」を自己主張する様子は「わがまま」に見える。客観的にはそんな構図になります。
自己主張は成長の証ですが、いつも自由にさせるわけにはいきません。おうちに帰る時間には遊ぶのをやめさせなければいけないし、クルマが行き交う道路で手をつなぎたくないと言っても安全確保のために手をつなぐ必要があります。
友達をいじめていたら当然、叱ってやめさせるべきです。やってはいけないことを制限するという意味で、叱る必要がある場面はあるでしょう。
自己主張できることは成長のステップですが、やりたいことを何でも許してしまって歯止めが効かなくなったら、それこそ「わがまま」になってしまいます。大切なのは、すべてが自分の思い通りにいくわけではないということを、時にはたしなめ、注意して教えていくことです。
子どもは泣いたり、怒ったり、イヤだ、まだ遊びたいと拒否反応を示すでしょう。それは、したいことが制限されることでストレスがかかるからです。これはじつは大人も同じ。
でもすでに社会性を身につけた大人は、他者を理解し、自己主張ばかりが通るわけではないことを知っているので、ストレスを受け流し、気持ちを切り替えることができます。
そこで「叱ってもよいか?」という質問ですが、私の答えは「時には必要」となります。ただし、必ずフォローしてあげてください。遊びをやめることができた、手をつないで歩いてくれたなら、「よくやめられたね」「言うことがきけたね」としっかりほめてあげましょう。
この経験によって子どもは自己主張だけでなく、相手を理解するという社会性を獲得していくのです。
「5つの子育て方法」どれがいい?
こちらの「子育て法の分類」の資料をご覧ください。
子育てのスタイルは家庭によってかなり違いがあるものですが、大きく分けると「温かい子育て」「放任子育て」「冷たい子育て」の3つになります。
「温かい子育て」はさらに2つに分けることができます。
1つが子どもの様子を見ながら時には叱ったり、時には受け入れたりする「応答的子育て」。臨機応変にルールを変えながら対応する子育てのスタイルですね。
もう1つが、決めたルールの範囲内であれば受け入れ、ルールから外れる場合に叱る「権威的子育て」。ルールを厳密に守ることを重視するスタイルです。
「放任子育て」は何でも受け入れ、やりたいようにやらせる子育てのスタイルです。
「冷たい子育て」もさらに2つに分けることができます。1つが、すべて親の言うとおりにさせる「専制的子育て」。もう1つが、言うことをきかせるために叩くなど罰を与える「懲罰的子育て」です。
心理学では、親御さんにこの分類のどのスタイルで子育てをしているかについてアンケートを取り、子どもの成長を調査する研究がなされてきました。その研究によると、「専制的子育て」と「懲罰的子育て」は、子どもの感情や言葉などの発達を阻害することがわかっています。
一方、「応答的子育て」と「権威的子育て」は、子どもの感情のコントロールや共感性など発達に良い影響をもたらすことがわかっています。
では、「放任子育て」はどうでしょう? これは「専制的子育て」と「懲罰的子育て」よりはマシですが、やはり良くありません。放任ではルールを学んでいかないからです。
子どもはイヤイヤ期に一定のルールで制限されることで、「イヤイヤ」とは自己主張しつつも、家の中や世の中にルールがあることを学んでいくことできます。とても建設的な学習の時期だと言えます。
そもそも、「イヤ」と言える機会が非常に大切です。何でも親の言うとおりになるのではなく、自分がひとりの独立した人間であることを意識しながら育っていくために、「イヤイヤ期」はとても重要なプロセスなのです。
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それまでに比べて成長がわかりにくくなる2歳の時期。しかし、その小さな体の中で大きな成長が起こっていることがご理解いただけたかと思います。
次回のレポート第2回では引き続き、参加者から寄せられた質問にお答えいただきます。「モノで駆け引きしてもよいのか?」「言うことを無視されたらどうすればよい?」など、多くのパパママに共通した悩みが登場します。
(#2に続く)
構成・文/渡辺 高
榊原洋一先生監修 2歳児のための「えほん百科」
2歳のえほん百科
2歳は言葉を獲得する大切な時期です。ものの名前や色、形など、子どもの「これ、なあに?」にこたえる一冊。具体物だけでなく、あいさつや、大小にまつわる言葉などを、覚えやすいように絵と写真で表現していきます。
2歳のうたとおはなし
表現する楽しさが育つ2歳! 「うた」は、子どもの言葉の発達にとって、豊かな刺激になります。「おはなし」は、人間関係のルールを身につけていくうえでの、大事な道しるべとなります。言葉のリズムを重視した、くりかえしの多いうたとおはなしで、語彙と表現する楽しさを育てます。
年齢別知育絵本No.1「えほん百科」シリーズ
0・1・2・3・4歳で累計250万部! 榊原洋一先生監修の年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは男女の区別なく年齢で選べるので、プレゼントにもぴったりです。以下の詳細ページから「えほん百科」の中身をたっぷりご覧いただけます。
榊原 洋一
小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。
小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。