叱る? ほめる? イヤイヤ期の子どもと向き合うパパママの基本的な心構え
【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「イヤイヤ期」子どものなかで起きていること#1
2023.03.16
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一
自分の意思で歩けるようになり、生活圏を一気に広げていく2歳児。ものの名前をどんどん覚え、2語文が話せるようになるなど、言葉の面でも大きな成長が見られる時期です。
自分でできることが増えると共に、自己主張が出てくるこの時期、これまで喜んでいたことを嫌がったり、大人が手を貸すことを拒否したり、手がかかることも増えていきます。いわゆる「イヤイヤ期」に悩んでいる方や、これから子どもが「イヤイヤ期」に突入することを心配している方も多いことでしょう。
講談社コクリコCLUBでは、そのようなパパママのために、会員を対象としたオンラインセミナー「正しく知って安心! 『イヤイヤ期』 子どもの中で起きていること」を実施しました(2023年1月13日開催)。
講師は子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として診察を続けている榊原洋一先生です。
(全3回の1回目)
榊原洋一先生プロフィール
大人が対応に困りがちな“はざま”の年齢
本日は、2歳児のお話です。タイトルに「イヤイヤ期」とありまして、今まさにイヤイヤ期を迎えたお子さんにお困りの方は、ちょっと身構えてしまうかもしれませんね。
いつも横になっていて、ミルクを飲んで、ウンチとオシッコをするだけだった0歳児は、寝返りを打ち、立つようになりました。
1歳児の1年は歩き回るようになり、言葉を発するようになって、2歳のお誕生日を迎える頃には2語文を話し、自分の感情を伝えようとし始めました。この2年間は、とてもわかりやすい変化がある時期でしたね。
2歳児の1年間はどうでしょう? もう歩いていて、おしゃべりもします。それは3歳になっても変わりません。身体の大きさも0歳児の1年間ほど大きな変化は見られません。
2歳児の大きな子と3歳児の小さな子を比べると、ほとんど同じくらい。つまり体格にも劇的な変化は見られません。
1歳児よりもさらに、成長がわかりにくい時期なんです。
幼稚園と保育園の両方の機能を併せ持つ認定こども園という施設があります。
通常、幼稚園は3歳からですから、認定こども園の元幼稚園の先生からは「2歳児とのコミュケーションが苦手」という声がよく聞かれます。
一方、保育士さんの方からも「0歳児や1歳児にはやるべきことがはっきりしているけれど、2歳児にはどう接していいかわかりにくい」という悩みが聞かれます。
ちょうど大人が対応に困りがちな“はざま”の年齢なんですね。
悪いことに、「イヤイヤ期」なんていう呼ばれ方もされています。じつは英語にも同様に「terrible two」という言葉があるんです。「恐ろしい2歳児」「ひどい2歳児」といった意味で、これもかなりネガティブな言葉ですよね。悩みは世界共通です。
今回、たくさんのご質問をいただきましたが、みなさんこのイヤイヤ期についての困りごとがたくさんあるようです。でも、2歳児の1年はネガティブなことばかりではありません。そのあたりについて、この後詳しくお話ししたいと思います。
イヤイヤは自己主張の能力
2歳児の特徴は、大きく次の4つに分けることができます。こちらの図をご覧ください。
全身運動
支えてあげると、ブランコに一人で座ることができる。すべり台を登り、すべり降りられる。三輪車を押して歩いたり、漕いだりできる。階段を片足で1段ずつ上がるのではなく、両足で上がるなど、自分でいろんな移動ができるようになります。
微細運動
積み木を並べる、ハサミで切る、ノリで貼る、丸い形を描けるなど、手を使って細かな作業ができるようになります。
社会性
自己主張するようになると共に相手を理解できるようになります。例えば、お母さんの言い分もわかるけど自分はそうしたくない、といった感情です。1歳まではやりたいことを何でもやってしまっていたけれど、我慢して待てるようになる。また、自分より小さい子の世話をやく、言いつけに来るなどの行動が見られるようになります。
言葉
自分の名前を言えるようになり、自己と他者を区別できるようになります。
この「社会性」と「言葉」はとくに重要です。身体的な成長も見られますが、それ以上に内面が大きく成長する時期なのです。
なぜ2歳児の年代が「イヤイヤ期」や「terrible two」と言われるか?
それはずばり、この「社会性」の部分、とりわけ自己主張の能力が大きく発達するからなのです。それゆえに大人が対応に困ってしまう場面が増えてくるというわけですね。
それでは、ここからは皆様からの質問に答えていきましょう。