【発達面から分析】赤ちゃんの「パパ見知り」のワケを専門家が解説!

パパのことが嫌いなの?「パパ見知り」の真実#1

昭和女子大学人間社会学部教授:石井 正子

パパが嫌いだからギャン泣きするの?

ママが抱っこしても平気なのに、パパが子どもを抱いた途端に、烈火のごとく泣く子がいます。パパが嫌いだから泣くのでしょうか?

「子どもはパパが嫌いで泣いているのではありませんし、知らない人だと思って泣いているわけでもありません。それよりも『いつもお世話をしてくれるママとはなんだか違うな』、という違和感から泣いているのです。

ギャン泣きする我が子を見るとパパとしては気落ちしてしまいますが、子どもの成長を考えた場合、赤ちゃんが人をちゃんと区別できていることは認知能力の発達という点で素晴らしい成長なんですよ」(石井先生)

人見知りは成長の証

「パパ見知りについてお話しする前に、いわゆる『人見知り』について解説させてください。赤ちゃんは生後3〜4ヵ月ごろから徐々に母親とそれ以外の人を視覚的に区別しはじめます。

その後、生後6ヵ月ごろになると、ママじゃないとダメという反応をするようになってくるんです。

そして生後8ヵ月ごろにこの傾向が強くなり、英語では“eight-months anxiety(8ヵ月不安)”と表現さたりします」(石井先生)

人見知りは子どもの成長過程として意味のある段階であり、一生涯続くものではないと話す石井先生。英語でもその言葉があるように、世界中で多くの子が「8ヵ月不安」を経験し、およそ1歳を過ぎたころからその傾向が弱まりはじめます。

個人差はあるものの、言語獲得が進む2〜3歳ごろには見られなくなります。人見知りは我が子だけでなく、多くの赤ちゃんに訪れる成長のステップなのです。

「パパ見知り」は子どもの生存戦略

ではなぜ、パパ見知りが起きるのかというと、子どもに生存本能が備わっているからだと石井先生は言います。

「赤ちゃんは人を区別する認知能力の発達と同時に、身近にいて自分を守ってくれる大人との間に愛着を形成していきます。

愛着形成とは身を守る行動で、自分を守ってくれる存在に終始、くっついていたいという本能が根底にあります。

つまり、子どもは自分が最も安心できる身近な存在を認識して、戦略的にその人を求める行動を起こすのです」(石井先生)

赤ちゃんは身を守るために、自分を守ってくれる存在を求めます。  写真:アフロ
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自分を守り、安心できる存在として子どもの中で高く位置付けされているのがママです。ただ、子どもは状況に応じて順位付けを柔軟に変えることができると石井先生は続けます。

「子どもの中でママが1番だとしても、ママが不在でパパしかいない状況になったら、パパが1番になるんです。そうやって子どもは、その場で最も頼りになる存在に愛着を示します。

ですからパパがお世話をするときにギャン泣きする場合は、その状況を振り返ってみてください。

もしかしたら子どもの視界にママの姿が映っているのではないでしょうか。ママの気配を近くに感じたなら、子どもはママを追い求める可能性が高いですね」(石井先生)

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