【発達面から分析】赤ちゃんの「パパ見知り」のワケを専門家が解説!

パパのことが嫌いなの?「パパ見知り」の真実#1

昭和女子大学人間社会学部教授:石井 正子

「パパ見知り」は子どもの生存戦略

ではなぜ、パパ見知りが起きるのかというと、子どもに生存本能が備わっているからだと石井先生は言います。

「赤ちゃんは人を区別する認知能力の発達と同時に、身近にいて自分を守ってくれる大人との間に愛着を形成していきます。

愛着形成とは身を守る行動で、自分を守ってくれる存在に終始、くっついていたいという本能が根底にあります。

つまり、子どもは自分が最も安心できる身近な存在を認識して、戦略的にその人を求める行動を起こすのです」(石井先生)

赤ちゃんは身を守るために、自分を守ってくれる存在を求めます。  写真:アフロ

自分を守り、安心できる存在として子どもの中で高く位置付けされているのがママです。ただ、子どもは状況に応じて順位付けを柔軟に変えることができると石井先生は続けます。

「子どもの中でママが1番だとしても、ママが不在でパパしかいない状況になったら、パパが1番になるんです。そうやって子どもは、その場で最も頼りになる存在に愛着を示します。

ですからパパがお世話をするときにギャン泣きする場合は、その状況を振り返ってみてください。

もしかしたら子どもの視界にママの姿が映っているのではないでしょうか。ママの気配を近くに感じたなら、子どもはママを追い求める可能性が高いですね」(石井先生)

パパ見知りの時期で1番大切なこと

パパ見知りの赤ちゃんと2人きりで時間を過ごすことに、高いハードルを感じるパパもいるでしょう。

しかし、パパ見知りの時期に愛着形成をするには、親側の柔軟な対応が必要と石井先生は話します。

「パパが子どもとの関係を深めるときに1番大切なことは、『子どもが心地よく過ごせる』かかわり方を選択することです。

パパがお世話をして子どもがどうしても泣き止まないなら、その場はママに任せてパパは家事を担当するなど、子ども中心に生活を考えることが大切です。

こういった柔軟性のある対応が、いずれ子どもとの距離を縮めることにつながっていきます」(石井先生)

長い目で見て考えよう

子育ては長いスパンで考えてほしい、というのが石井先生の考えです。

「今、この瞬間はパパがお世話をすると子どもが泣いてしまうとしても、いずれパパじゃなきゃダメ! という時期がくることもあります。例えばパパと遊んだほうがダイナミックな体験ができるから好き! という具合です。

かといって、その状況は自然にはやってきませんから、子どもの様子を見ながら、親子時間を重ねていってほしいですね」(石井先生)

パパ見知りの時期は子どもがママを求める時期であるので、時として「どーせ、パパのお世話じゃダメなんだろ」と思ってしまうかもしれません。しかし、子どもとの関係をそこで諦めないでほしいと石井先生は強く訴えます。

パパ見知りの時期に子どもと無理なく関係を深めていった先に、「パパじゃなきゃダメ」という時期が待っています。

第2回は、パパ見知りの時期に子どもとの関係を深める方法を深掘りして紹介します。

取材・文/梶原知恵

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いしい まさこ

石井 正子

昭和女子大学人間社会学部教授

昭和女子大学人間社会学部初等教育学科教授。博士(学術)。千葉大学教育学部卒、日本女子大学大学院修士課程、昭和女子大学大学院博士課程修了。専門分野は障害のある子どものインクルージョン、子どもの生活環境が発達に与える影響、乳児院における養育者のエンパワメント等。 【主な著書や監修書】 『子ども家庭支援の心理学』(アイ・ケイコーポレーション) 『新 乳幼児発達心理学―もっと子どもがわかる好きになる―』(福村出版)など

昭和女子大学人間社会学部初等教育学科教授。博士(学術)。千葉大学教育学部卒、日本女子大学大学院修士課程、昭和女子大学大学院博士課程修了。専門分野は障害のある子どものインクルージョン、子どもの生活環境が発達に与える影響、乳児院における養育者のエンパワメント等。 【主な著書や監修書】 『子ども家庭支援の心理学』(アイ・ケイコーポレーション) 『新 乳幼児発達心理学―もっと子どもがわかる好きになる―』(福村出版)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。