子どものことばの遅れが気になったら…小児精神科医が教える「親にできること」

保護者の不安にこたえ、ことばの発達をうながす効果的な声かけや遊びをご紹介

小児精神科医:古荘 純一

写真:アフロ
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うちの子ことばが遅い? 

「まわりの子はあんなにお話しするのに、うちの子はしない……」
自身のお子さんに“ことばの遅れ”があるのではないかと思うと、誰しも心配になるもの。ついついよその子と比べ不安になったり、自分が悪いのでは? と心を痛めたりしている人も多いようです。

今回は『ことばの遅れが気になるなら』の著者であり、小児精神科医でもある古荘純一先生に、寄せられた相談ケースをもとに、「ことばの遅れ」をどう受け止め、子どもとどう向き合い、どのように働きかけたらよいかをおたずねしました。

古荘 純一(ふるしょう・じゅんいち)
青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。小児科医、小児精神科医、医学博士。小児の心の病気から心理、支援まで幅広い見識をもち、教職・保育士などへの講演も行っている。

ことばの遅れ=発達障害と決めつけないで!

相談ケース1
2歳半になる息子のことばが増えず、義母から「発達障害じゃないの?」と指摘されてしまいました。それ以来、子どもの様子に過敏になってしまい、緊張した雰囲気が続いています。

「発達障害」が広く知られ、関心が高まるにつれ、ことばの遅れをすぐに発達障害と結びつけるケースが増えています。

1~3歳の子どもは、発達過程で個人差がとても大きく、ことばの遅れだけで発達障害を診断することは困難です。安易に決めつけず、まずはことばを育てる環境づくりに重点をおきつつ、心配なことはかかりつけの小児科や自治体の相談窓口など、専門家に相談しましょう。

ただし、難聴が疑われる場合は、早めの対処が必要です。できるだけ早く聴覚検査を受けましょう。

相談窓口で「様子をみましょう」と言われたら…?

〈Photo by iStock〉

相談ケース2
娘のことばが遅いことをママ友に相談すると「もっと声かけをしてみたら?」と言われてしまい、落ちこんでいます。読み聞かせをしたり、話すようにうながしてみたりしているのですが、私の愛情不足のせいなのでしょうか。また1歳6ヵ月健診でもそのことを指摘され「様子をみましょう」と言われました。具体的にどうすればよいのでしょうか。

子どもにことばの遅れがあるからといって、周囲の人が母親を責めるのは間違いです。

現代の子育ては、母親にかかる負荷がとても大きいもの。加えてことばの遅れがあると、責任を感じてさらに追いつめられるケースが少なくありません。

周囲の心ないことばや、教科書どおりにいかない現実……親が抱える苦しみを子どもは敏感に察知します。こうしたストレスがことばの発育に影響することも。

ひとりで悩まず、相談窓口に話を聞いてもらったり、親子教室に参加してみたり、負担を軽くすることも大切です。

「様子をみる」ってどうするの?

さらに相談窓口で「様子をみる」あるいは「経過観察」といった結果が出たら、次のことに気を付けて子どもの様子をみてあげましょう。

●「みているよ、大丈夫」という安心感のなかで見守る
愛着の形成は、ことばの発達に欠かせない要素です。安心してすごせるように見守り、スキンシップを心がけることも大切です。

●のびのびと自由に遊ばせる
子どもの好きな遊びをさせてあげましょう。遊ぶことで五感や運動機能の発達がうながされ、やがて発語につながります。

●子どものペースに合わせる
遊びや習い事は、子どもが楽しんでいるものや自主的に選んだものを優先させましょう。子どものペースに合わせることが大切です。

●チャレンジ精神を応援する
うまくできないことがあっても、けがや事故の危険がないかぎり、過保護に手助けしないようにします。

●命令ではない声かけで支える
「○○しなさい」などと命令や𠮟責するのではなく、「これはなんていうのかな?」とか「うん、○○だね」というように、否定せずに声をかけるようにしましょう。

「様子をみる」というのは、なにもせずに放っておいて大丈夫、ということではありません。子どもの「ことばの芽」を育むためにも、状態をよく観察し見守ること、適切な働きかけをしていきましょう。

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