「子育てしている人」や「日中働いている人」も身近な施設に! 沖縄「繁多川公民館」のスゴい中身

シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#3‐2 「繁多川公民館」【2/2】(沖縄県那覇市)

ライター:太田 美由紀

東日本大震災が一つのきっかけになった地域の防災

繁多川(はんたがわ)公民館では地域の人の思いから生まれた講座や企画がたくさんあります。中でも2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに立ち上がった講座は、館長の南信乃介(みなみ・しんのすけ)さんの印象に強く残っていると言います。

震災直後、南さんは地域の人に会うたびに何度もこんな声をかけられました。

「何か東北の人たちにできることないかな」
「あの映像を見てたら居ても立ってもいられないよ」

沖縄から遠く離れた東北の震災です。なぜそのように自分ごととして捉えられるのか。南さんはたずねました。すると、こんな声が返ってきました。

「ふるさとが荒れ果てて見る影もなくなってしまう経験を、私たちもしているから」

沖縄戦を生き抜いてきた年配の人たちは、テレビに映る津波の被害を受けた東北の地に、沖縄戦で荒れ果ててしまったふるさとの姿を重ねていました。「今は何ができるかわからないけど、どうしたらいいかを考える場はつくれます」と、南さんはその場で約束しました。

話し合いには、第1回で紹介した豆腐づくり「あたいぐゎープロジェクト」に関わっていたメンバーと、「すぐりむん(優れた人)」が集まることになりました。「すぐりむん」とは、地域でその人の経験や知識を提供する人材として実行委員会で認定された人たちで、人生のロールモデルとして地域の人たちに親しまれています。

新しい公民館のあり方として全国的にも注目されている、繁多川公民館。  写真提供:繁多川公民館
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集まった15人と公民館のスタッフは、「畑にあるほうれん草ひと束でもお金に変えて送ろう」「バザーをしよう」と話し合い、震災から3週間後には、義援金集めのために、「あたいぐゎー手作り市」と名付けたチャリティーバザーを開催しました。そして、すべての売り上げを岩手県の宮古市に直接届けることになりました。手作り市はその後も毎年行われています。

「それをきっかけに、防災意識も高まりました。炊き出しを体験する避難訓練をしたり、今でいう自助の力を高めるために地域づくりをしようと、住民同士で街歩きをしながら避難経路を確認したりしたんです」

沖縄の住宅地は入り組んでいます。細い路地や行き止まりが多い地域、独居高齢者が多い地域、あそこの井戸は危ないなどさまざまな課題が見つかります。

行政の防災担当が対策を考えて防災計画を立てる予定でしたが、それよりも早く、調査に協力した地域の人たち自ら対策を考えて、次々に改善がはじまりました。南さんは驚きました。

地域の困りごとは「自分ごと」になると動きだす

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