子どもだけで作った手作り屋台39店がズラリ! 2000人が集う「ゆめ横丁」で子どもが得る力とは

シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#2‐2 どろんこプレーパーク「川崎市子ども夢パーク」(神奈川県川崎市)の“こどもゆめ横丁”

ライター:太田 美由紀

よく晴れた2022年11月の日曜日、3年ぶりに入場制限のない「こどもゆめ横丁」に約2000人が訪れた。  撮影:太田美由紀

「川崎市子ども夢パーク(以下夢パーク)」は、東京都にほど近い神奈川県川崎市にある子どもや若者のための居場所。今年、2023年7月末には設立20周年を迎えます。

夢パークでは子どもたちによっていろいろな催しが企画されます。なかでも子どもたちがとても楽しみにしているのが年に一度開催される「こどもゆめ横丁」。

子どもたちだけでお店を出して、大人はじっと見守り待つだけ。手や口を出したくなっても出しちゃダメ。

どうなるかなんてわからない。正解だってわからない。だからこそ、最高におもしろい。喧嘩したって、失敗したって、みんなで笑えば、それがまた楽しいのです。

最後には教育学者・汐見稔幸先生からのコメントもあります。

※全4回(#1を読む)

最初から最後まで自分たちの頭で考え、手を動かす

2022年11月6日、「こどもゆめ横丁」当日の朝、大きな荷物をいくつも抱えた子どもたちが夢パークの門の前で待機していました。その数は40人ほど。門が開くと、みんな我先にと会場に走り出します。

「こどもゆめ横丁」の決まりは、既製品を売るのではなく、必ず自分たちで手を加えてオリジナル商品にすること。そして大人は手伝わないこと。

出店できるのは小学生から18歳までで、子どもたちだけで企画、仕入れ、値付け、店舗の建設、販売まで全てをやり遂げなければなりません。

当日の朝。開門前から大勢の子どもたちが準備のためにやってきた。  撮影:太田美由紀

準備をしている子どもたちは意気揚々として楽しそうですが、少し離れた場所で、お母さんやお父さんが心配そうに見守っています。店舗のある敷地内には、11時の開店まで大人は一歩も入れない決まりです。

夢パークの運営をしている認定NPO法人フリースペースたまりばの理事長、西野博之(にしの・ひろゆき)さんは、大人が口出しできないことについてこう言います。

「大人って、子どもが試行錯誤してるとね、こうしたらうまくいくよ、これを使えば便利だよ、あそこで仕入れたら安いよ、お店はこんなふうに建てたほうがお客さんの目を引くよ……。そんなふうに、全部言いたくなっちゃうんだよね。

そこを、ぐっと我慢して、手も口も出さないようにすれば、子どもたちは最初から最後まで自分たちの頭で考えて自分たちの手を動かすことができる。失敗だってできる。

そんな経験をできる環境が、今の日本の社会にはどれくらいあるんだろう。こういう環境を、どう守り続けられるか、大人は問われているんじゃないかな」

子どもたちの中には毎年のように出店しているベテランチームもあれば、今回初出店の子どもたちもいます。当日になっても設営が終わっていない店、開店時間直前になって大根の下茹でを始めるおでんやさん、朝まで喧嘩をしていた店もありました。

準備ができていなくても、開店時間はやってきます。午前11時、こどもゆめ横丁、いよいよ開店です!

大好きなことや得意なことにこだわる店も

今回、お店を出した子どもたちは115人。39店舗が出店しました。カラフルな手作り雑貨や食べ物屋、輪投げや射的など手作りのゲームもあります。お店で売る商品や遊ぶ道具は全て子どもたちが考えたオリジナル商品です。

値段も自分たちで考えるので、安く設定しすぎて、全部売れたのに赤字になったり、高く設定しすぎて売れ残ったり。食べ物屋はどこもおいしく大人気ですが、注文に商品が追いつかず、行列ができているところもありました。

消しゴムはんこ(写真右上)はあっという間に売り切れに。「厳しい衛生基準をクリアしたんだよ!」とクッキーやさん(写真右下)。  撮影:太田美由紀
「こおとなウインナー三代目」の店の裏では、横丁に4度目の出店のはるとさん(中1)が、薪の火加減を調節中。  撮影:太田美由紀

異年齢で組んでいるお店も多く、射的の「わくわく屋」というお店は、小学校5年生の創大(そうた)さんと、弟の友人でもある小学校3年生の士葵(しき)さんが二人で出店していました。

二人は工作が大好き。子ども向け工作番組『つくってあそぼ』(NHK Eテレ)の「わくわくさん」から「わくわく屋」と名付けたそうです。

お店は大繁盛でしたが、その横には少し離れて見守る士葵(しき)さんのお母さん。「何度も口出ししたくなったけど、とにかく我慢して二人に任せました」とこっそり教えてくれました。

わくわく屋で的を狙う西野さん。道具は全て手作り。  撮影:太田美由紀

雑貨屋や食べ物屋、射的やゲームなどが多い中、ほかとは違う趣向のお店がひとつありました。その名も「海をまもり隊」。イルカが大好きな中学1年生のはなさんが、「みんなに海のゴミのことを知ってほしい」という思いで出店しました。その思いに共感した高校1年生の友人が手伝ってくれたと言います。

江の島や由比ガ浜、千葉の海岸などにビーチクリーンのボランティアに出かけて拾い集めた海のゴミを使った手作りのアクセサリーを販売。商品と一緒に環境についてのパンフレットも手渡していました。

海のゴミを使った手作りアクセサリーを販売した「海をまもり隊」。お店のペイントやビニールテープで海のイメージを演出。イルカ模様の藍染も自分で染めた。  撮影:太田美由紀
手作りのアクセサリー販売以外にも、マイクロプラスチックが及ぼす影響についての展示も。  撮影:太田美由紀
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