
あなたの街の「公民館」はどう? 全国から注目「繁多川公民館」(那覇)が不登校から高齢者まで 多世代の“居場所“に進化した理由
シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#3‐1 「繁多川公民館」【1/2】(沖縄県那覇市)
2025.03.08
ライター:太田 美由紀
学校に行っていてもいなくてもふらりと遊びに行ける場所
平日の午前中には、不登校の子どもたちもフラリと遊びに来ます。
学校や保護者とも連絡を取り合っており、登録して公民館に来ることで出席扱いにもなります。2021年から自主的に運営をはじめ、翌年からは那覇市の「子どもの居場所事業」として運営されるようになりました。
「学校や地域との連携ができると、不登校の子どもたちともつながりができるんです。夏休みには給食がないので厳しい家庭があることも、子どもたちの様子からわかります。
公民館では子どもを通して家庭とつながりができるのですが、学校に来ない子どもたちがどんな暮らしをしているか、学校ではあまり把握できていないこともわかってきました。
コロナ禍でセーフティネットにつながっていない子どもが増えたので、学校とも連携を取り、子どもに『公民館に遊びにおいで』と声をかけたのがはじまりです。公民館にくれば、地域の人との交流もできるし、サークル活動も体験できる。学習支援もできますし、いろんな支援団体ともつながれますから」(南さん)
いつでもフラリと顔を出せば、いろんな人に出会えます。学校に行っていてもいなくても、サークルに入っていなくても、子どもたちは公民館に自由に来ることができ、地域の人たちと交流しながらさまざまな体験を積み重ねていくことができるのです。
中高生になれば、ボランティアの「繁多川公民館おたすけ隊」にも参加できます。「教えられる」「支えられる」存在としてではなく、「共に地域を創っていく」仲間を募っています。今年度の登録者は89名。
子どものころから間近でその活動を見て、「おたすけ隊」に憧れる子どももいます。近年、盛んに「ユースワーカーが必要だ」「子どもの意見を聴こう」などと言われるようになりましたが、「おたすけ隊」の前身のジュニアボランティアは13年前から続いています。
「放課後の子どもの居場所支援、繁多川公民館まつり、エジプトと沖縄をつないでのグローバル公民館など、公民館のいくつかの事業やイベントから参加したい活動を選んで、企画から職員と一緒に話し合い、つくり上げていきます。
部活動のような感覚で参加してくれていますが、大事なのは『やらされる』のではなく、『自分たちで創るおもしろさを感じる』こと。だからこそ人が集まるんだと思います」
自分たちのアイデアや行動を実現することは楽しい。ときには大変な思いをすることがあっても、自分たちの行動で誰かが喜び、認められる機会を得ることもできます。ジュニアボランティアの一期生は今では25歳。
「公民館は、人が出会い、つながることで、みんなの『やれるかも、やってみたい』が生まれる場所」(南さん)という言葉を体現するかのように、公民館に遊びにきていた当時の子どもたちから、2人が繁多川公民館のスタッフになりました。


全国の公民館(生涯学習センター、交流館、地域交流センター、地域センター、コミュニティセンター、区民・市民センターなど類似施設含む)の数は、1万3798館(令和3年度社会教育調査より)。
これは、ある大手コンビニチェーンの全国店舗数に匹敵します。繁多川公民館のような公民館はまだまだ数少ないようですが、それぞれの地域にくまなく、これだけの可能性を秘めた場所がすでに存在している──その事実は、私たちにとって大きな希望になりそうです。
公民館は、子どもの育ちにとっても、地域に暮らす人たちにとっても必要な場所。あなたの街の公民館ではどんなことをしているのか、改めて足を運んでみていただければと思います。
第2回では、引き続き「繁多川公民館」のお話です。公民館から始まる地域の防災、地域の公民館への地域の人たちからの働きかけ方についてご紹介します。
取材・文/太田 美由紀
【関連サイト】
●那覇市繁多川公民館
●特定非営利活動法人 1万人井戸端会議
●公民館のしあさって

太田 美由紀
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)、近著として学校取材を担当した『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(編著/汐見稔幸・河出新書)がある。 ●『新しい時代の共生のカタチー地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)、近著として学校取材を担当した『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(編著/汐見稔幸・河出新書)がある。 ●『新しい時代の共生のカタチー地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)