
あなたの街の「公民館」はどう? 全国から注目「繁多川公民館」(那覇)が不登校から高齢者まで 多世代の“居場所“に進化した理由
シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#3‐1 「繁多川公民館」【1/2】(沖縄県那覇市)
2025.03.08
ライター:太田 美由紀
伝統の技を知る人は「すぐりむん」として活躍
学校教育の現場で「探究学習」「プロジェクト学習」などが必要だと盛んに言われるずいぶん前から、公民館が中心となって取り組んできた活動で、農具の復元や、豆腐づくりができる人などの人材を「すぐりむん(優れた人)」として発掘し、協力していただくことで、高齢者の活躍にもつながっています。
そして、もっと豆腐文化に触れてもらおうと、地域のさまざまな世代の人たちが集まり、イベントを開催するようにもなりました。マルシェ「繁多川豆取祭(はんたがわマーミフェスタ)」は、昨年(2024)4月で11回目。回を重ねるごとににぎわいを見せています。
あたいぐゎープロジェクトには、学校の子どもたちや保護者だけでなく、就労支援事業や孤立支援事業、子どもの居場所事業など、多様な人が少しずつ関わるようになりました。豆腐づくりを軸として地域の交流が毎年広がっていきます。

顔が見える関係がスタッフと地域の人をつないでいく
今では繁多川公民館にたくさんの子どもたちが出入りしていますが、昔はあまり見かけなかったと言います。館長の南さん自身も、繁多川公民館に関わるまで「公民館の可能性」に気づいていませんでした。
「公民館は、趣味のサークルや、高齢者の方たちが利用する貸しスペースというイメージを持っている人が多いと思いますが、私自身も昔はそう思っていました。
子どもたちが遊びに来るようになったのは、豆腐づくりで公民館のスタッフや地域の方が学校に入ったことが大きかった。公民館のスタッフが学校で子どもたちと顔見知りになり、公民館に遊びに来やすくなったんだと思います」
スタッフが街を歩けば子どもたちに声をかけられるようになり、中学校でキャリア教育をおこなえば中学生も公民館に遊びに来るようになりました。
楽しければ、子どもたちはきょうだいや友達を連れてきます。子どもたちに話を聞いた保護者も顔を出すようになっていきました。

「知っている職員なら気軽に話しやすいですよね。公民館との最初の出会いが楽しいものであるかはとても大切です。
赤ちゃんからお年寄りまで、利用する人の公民館とのファーストコンタクトは必ずしも公民館ではないかもしれません。私たちスタッフが街を歩いていると、そのスタッフの周りが公民館になるんですよ」
スタッフが街の人たちとばったり出会って道端で立ち話をしていると、新しいアイデアを持ちかけられ、地域の困りごとや社会課題が浮かび上がってくる。そこからまた新しい講座が生まれます。
地域の人と一緒に企画を立ち上げると自分ごととして熱心に参加する人が増え、地域の人たちの手によって暮らしやすい地域がはぐくまれていくと南さんは手応えを感じています。