ママしかダメ… ママを叩いてしまう… 専門家が語るイヤイヤ期との向き合い方
【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「イヤイヤ期」子どものなかで起きていること#3
2023.03.18
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一
講談社コクリコCLUB主催のオンラインセミナー【正しく知って安心! 「イヤイヤ期」子どもの中で起きていること】(2023年1月13日開催)。
講師は子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として診察を続けている榊原洋一先生です。「イヤイヤ期」の子どもについて、セミナーの参加者からたくさんの質問が寄せられ、榊原先生に回答いただきました。
セミナーレポート第3回では、第1回(Q1)、第2回(Q2〜Q5)に続き、質疑応答の内容をご紹介します。
まずはちょっと意外な、こんな質問からスタートです。
(全3回の3回目/#1、#2を読む)
榊原洋一先生プロフィール
Q6 イヤイヤ期がなくても大丈夫?
イヤイヤ期として思い当たるものがありません。イヤイヤ期がなくても大丈夫ですか?
A6 大丈夫、なんの問題もありません
とても聞き分けのいいお子さんのようですね。
見た目にわかりやすいイヤイヤ状態が見られないようでも、日頃のやり取りの中では、さまざまな自己主張が見られるはずです。
お子さんも自己主張と、それが叶わないストレスをうまくバランスさせながら過ごしているのでしょう。親御さんは上手にほめながらコミュニケーションをとれているのではないかと想像します。
すべて親の言うとおりに「ハイ」ばかりのようでしたら、それはそれで心配です。「イヤイヤ期」がないことと、すべて「ハイ」はイコールではありませんから注意してください。
それにしても、皆さん、イヤイヤ期があってもなくても心配なんですね(笑)
Q7 ママを叩くことがあります
嫌がって私のことを叩くことがあります。暴力的になったり、わがままになったりしないか心配です。
A7 叩くまで追い込まないで
感情をコントロールできずに、頼っている親だからこそ叩いてしまう、と言えます。
「イヤ」と感じる状態は、心身にストレスがかかっています。ずっと何かを強いられてストレスがかかりすぎると、感情をコントロールできなくなり、いわゆる「キレる」という状態になります。
理性と感情はそれぞれ脳の部位がつかさどっているので、子どもに限らず、大人だってそうなってしまうんです。口論が白熱しすぎて手が出てしまう人がいますよね。ストレスがかかりすぎるとキレるんです。
感情的になると、行動に出てしまいがちです。大人だって、他人への暴力は自制しても、モノを投げたり、ドアをバタンッと強く閉めたりします。感情のコントロールができなくなった表れですよね。
ですから、ご質問の状況を想像するに、お子さんを追い詰めてしまった結果として、叩くという行動に至っているのではないかと思います。もちろん親御さんには悪気はないのもわかりますし、追い詰めたいなんて考えもしていないでしょう。
ただ、コミュニケーションの中で感じるストレスは大人と子どもではずいぶんと違います。知らず知らずのうちにストレスをかけ続けてしまっているのかもしれませんね。
大人と子どもでは言葉の重さ、そしてスピードに雲泥の差があります。
大人は軽く投げかけたつもりの言葉も、子どもにとってはズシンと重い豪速球だと感じている可能性も。それを立て続けに受けたらどうでしょう?
子どもには対抗する言葉もまだ不十分ですし、次第に追い詰められてしまいます。そして、感情的になって暴力へ、という流れです。
叩くという行為はもちろん悪いこと。でも、その行為を咎める以前に、叩くに至った背景に注目してみてください。
叩いたのはお子さんですが、叩くところまで持っていってしまったのは親御さんであるのも事実なのです。裏を返せば、子どもが暴力に至らないようにコントロールできるのは大人なのです。
ご質問には、親以外への暴力につながるのではないかという不安もあるようですね。親を叩くからといって、保育園のお友達に同じようなことをするかというと、それは別です。対親と対他人は分けて考えたほうがいいと思います。
親子という親密な関係性だからこそ、頼っているからこそ、叩いている可能性が高いと思います。どこかで、キレてもいい相手だと判断していると言ってもいいでしょう。
もし、保育園のお友達とケンカすることがあっても、それはまた別の事情があるはずで、おうちでの叩く行為に結びつけて考えないほうがいいです。
Q8 「ママでないとだめ」「ママにはわがまま」もイヤイヤ期?
何をするにもママでないと納得しなかったり、パパには言わないわがままをママに言ってきたりします。これもイヤイヤ期なのでしょうか?