子ども自身が考えたからみんな楽しい! 最新インクルーシブ公園に届く喜びの声
シリーズ「インクルーシブ公園」最新事情#4‐2 品川区・公園建設担当インタビュー ~これからの公園~
2022.10.28
ライター:星野 早百合
“新しい公園のスタンダード”として、全国的に広がりつつあるインクルーシブ公園。
2022年3月には、子どもたちのアイデアを31案も取り入れたインクルーシブ公園「品川区立大井坂下公園」(東京都品川区)がリニューアルオープンしました。
一体どんな公園が完成したのでしょうか。また、品川区は今後どのような公園づくりをめざしているのでしょうか。
前回に引き続き、品川区防災まちづくり部公園課公園建設担当主査・種元浩(たねもと・ひろし)さん、同じく公園建設担当付主査・佐藤健人(さとう・けんと)さんにお話を伺います。
※全2回の後編(前編を読む)
子どもならではのユニークなアイデア
──「品川区立大井坂下公園」(東京都品川区)は、どのように整備されたのでしょうか。
佐藤健人さん(以下、佐藤さん) 前回お話しした通り、公園づくりに当たって、まずは子どもたちからアイデアをつのろうと【公園づくりワークショップ】を開催しました。
そしてすべての子どもが楽しく遊べる公園のアイデアとして、子どもたちから80案を越えるアイデアが提案されました。その中で「品川区立大井坂下公園」に取り入れたのは、31案です。
公園には、大きく分けて5つの遊具が設置されています。まずひとつは、公園の中心にある複合遊具。車いすや歩行器のままでも頂上まで行けるように、スロープの幅を広くして、傾斜も緩やかにしています。
また、子どもたちの「並んでいるときも楽しい複合遊具にしたい」とのアイデアから、動かしたり音を出したりして遊べるパネル、コミュニケーションボードを設置しました。
コミュニケーションボードとは、今の気持ちを指さしで伝えられる看板で「はい」「いいえ」「わからない」「うれしい」「かなしい」など、それぞれ日本語と英語、イラストで描かれています。
自分の気持ちをうまく言葉にできない子ども、外国籍の子どもとのコミュニケーションに役立つものです。
──子どもたちのアイデアが形になっているのですね。
佐藤さん ほかに「公園に電車がほしい」という案もあったのですが、実現させるにはなかなか難しい。
代わりといってはなんですが、複合遊具を囲むように、地面に線路のイラストを描きました。イベントのときなど、ミニチュアの電車を走らせたらおもしろそうですよね。そういったアイデアの取り入れ方もあります。
人気の遊具を「インクルーシブな遊具」に
──ほかには、いかがでしょう?
種元浩さん(以下、種元さん) ブランコは公園遊具の中でも人気のある遊具ですが、障がいのある子どもでも遊べる背もたれ付きブランコと、皿型ブランコを設置しました。どちらも、子どもたちのアイデアです。
ブランコには通常のブランコのほか、背もたれ付き、カゴ型と、タイプの異なるブランコが用意されていて、小さな子どもや体幹の弱い子どもなども幅広く遊べます。
皿型ブランコもかなりの人気です。座面が皿型で広いので、寝そべったり、4人まで一緒に乗ったりして遊ぶこともできます。
障がいのあるお子さんも親御さんやきょうだい、友達と一緒に乗って遊べるインクルーシブな遊具ですね。
佐藤さん ブランコのまわりには並び順がわかるように、地面に足跡のマークを表示しました。
これは【公園づくりワークショップ】で特別支援学校の先生から「順番待ちが苦手な子がいる」と聞いて、子どもたちが考えたアイデア。
足跡のマークがあることで、並んだり、留まったりができるのだそうです。障がいのあるお子さんだけではなく、小さなお子さんにもわかりやすいですよね。
種元さん また、「車いすやベビーカーと一緒に楽しめる高さの砂場がほしい」という子どものアイデアから、通常の砂場にテーブル状の砂場を設置し、3つの異なる高さで遊べる砂場を作りました。
いちばん上の段の砂場は、車いすのままテーブルに着くような形で近づけるので、ほかの子どもたちと一緒になって砂遊びができます。
遊びを楽しくする工夫として「砂場の近くに水道があると、砂遊びがもっと楽しくなる」との声もあったので、砂場の台に直接蛇口を取り付けています。
──砂場に川を作ったり、泥だんごを丸めたり……子どもたちにとって最高の環境ですね。
佐藤さん あとは、気持ちの切り替えが苦手な子、にぎやかな場所が苦手な子のために、休憩ができるクールダウンスペースを作りました。
この遊具を設置したのも、特別支援学校の先生にお話を伺った経験が生きているなと感じます。