4歳5ヵ月から通い出した「療育」で変わったのはパパだった!〔自閉スペクトラム『リエゾン』三木先生監修〕

娘5歳の凸凹発見・成長実録記 #2 娘4歳5ヵ月ころの様子とパパの変化

療育で変わったのはパパだった!

娘が療育に通い始めたとき、私は第3子を妊娠中で妊娠8ヵ月。予定日まで3ヵ月という状態でした。

さらに出産後は、きょうだい児は一緒に通えないという療育施設の規約があったので、私が臨月を迎えてからは、パパが有給休暇をとり、毎月の療育へ付き添うことになりました。この状態、実は私としては願ったり叶ったり。

というのも、実はこのころ、パパと娘の関係は良いものではなく、「言われたことはすぐにしなさい!」というパパに対し、娘は反応が遅かったり、反応しなかったり。

発達相談で、通常の指示ではわかりにくいことが判明してからは、パパの娘に対する接し方は少しやわらかくなったものの、短気な性格のパパは、言われたことをすぐにしない娘へのイライラが隠せない様子がよく見受けられました。どんどん沸点が下がるパパ。そして、そんなパパを見てイライラする私。

しかし、父娘で療育に通うようになり、それまで娘と2人でいることがほぼなかったパパが変わり始めました。というのも、私の話でしか知らなかった、外での娘の様子を自分で見るようになったことが大きかったようです。

例えば、複数の遊具を周回しながら運動する「サーキット遊び」で、娘がどうしてもやりたくないコーナーを先生が促したところ、大泣きし、そこからずっと不参加になったことや、お散歩に行った公園で、大好きなブランコを使い続け、先生にお友だちへの交代を促された後も、また並び続けてブランコだけを楽しんだこと、など。

娘が誰に対しても等しく我を通す姿を見て「娘はこういう子」という認識が深まったようです。

パパの変化が大きな収穫に!  イラスト/オヨネ

また、娘に対する先生の接し方で、印象に残った場面を話してくれたこともありました。

しっぽを付けた子と、そのしっぽを取る子に分かれて追いかけっこをする「しっぽ取り」遊びをしたときに、もともと乗り気ではなかった娘が、途中で「もうやりたくない」となりました。

そこで先生は、参加を促すのではなく、しっぽを取られた人がしっぽを補給するための場所を作り、そこでしっぽを渡す役に娘を任命しました。

そこから楽しんで参加した娘を見て「やる」、「やらない」ではなく、別のアプローチ方法を提案して、参加を促す方法もあるのか、と感心したそうです。

【三木崇弘先生】
特性の有無にかかわらず、大人も子どもも、気持ちの切り替えが難しくなることはありますよね。そして実は、子ども自身も、参加できないこと自体を残念に思っていることもあるので、このように別の役割で参加できる方法を提案してくださるのはとても良い方法ですね!

パパが変わったことで、先回りして娘に注意したり、爆発しそうなパパと娘の間に入ったりすることが大幅に減り、私の負担も少なくなりました。正直言って、私にはこれが大きな収穫でした。パパと娘には内緒ですが。

療育での積み重ねを経て、パパが娘に対して「じゃあ、次はこうしよう」と促し方を変える姿も見られるようになりました。
パパがちょうど育休中(産後2ヵ月間取得)ということもあり、心に余裕があったことも大きかったのでしょう。療育に行くことで、一番変わったのは確実にパパでした。

【三木崇弘先生】
育児の分担が進んできた近年でも、パパ一人でお子さんのお世話をする時間が少なくなりがちです。パパが直接お子さんに接する時間が増えることで、実感を持ってお子さんの情報をママと共有できるようになると良いですね。

次回3回目は、療育を受けても変化のない娘ちゃんの様子をお伝えします。

凸凹成長実録記は全6回。
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『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』著:三木崇弘(講談社)
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みき たかひろ

三木 崇弘

Miki Takahiro
児童精神科医

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)