チーム「家族」の幸せのために…令和になっても変わらぬ「パパの役割」とは

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室【15】「パパの大切な役割とは?」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

「こどもの日」に孫・F菜ちゃんと。石原ジイジが構成を担当した林家木久扇さんの最新著書『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)や、『週刊新潮』の連載「令和の失礼研究所 #これってアウト?」も話題。 写真:おおしたなつか

パパママは今日も悩んでいます。夫婦の関係や子育てをめぐる困りごとに、どう立ち向かえばいいのか。

500冊を超える人生相談本コレクターで、3歳の孫のジイジでもあるコラムニスト・石原壮一郎氏が、多種多様な回答の森をさまよいつつ、たまに自分の体験も振り返りつつ、解決のヒントと悩みの背後にある“真理”を探ります。

今回は、「パパにとっての大切な役割って何ですか?」という新米パパ(0歳男児の父32歳)のお悩み。はたして人生相談本&石原ジイジの答えは?

※過去の悩み相談はこちら

パパママ双方が平等に大変と思えるように動く

「父親として我が子に何ができるか」「どんなパパを目指すべきか」「子どもとどう接するべきか」――。

初心者のパパもベテランのパパも、あれこれ思い悩んでしまう。もちろんママも思い悩むが、パパならではの右往左往はありそうだ。相談者は、パパになって3ヵ月。同じ悩みを抱えたパパ&パパ予備軍に、人生相談はどんなアドバイスを贈ってきたのか。

最初に取り上げるのは、妻の妊娠を喜ぶいっぽうで、父親になることにプレッシャーを感じているという男性。仕事は嫌いで趣味を第一に考えてきた自分に、父親が務まるのか不安を覚えているとか。

「もちろん、一番大変なのは妻なので一生懸命支えていく所存です」と決意を示しつつ、「こういうとき男はどういう心構えでいれば良いのでしょうか?」と尋ねている。映画ライターでデザイナーの高橋ヨシキさんの回答は、次のとおり。

〈これまでの人類のうち、かなりのパーセンテージの人が、それこそ何十万年にも渡って子育てし、まがりなりにも種を存続させてきたわけですから、ここはひとつ「なーに、石器時代からみんなやってきたことだから、自分にできないわけがないじゃんか」と自信を持っていいでしょう。

(中略)子育ての時期というのは、ヒーコラ言っているうちにアッという間に終わってしまうそうです。(中略)だいたい夫婦間の争いというのは、子育てに限らず「自分のほうがよりヒーコラしているのに!」という不平等感から生まれるのが常なので、そこを「お互いヒーコラしてて大変だ」と双方が思えるように動くに越したことはないです〉

(初出:メールマガジン「高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド」。引用:高橋ヨシキ著『高橋ヨシキのサタニック人生相談』2018年、スモール出版)

高橋さんは「数年間はヒーコラ度が高くなるでしょうが」とねぎらいつつ、「もし子供を預けられる人がいたら、たまには遠慮なく預けてどこかにご夫婦だけで遊びに行ったりする機会を設けるべきでしょう」とも言っておる。

協力しながら子育てしていくのは大前提としても、どうしてもママの側が追い詰められてしまう。ママを楽にするために、そして夫婦の関係がギクシャクしないためにどうすればいいかを考えるのは、パパの大切な役割じゃ。

毎日笑って「快」を与える

昨今は「パパも子育ての当事者」という意識は、かなり広まってきた。10ヵ月の男の子のパパからの「ズバリ、子育てのコツって何ですか?」という相談にも、そんな意識が伺える。

この相談は、「父親であることを楽しむ生き方」を提唱するNPO法人ファザーリング・ジャパンが制作した本の「パパのあるあるQ&A」というページに掲載されていたもの。同法人のふたりの理事が回答している。副代表理事で神戸常盤大学教育学部こども教育学科准教授の小崎恭弘さんは、こうアドバイス。

〈お子さんが赤ちゃんであれば「快」を与える存在になることです。(中略)お子さんの発達段階や年齢によってコツは異なりますが、先を見通しながら戦略を立てて子育てするのが大切。「幸せな家族」というゴールを目指して、パパもしっかり役割を果たしましょう〉
(引用:NPO法人ファザーリング・ジャパン著『新しいパパの教科書』2013年、学研プラス)

次いで、千葉大学教育学部付属幼稚園教諭の久留島太郎さんは、こう言っている。

〈子育てのコツは、親自身が笑って生きることではないでしょうか? 大変なことも多いですが、親が楽しみながら生活している姿を見る子どもたちは、自然と自分の人生の主人公になれるのではないかと思います〉(同)

小崎さんは「快」の例として、ごはんを食べさせたりおむつを替えたりといったことをあげている。その後の「幸せな家族」も、久留島さんが言う「親自身が笑って生きること」も、子どもにとって大事な「快」に他ならない。二人はどうやら、同じことを言ってくれている。

きっと、子育てに限った「画期的なコツ」はない。親は親で幸せに楽しく生きることこそが、結果的に幸せで楽しい子育てをしていく「コツ」と言えそうじゃ。

芸術家・岡本太郎は考えなくていいとバッサリ

「芸術は爆発だ!」で知られる芸術家の岡本太郎さんも、男子高校生からの「先生は父親とはどんなもので、こども(特に息子)に対して、どうあるべきだと思いますか」という相談に答えている。

太郎さんの父親である岡本一平さんは、大正時代から戦前にかけて活躍した「元祖漫画家」じゃ。母親の岡本かの子さんは歌人で、夫の一平さん公認の元、自らの愛人を家族と同居させていた。そんな独特な家庭で育った岡本太郎さんの「父親観」とは?

〈父親から影響を受けるということは、考えない方がいいと思うね。父親から影響を受けたという言葉は、いろいろな場合、一種の方便にもなるし、自分自身をごまかすことにもなる。人間はこどものときから孤独な存在で、自分の運命は自分で切り開いていくものなんだ。

(中略)どうあるべきなんて考えないほうがいい。父と子の個性のぶつかりあいで、これはもうさまざまだと思うね。(中略)ただ、親は子に対して何よりも人間であるべきだ。親なんて考えることは意味ないと思うね〉

(初出:集英社「週刊プレイボーイ」連載「にらめっこ問答」より。引用:岡本太郎著『人生は夢 にらめっこ問答』1981年、集英社)

さすが岡本太郎さん、回答も爆発している。ただ、とんがった言い方ではあるものの、親はどうあるべきかなんて「考えることは意味ない」というのは、たしかにそうかもしれん。

ドライな親子関係をよしとしているように読めるが、岡本さん自身の親子関係はけっしてドライだったわけではない。回答では、家族で出かけたり叱られたりした思い出も語られている。父親の訃報を聞いたときには、あまりのショックに腰が抜けてしまったとか。

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