先回り育児や過干渉を卒業! ほんとうの「小学校入学準備」で子どもの自己効力感を育てる〔教育コンサルタント〕が提言

《第2回》過干渉をやめて子どもの自立を促そう/幼児期に「生きる強さ」を身につける7つのこと(全7回) (2/2) 1ページ目に戻る

文章力養成コーチ・教育コンサルタント:松嶋 有香

「過干渉」を卒業して子どもが自分で挑戦する機会を増やそう

松嶋:たぶん最初は、「失敗させたくない」「危ない目に遭わせたくない」「時間に遅れたくない」など、親の愛情から出たものだと思います。

どれも自然な気持ちですが、なんでも親がやってしまうと、子どもが自分で挑戦する機会を奪うことになってしまいます。極端な例ですが、実際に小学6年生でも親がご飯を口に入れてあげる、思春期になっても子どもが親と一緒に風呂に入り、本人は体の洗い方がわからない、といった話もあります。

私が作文指導の現場で何度も見てきたのは、親が答案を書き直して送ってしまうケース。親としては良かれと思ってやります。けれど本人の実力や伸びしろも見えませんし、なにより子ども自身が「自分でやった」という感覚を持てない。

幼児期の生活動作も同じです。親がやってあげ続けると、せっかくの練習の機会が減ってしまいます。

大切なのは結果ではなく、プロセス。ぜひ子どもに自身に挑戦させて、「小さな失敗」をたくさん経験させてください。そして失敗した後、次に成功するにはどうしたらよいかを考えて、再挑戦を繰り返す。失敗をたくさん経験すれば逆に怖くなくなってくるし、たいていのことはリカバリーできるということもおのずと理解できるはずです。

──「親の過干渉」が子どもの成長の機会を奪うということはわかりました。でも意識しなくても、気がついたら先回りしていることもあります。

松嶋:過干渉になる理由のひとつに、親自身が育った家庭環境の影響があります。自分が子ども時代に親にやってもらったことが、その人にとっては「当たり前」になっているのです。

だから、過干渉傾向があるな、という自覚がある方はどうか自分を責めないでください。気づいた時点で、次にどうするか考えることができます。「過干渉気味かも」と気づいた方は、ぜひ、「手放す側に」モードチェンジしていただきたいと思います。子どもを変えようとするのではなく、親の関わり方を少しずつ変える。そこから家庭の空気が変わります。

松嶋有香さん近影 撮影:講談社写真映像部
松嶋有香さん近影 撮影:講談社写真映像部
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──どうすれば子どもに任せられますか?

松嶋:答えはシンプルで、「見ない」こと。見ると手を出したくなるじゃないですか。だから、意識的に様子を見ないことですね。もちろんできないうちは教えることは大事です。ボタンのかけ方がわからないなら「こうやるのよ」と教える。

でも、例えば「あ、お味噌汁をそこに置いたら絶対こぼれる」と親はわかりますが、実際にこぼさないと、子どもは「ここに置いたらこぼれるんだ」ということがわからないですよね。その経験が必要なんです。

後片づけが嫌だからこぼしてほしくないというのは、親に余裕がないから。親にゆとりがあれば、「あ、こぼしちゃったね。次はどうする?」と声をかけられます。失敗から学ぶ機会を子どもに与えることができるんです。

危険なこと以外は、できるだけ手を出さない。たとえお味噌汁がこぼれても、靴が左右逆でも、命に関わる危険でなければ大丈夫です。親の理想が高くなりすぎていないか、一度立ち止まってみてください。

──朝など、どうしても時間がなくてつい手を出してしまいます

松嶋:信じて待つ。そのためには時間のゆとりが必要で、ここが一番難しいところですよね。余裕がないと、つい手が出る。つい口が出る。だから時間のゆとりをつくる工夫も立派な入学準備です。

例えばご夫婦で役割を分担したり、早寝早起きを意識して朝に余白をつくる。家事の時間帯を見直す。こうした工夫でゆとりを持って子どもに関われるようにするのが理想です。

「親の心のゆとりをつくる」のも立派な入学準備

松嶋:親がイライラするのは、子どもができないからだけではありません。親の側に余裕がないから。趣味でも推し活でもいいので、親自身が心のよりどころを持つことも入学準備のひとつです。

親もいきなり完璧にはなれません。私自身も子育てのなかで、何度言ってもできないことに腹が立つ瞬間がありました。

けれど命や大きな危険に関わること以外は、「本当はどうでもいい些細なこと」と一段引いて見る視点を持てると、子育てが楽になります。そうやって少しずつ「スルーできること」を増やしていく。これは親になるプロセスです。今日から全部変えようとしなくていい。

まずは一つ、見張るのをやめる場面を決めてみてください。

過干渉を手放す目的は、子どもを突き放すことではありません。目的は、子どもが自分でできた経験を積み、自己効力感を育てることです。親が「できる」と信じて任せる姿勢が、子どもを少しずつそこに近づけます。うまくいかない日があっても大丈夫です。

子どもは今日できなくても、明日できることがあります。できたときだけしっかりほめる。できなかった日は責め立てずスルーする。親が味方でいることは変えない。その積み重ねが、入学前の子どもをいちばん強く支えることにつながるんですよ。

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松嶋 有香
まつしま ゆか

松嶋 有香

Yuka Matushima
文章力養成コーチ、教育コンサルタント

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」