料理一家・平野レミさんと和田明日香さん 3世代の料理教育術とは?
平野レミさんと和田明日香さんの明るい嫁姑“食育”対談 #3
2021.10.25
子どものハンバーグ作りに口出ししないのは親の修行
レミさん:この間、ハンバーグ作ったわよね。あーちゃんは手伝わないで、子ども3人だけで。
明日香さん:そう、そう。つい、作業の途中で口を挟みたくなるけど、そこはこちらの修行。ぐっと我慢して、「裏返したら?」とか、本当にギリギリまで言わなかった。焦げていたけどね。
レミさん:でも3人、そこからが偉かったのよね。
明日香さん:レシピ通りにやったのに、なぜ焦げたのかを話し合っていました。
「中火って書いてあるから“中”のところにしたけれど、もっと弱い方がいいかもしれない」とか、「ヘラで裏返すときに、時間がかかっちゃって、ここで書いてある時間を過ぎちゃったんじゃないか」とか。
それで、片面が焼けたら、一度フライパンを火からおろし、裏返してから再度火にかけるっていうのを3人で導き出したんです。
レミさん:考えさせるのね、偉いなぁ。
明日香さん:私が「もう焦げるから裏返しなさい」とか、「火が強いから弱火にしなさい」って言ってしまったら、言われた通りに作っただろうけど、自分たちで考えてアイディアを出して、2度目は成功したから、たぶんもう忘れないと思う。
話さなくても料理を作ることがコミュニケーションになる
レミさん:昨日はなめこのお味噌汁作ってくれたでしょ。あれも美味しかった。
明日香さん:なめこのお味噌汁は長女が作りました。5年生の長女は、学校のこともだんだん話さなくなるし、いろいろあるみたいなんです。
平日帰ってくると、ちょっと顔がこわばって、頭の上にツノが見える。何があったのか聞くと、「ママは何を知りたがっているんだろう」って、構えちゃうタイプなので、あまりそれもしたくない。
だから、とりあえず一緒にキッチンに立って、「これよろしく、次はこれよろしく」って、会話しながら、最後はお味噌汁を任せたの。
レミさん:私、いっぱい褒めたもんね。大袈裟だって思っているだろうけど、本当に美味しかったもんね。
あーちゃんちは、味噌が3~4種類、一緒にタッパに入ってて、昨日はその中から、赤味噌をメインにした赤出汁のなめこ汁になっていて、本当に美味しかったのよ。
明日香さん:娘は、レミさんがまた大袈裟に褒めてるなって思っても、そこはやっぱり嬉しいんですよ。顔が緩んでいて、良かったと思いました。
真面目で慎重なタイプの子なので、どの味噌をどれくらい入れるのか聞いてくるんですけど、そこは任せて。「入れ過ぎても大丈夫だよ」って。
料理にかぎらなくていいと思うけど、お年頃の子とは、会話以外のコミュニケーションの取り方を、何かひとつ持っておくといいのかなと思っています。
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料理を通じたコミュニケーション、言葉より伝わるものがあるのかもしれませんね。
第4回は和田家の好き嫌いの克服法と大切にしていることを話していただきます。
取材・文/浅妻千映子
平野レミ(ひらのれみ)
料理愛好家。シャンソン歌手。フランス文学者・平野威馬雄の長女。夫は和田誠氏。
主婦として家庭料理を作り続けた経験を生かし、「料理愛好家」として活躍。「シェフ」ではなく、「シュフ」の料理をモットーに、テレビ、雑誌などで数々のアイデア料理を発信中。また、講演会、エッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案するほか、レミパンやエプロンをはじめとした、キッチングッズの開発も手がける。
近著に『家族の味』(ポプラ社)、『野菜の恩返し』、『新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ』(主婦の友社)など
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和田明日香(わだあすか)
1987年生まれ。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでオリジナルレシピを紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、講演会、コラム執筆、テレビ出演など幅広く活躍中。2018年ベストマザー賞を受賞。
近著に『10年かかって地味ごはん』(主婦の友社)、『ほったらかしレシピ献立編』(タツミムック)、『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)など
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