子どもごはんの悩み 成長して生活習慣病で困らない「炭水化物の食習慣」

人気料理研究家・浜内千波の「子どもを育てるごはんレッスン!」(第1回 炭水化物編)

料理研究家・栄養士:浜内 千波

幼児期の食事は、一生の健康に関わる「食」のはじまりとして、食生活の基礎を作るとても重要な期間です。

でも、自我が芽生えて好き嫌いがあったり、食べる量に個人差があったりと大変な時期でもあります。

また、子どもの肥満も問題になっていて、ほうっておくと大人になって生活習慣病になるリスクが高くなる可能性も指摘されています。

体も心も健やかに育つ幼児期に必要な栄養素とそのレシピ、苦手なものへの対応、そして大人になっても生活習慣病にならないための方法などを料理研究家の浜内千波さんに6に渡って伝授していただきます。

第1回目のレシピは体や脳の活動のエネルギー源になり、幼児期には欠かせない炭水化物がメインのメニューの紹介です。

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炭水化物、たんぱく質、カルシウムを優先的に摂取させて

幼児期の子どもの成長は著しく、身長は伸び、体重も日々増えていきます。健やかな心身と脳の発達には毎日の食事が大事なのは言うまでもありません。

3~5歳の1日の必要摂取カロリーは1200カロリー~1400カロリーと言われ、1回の食事の分量は大人の半分ぐらいが適切ですが、個人差があるのであくまでも目安に。

「7歳ぐらいまでに体の80~90%の土台ができますが、特に脳細胞の発達は目覚ましく、6歳で成人の約90%の大きさに達すると言われています。たとえば脳細胞を“知識を蓄えるポケット”と考えてみましょう。このポケットをできるだけ大きくしておくと蓄えた知識を有効活用することができます。ポケットの大きさが決まるのが就学前なので、この時期の食事はとっても大切なんですね」(浜内千波さん)

いかに幼児期の3食が大切なのかがわかりますが、この時期にポケットを大きくする栄養素はどんなものがあるのでしょうか?

「元気な体作りや脳の発達に欠かせないのが炭水化物、たんぱく質、カルシウム。この3つの栄養素をまずはしっかり摂るようにしてください。ビタミンやミネラルなど他の栄養素を摂ることも、もちろん大事ですが、まずはこの3つを優先的に摂ることが重要です」(浜内さん)

苦手なものを無理に食べさせなくても大丈夫

糖質も脳のエネルギー源になるので、摂ることが大事ですが、おやつの糖分で補えると言います。

また、脂質は肉や魚を食べれば、自然に摂取できますし、炒め物や揚げ物などでは油を使うので、この時期に絶対に摂取しなければならない栄養素ではないそう。

「ピーマンやにんじんなどえぐみやにおいが強い野菜は、嫌うこともあるので幼児期には無理に食べさせることはありません。とはいえ、食べなくていいというわけではありません。まずは食べさせてみて嫌がったら、形や味などを変えて調理してみましょう。そして食べたら、ほめてあげる。また、一緒に作ると愛着がわき、食べるケースもあります。この時期の子どもは気分に左右されることも多いので、そこをうまく利用してみるのもいいですね」(浜内さん)

それでも食べない場合、しばらくは食卓に出さず、その栄養素の代替になるものとチェンジしたり、“食事日記”をつけるのもひとつの方法だそう。

「たとえば、ビタミンやミネラルは果物にも入っているので置き換えてみるといいですね。子どもは甘みがあるものは、ほとんど抵抗なく食べてくれますから。食事日記は食べなかった料理名と食材、切り方、調理法、味付け(使った調味料やその組み合わせ)などを明記しておくと、次に作るときに役立ちます」(浜内さん)

親はおおらかな気持ちで見守って

いろいろ工夫してもダメな場合は親があまりナーバスにならず、おおらかな気持ちでいることも大切だと言います。

「たとえば、ピーマンが苦手でもこの時期に絶対克服しなければならないということはありません。幼児期は目と口と感情が一致していないので好き嫌いがあるのは仕方のないこと。ゴールのあることですから、無理強いしたり、食べないからと怒るのはかえってマイナスです」(浜内さん)

栄養のことはもちろん、食事の環境づくりも大事です。

「家族みんなで食卓を囲み、会話をしながら食べることで子どもの食の傾向や変化などもキャッチできるようになります」(浜内さん)
 
今回は炭水化物がしっかり摂れるレシピの紹介です。

「炭水化物は体内でブドウ糖に分解され、体や脳の活動のためのエネルギー源になります。なかでも脳はブドウ糖だけをエネルギー源とするため、脳の発達が著しい乳幼児は特に脳が多く消費すると言われています。幼児期の炭水化物摂取は必須ですよ」(浜内さん)

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2020年版』によると、1歳~75歳以上まで1日の炭水化物の目標エネルギー量は男性、女性ともに50~65%。年齢、性別にかかわらず、炭水化物がいかに重要で必要な栄養素かがわかります。

ブロッコリーとツナのナポリタン

【材料】(2人分) 
※分量は大人の分量。幼児の場合は大人の半量~多くても2/3程度。

スパゲッティ…160g
ブロッコリー…1/3個(100g)
チーズ(ピザ用)…40g
ツナ缶(小)…1缶
卵…2個
塩…小さじ1弱
トマトケチャップ…適量

作り方

1 ブロッコリーはみじん切りにし、ボウルに入れ、ツナ缶を汁ごと、チーズを加えて混ぜ合わせる。

ブロッコリーの花蕾(からい)の部分を使うと切りやすく、やわらかい。

2 フライパンに水500㏄(分量外)の湯を沸かし、塩を入れ、スパゲッティを半分に折って入れ、袋の表示時間通りにゆでて水気をきる。

スパゲティを半分に折れば、少量のお湯でゆでられる。

3 2とは別のフライパンに薄くサラダ油(分量外)をしき、卵を割り入れ、目玉焼きを作る。

白身を先に焼き、黄身を落とせば、きれいな目玉焼きに。手で入れるのは浜内先生の「きれいに目玉焼きを作る方法」

4 2のスパゲティを1のボウルに入れ、ざっくり混ぜる。

ゆでてすぐのスパゲティの熱で、ブロッコリーが生でもしんなりおいしくできる。

5 皿に1人分ずつ盛り、目玉焼きのせてケチャップをかける。

ケチャップは子どもに自由にかけさせて。

取材・文:須藤桃子 撮影:松本祥孝

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はまうち ちなみ

浜内 千波

料理研究家・栄養士

栄養士。大学卒業後、証券会社を経て岡松料理研究所へ入所。ファミリークッキングスクールを開校し、料理教室を主宰すると共に、食ビジネス全般において、メニュー開発などプロデュースを手掛ける。近年は、食育分野にも力を入れ、レシピ開発や給食従事者への指導に携わっている。 Twitterにて、毎朝のごはんをご紹介している。Twitter:

栄養士。大学卒業後、証券会社を経て岡松料理研究所へ入所。ファミリークッキングスクールを開校し、料理教室を主宰すると共に、食ビジネス全般において、メニュー開発などプロデュースを手掛ける。近年は、食育分野にも力を入れ、レシピ開発や給食従事者への指導に携わっている。 Twitterにて、毎朝のごはんをご紹介している。Twitter: