平野レミさん&和田誠さんの子育て法とは?  和田明日香さんと食育対談

平野レミさんと和田明日香さんの明るい嫁姑“食育”対談 #5

平野レミさん(左)、和田明日香さん(右)。
撮影:森﨑一寿美

料理愛好家・平野レミさんと食育インストラクター・和田明日香さんの明るい嫁姑“食育”対談の最終回。
ついつい言ってしまう、「勉強しなさい」のひとこと。言わない方がいいのか、言った方がいいのか。
平野レミさんと夫・和田誠さんの考え方はいかに!?

期末試験の前日に、ギターを抱えたまま寝ててもいい

平野レミさん(以下レミさん):私ね、和田さん(和田誠さん)と結婚していなかったら、たぶん、農業していたと思うのよ。

和田明日香さん(以下明日香さん):そうなの?

レミさん:うん。野菜作ったり、お米作ったりしていたと思う。泥を触っているのが好きだから。

私、きっと美味し~いのを作っていたと思う。みんなね、そうやって好きなことをやればいいって思う、本当に。

昨日も社会学者の知人と話していたら、今の20代の人たちが、人目を気にしながら生活しているとか言っていて。なんで気にするの、って私は思うのよね。自分の好きなことをすれば、気にすることなんて何もないのに。

明日香さん:今は、知らない人も、みんながみんなを批判できちゃうからね。

撮影:森﨑一寿美

レミさん:私は、勉強よりも好きなことしなさい、って育てられたから。息子たちもそう育ててきたしね。

明日香さん:誠さんもそうでしたよね。好きなことをやらせていましたよね。

レミさん:そうそう。うちの長男(ミュージシャンの和田唱さん)が、ギターが好きでね。
中学の時、明日から期末試験だっていうのに、夜10時ごろ帰ってきたのよ。何してたのかと思ったら、楽器屋にずっといて、手にパンフレットをいっぱい持って、玄関でそれをペランペランさせながら、「お母さん、ギター、どれ買ってくれる?」って。

レミさんの子育てのお話に、笑ってしまう明日香さん。
撮影:森﨑一寿美

明日香さん:それは、焦りますよね。

レミさん:そうよ! 「早く勉強しなさい」って、部屋に押し込んだわよ。
しばらくしたらシーンとしているから、「よしよし、集中して勉強しているだろう」、と覗きに行ったら、制服着たまま夫の古いギター抱えて、ガーって寝てるのよ! 

それで、和田さんのところに行って「和田さん、和田さん、大変! 勉強しないで、寝ちゃってる~」って言ったら、和田さんが、「これでいいんだよ」って言ったの。「これでいいんだ、好きなことさせてるのがいいんだ」って。

結局、ずっと経ってから、ギターを仕事にできて一本立ちした時にね、和田さんが「ほーらみろ。あの時、ギターを取り上げて、勉強しろ、勉強しろ、って言ってたら、自分のしたくもない仕事をしてたかもしれないよ」って。
「だから、好きなことやるのがいいんだよ。売れても売れなくても、好きなことやるのがいいんだよ」ってさ。

勉強しろ、と言うより、自信を持たせたい

明日香さん:でも、親としては賭けですよね。本気度もわからないし。責任を持てるかって考えちゃう。

レミさん:あとね、知り合いの子でね、祖父母に預けられて、部屋に引きこもっていた子がいたの。みんな心配していたんだけど、部屋にこもって自己流で勉強して、なんと歯学部に入ったのよ。塾にも行かずに。部屋にこもってはいるけど、そんなに勉強しているって、誰も知らなかったの。

だからね、勉強だって、芽生えた時には自分からやるのよ。他人からあれやこれや言われなくても。

「難しいですよね。勉強しろ、と言い続けることもある程度は必要なのかなと思ったり、言わないほうがいいのかなと思ったり」。
撮影:森﨑一寿美

明日香さん:親に言われてやったら、親のためにしかならないものね。これをやったら親が喜ぶとか、怒られないで済むとか。
だから、無理にやらせても意味がないってことはわかるんだけど、でも放っておくのも、もどかしい気持ちがあるし。いつやり始めるんだろう、ちゃんと響いているのかな、って思うから、ついスイッチを探しちゃったりして。

でも、そんなことをすると、余計に隔たりが厚くなっていくだろうし、難しいですよね。言い続けることもある程度は必要なのかなと思ったり、言わないほうがいいのかなと思ったり。

受験なんかも、受験に合格するための頭を育てるより、どこへ出しても自分の力でなんとかやるだろうっていう力を育てておくほうが、いざスイッチが入った時に自分の力を信じられると思うけど。

レミさん:そうよね、自分のスイッチが入った時じゃなければね。こっちが言ったってダメよね。

明日香さん:せっかくスイッチが入った時に、「自信がないから、やっぱりやめた」とか「どうせできないからやめる」みたいに思ってしまったら、先に進めないっていう場合もあるじゃないですか。だから、自信とか自尊心とかを育てたほうがいいのかなあって思ったりもする。

それに、ある程度の年になると、親よりも友達の影響が大きくなって、親の言うことより、友達のひとことでガラッと気持ちが変わっちゃったりもするよね。
親ができることって何もないっていうか、そこで心が折れた時に、「よしよし」って味噌汁出すくらいしかできないのかなって。

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