料理家・栗原心平が語る「お手伝い」と子どもの成長 思い出編
料理家・栗原心平さんインタビュー 第3回
料理のお手伝いから学べること、成長することはたくさんあります。なにより、子どもが料理や食に興味を持ち、「お手伝いをしたい」と思ってくれるのは、親としてとても嬉しいことですよね。
とはいえ、お料理のお手伝いをしてもらうのは危険も伴い、なかなかハードルが高いもの。どんなことからはじめれば、子どもが気持ちよくお手伝いでき、親も子も満足できるのでしょうか。そこで料理家・栗原心平さんにお手伝いの方法を聞いてみました。
「最初のお手伝い」ですが、僕のおすすめは、卵を割ることです。調理の過程に割ってもらうのもいいですし、すき焼きだったら、自分の分だけではなく、みんなの分までお願いしてみましょう。もちろん、最初は殻が入ってしまうこともあると思います。でもそれを手でも箸でも取り除くところまでが作業です。お父さん、お母さん、途中で手出しは無用! 最後までやらせてみると満足感と達成感が得られますよ。
そもそも、子どもが気持ちよくやることを阻害するのは、たいてい親の私たち。卵を割る作業ひとつでも、親が「自分がやった方が早い」と思ってしまうと、ちょっと殻が入っただけで、「もう、私が替わるわ」となってしまいがちです。 そうならないよう、時間に余裕のあるときに手伝ってもらうというのは大きなポイントです。
とはいえ、本来は忙しいときにこそお手伝いしてもらえると嬉しいもの。そんなときにもやってもらえるお手伝いはあります。例えば、納豆を混ぜてもらうこと。混ぜ方によって、糸の引き具合や、味が大きく変わります。大切なのは、今日の混ぜ方を評価してあげることです。
「パパがやるときよりも、よく混ぜてくれたから美味しいね」、「丁寧にやってくれたから美味しいね」というように。これは、大根おろしも同じで、「おろし方がこうだったから美味しいね」と、きちんと理由をつけて褒めてあげると、子どもは単に「ありがとう」と言われるよりずっと満足感があり、自尊心が満たされ、達成感もいつも以上に得られると思います。
その他に、小さなお子さんでもやりやすいお手伝いだと、野菜についている水分をスピナーで切ることや、食卓の準備をしてもらう、ということもありますよ。お気に入りのランチョンマットを敷いてもらったり、お箸や取り皿の準備をしてもらったり。ご飯をよそうことだって立派なお手伝いです。
お味噌汁づくりもいいお手伝いになりますよ。ポイントは、「自分で味を決めさせる」ことです。小さなお子さんだと具の準備は難しいかもしれませんが、味噌を溶いて入れることならできると思います。味をみながら、入れる量を自分で考えてやってみてもらう。入れ過ぎれば辛くなるし、少な過ぎれば味が薄い。「もっと味噌を入れればよかった」、「もう少し減らせばよかった」、「じゃあ次回はこうしよう」と、お味噌汁だと次へつながることがとてもわかりやすいですよ。お味噌汁は頻繁につくるご家庭も多いでしょうから、失敗したなら翌日またリベンジできて進歩がわかりやすい。続けて味を決められるのは本人も嬉しいと思いますよ。
「煮干しの頭」を取るといった、”出汁のお手伝い”ももちろん素敵ですが、「味を決める」というお味噌汁の一番重要な、いわば”メイン”のところをやってもらう方が、子どもの満足感は高くなると思います。
食に興味があるから手伝う、というのは自然の流れかもしれませんが、食に興味のないお子さんが、お手伝いをきっかけに食に興味を持つということも実際多いんです。
そしてお手伝いは、脳科学的に言うと、「非認知能力」を伸ばす効果もあると言われています。料理は常に先の行動を考えながら作業をしますが、”先を見通しながらする”ことは、通常の勉強ではなかなか身につかないことですよね。
無理矢理お手伝いの作業を作るのは、親にとっても子どもにとってもストレスでしかありませんが、お父さん、お母さんは無理なくやれることを楽しくやってもらえる環境をつくってあげられるといいですね。
取材・文 浅妻千映子
栗原 心平さんのおすすめ記事
今読まれている記事
コクリコのおすすめ記事
栗原 心平
料理家。 幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、料理家としてテレビや雑誌などを中心に活躍。仕事で訪れる全国各地のおいしい料理やお酒をヒ...