ごはん作りは「がんばらなくていい」 料理家・コウケンテツが見つけた「子育ての大切な時間」を味わう極意
コウケンテツさんも作りたくないときがある 「限界ごはん」 #6 子どもへの家事分担の方法
公私ともに日々一緒に歩むコウケンテツご夫妻。第2回では相手の直してもらいたいことの伝え方についてお聞きしました。今回は家族をほめ合うことときちんと言葉で伝えることの大切さについて、コウケンテツさんと妻・綾さんにお聞きします。
もともとは他人の夫婦。違う家庭で育っているからこそ、結婚してから相手に対して驚くことや気づくことが出てきたりすることも。コウケンテツさんの妻・綾さんも結婚して驚いたことがあったと言います。
綾さん「家族や夫婦って、よく”うちの人は全然ダメで~”など、身内をあえて悪く言ったりすることがありますよね。私もそうでした。それが、コウさんのご実家は家族をすごくほめ合うんです! お義母さんが”うちのてっちゃんはもうかわいくてね~”とか、”みんなに慕われているのよ~”とかすごくほめる。そうするとコウさんも”お母さんのこの料理がすごくおいしかった”とか言ってずっとほめ合い。大人になってからもこんなに家族同士でほめるの!? と最初はビックリしましたね(笑)」
コウさん「このほめ合い、綾さんに言われるまで気がつかなかったですね。”うち変わってたんや!”って(笑)」
綾さん「でも、こうして家族の間でほめるのは理にかなっていますよね。コウさんのご実家をみて、”一番近くにいる家族がこうやってほめてくれたら嬉しいだろうな”と。私自身は、恥ずかしさもあって家族同士でほめ合うことがあまりなかったので、意識的にほめ合ったほうがいいなと思いました。今は子どもたちのこともほめて育てているおかげか、長男はすごく自己肯定感が高い子に育っているように思います。それはやっぱりコウさんの力かなと思います」
コウさん「長男を寝かしつけるとき、いかに長男が素晴らしくて、いかにみんなに愛されているかを僕は毎晩毎晩、枕元で語りかけていました。半分寝ながらも本人はふんふんと聞いてたけど、自己肯定感にはそれがよかったのかもね(笑)。でもね、女の子だとまた違う反応です。娘相手にそれをすると”パパ、もういいから”って言われちゃって(笑)」
お互いを尊重し、ほめ合うコウさんご家族。今までにケンカや意見が分かれて困ることはなかったのでしょうか。
コウさん「う~ん、どうだろう。仕事で意見が分かれることはありますけど。……あ、でもこんなことがありました。長男が塾に行き出してからのことです。僕は晩ごはんを家族で食べることが大好きなので、本当なら17時ぐらいから食べたいぐらいなんです。でも塾に通うようになってからは塾や塾の宿題などで綾さんと長男と一緒に晩ごはんを食べられなくなることが多くなり、イライラしてきちゃって……。この前も”塾の宿題は早く終わらせないとダメなんだよ”って、ついイライラした口調で言ってしまいました……。そうしたら”なんでそんなに早くしないといけないの?”と長男に聞かれたので、”早くしないと晩ごはんが遅くなるから”と言ったら……」
綾さん「長男が、”えっ、僕のためじゃないの? 晩ごはんのため?”って(笑)」
コウさん「そうなんです。長女からも”パパは晩ごはんの時イライラするよね、眉間にしわ寄せるよね”って言われたことがあって、ハッとしました。先に食べていればいいんですけど、子どもが成長して勉強も大事になっているのに、まだ僕自身が家族みんなで晩ごはんを一緒に食べたいという気持ちから変われていない。子どもの早い成長になかなかついていけないんです。”一緒にごはんを食べねばならない”という、”しなければならない”に囚われているところがあるんでしょうね」
コウさん「晩ごはんのこともですけど、僕はつい不機嫌になってしまうことがあるんです。でも綾さんが不機嫌になることはまずなくて。いつも機嫌がいい。それに綾さんは子どもにも”不機嫌な態度をとるのではなく、ちゃんと言葉で相手に伝えなさい”と諭していて、言葉を通して、きちんとお互いが納得するのが大事だよ、と言っていますね」
綾さん「言いたいことがあって怒るなら怒る。そしてきちんと相手に伝える。でもそれ以外は機嫌よくする。その中間にある不機嫌な態度は相手が嫌な気持ちになるだけだよ、と子どもたちにも伝えています。不機嫌な態度をとって相手に察してもらうようりも、言葉にして伝えた方が早く解決するように思います」
コウさん「不機嫌な態度は相手への甘えですからね。僕はわりと態度に出すことで気がついて欲しい方なので気を付けようと思っています」
綾さん「でもそうはいっても、子どもってうまく自分の気持ちを表現したり意見を言ったりするのが難しくて不機嫌になってしまうことがありますよね。そんなときは子どもの気持ちを含めた細かいケアをコウさんがやってくれているんです。子どもたちの機嫌が悪いとき、”なにか原因があるんでしょ?”って聞いてくれる。それはありがたいですね」
コウさん「ムッとしていたら”なんであの時言わなかったの?”とか子どもに声をかけたりしてね。そいういうときはちょっと時間をおいてから聞くようにしていますね」
お互いに補い合っているコウさんご夫妻のパートナーシップ。第4回は「これからの夫婦の在り方」についてお聞きます。
取材・文 上坂美穂
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コウケンテツ
料理家。旬の素材を生かした手軽でおいしい家庭料理を提案し、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。また30か国以上を旅し、世界の家庭料...