赤ちゃんの「はじめの一歩」に4ヵ国同時密着 子育ての多様性と共通点

#4 子どもの想像力を理解するために大人が観たい映画 世界各国の赤ちゃんの成長ドキュメンタリー『ベイビーズ ―いのちのちから―』

映画評論家:前田 有一

Ⓒ2010 Chez Wam/Thomas Balmes
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子どもの想像力について考えさせられる映画を、映画評論家の前田有一さんがピックアップ。第4回は、世界各国の赤ちゃん4人の成長ドキュメンタリー『ベイビーズ ―いのちのちから―』について解説してもらいました。

世界各国の赤ちゃんの生命力を捉えたドキュメンタリー

【あらすじ】
アメリカ、ナミビア、モンゴル、日本。4つの国の、4人の赤ちゃん。同じ時代に生まれ、まったく違う環境で育つ赤ちゃんたちが、誕生してから「はじめの一歩」を踏み出すまでの1年間をじっくりと撮り続けたドキュメンタリー。小さな体から、溢れんばかりの力を発揮する赤ちゃんの魅力に迫る。

小さな身体に大きなエネルギーを秘めた赤ちゃんたちの1年を追いかけたドキュメンタリー。  画像提供:エスパース・サロウ

国籍も育つ環境もまったく異なる4人の赤ちゃんたち。生まれてすぐの頃からハイハイを経て歩き出すまでの1年間を映し出した映画です。赤ちゃんと接する家族の姿からは育児のヒントも得られそう。

「世界中のいろいろな国で育つ赤ちゃんの成長を、同じ時系列で撮影しているちょっと変わったドキュメンタリー映画です。ナレーションやBGMは一切ありません。淡々とした映像だからこそ、赤ちゃんの生命力をひしひしと感じることができます」

モンゴルのバヤルジャルガルちゃんは、牛や羊と一緒に暮らしている。  画像提供:エスパース・サロウ

ポイント1 先入観を打ち砕いてくれる「世界の子育て」 

「私たちは日本のきれいな家で育つ赤ちゃんしか知りませんよね。でもそうではない赤ちゃんが世界にはたくさんいます。

日本では家族が買い与えた美しい積み木や、車のおもちゃなどで遊んでいます。清潔なプラスチックの歯固めを噛んでいたりするわけです。でも、ナミビアは泥水の中でバシャバシャ遊んだり、ハエとたわむれたりしているんですよね。

もちろん泥水が溜まっている場所は日本にもありますし、ハエだって飛んでいます。でも日本では、ナミビアの赤ちゃんと同じようには遊びません。

私たちが思っているよりも、はるかに世界の育児は広がりがある。いい意味で子育ての先入観を打ち砕いてくれる映画だなと思います」

ポイント2 育児の「当たり前」を疑うことで寛大になれる

ナミビアの少数民族ヒンバ族のポニジャオちゃんは、おとなしくて踊りが好きな女の子。  画像提供:エスパース・サロウ

「育児方法は人それぞれ異なりますが、基本的に日本人は日本人のやり方しか知りませんよね。自分なりの方法で育てようと思っていても、身近な社会の“当たり前”の影響を受けてしまうものです。

でも、当然ながら世界にはいろいろな育て方がある、映像を通してそのことを教えてくれるのがこの映画です。日本で暮らしていると本当にびっくりするような育て方をしている国がたくさんあります。

例えば、ナミビアでは砂だらけのところを赤ちゃんが這い回っていたり、『それちゃんと研いでいるの!?』と心配になるカミソリで赤ちゃんをスキンヘッドにしたり。それでもたくましく成長していく赤ちゃんを見ると、人間の強さを実感します。

この映画がおもしろいのは、先進国から発展途上国まで、いろいろな国の赤ちゃんを同時期に撮影していることです。日本の都市部と、モンゴルの大草原で育つ赤ちゃん、それぞれの置かれた環境のギャップに驚かされます。

特にこの映画をおすすめしたいのは、“子育てはこうしなければいけない”とひとつの正解に固執してしまったり、たくさんのマニュアルに惑わされて何が大切なのかわからなくなったりしているお父さん、お母さんたちへ。 

本当の意味での多様性あふれる子育ての現実を知ることができるので、『そんなにがんばらなくてもいいのかも』と自分に対して寛大になれると思います」

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