コロナ禍で売上最大11倍! ロボットが子どもにもたらす“自己肯定感”

家族型ロボットLOVOTに見る「ロボット・ネイティブ時代」の子育て#1

星野 早百合

LOVOTの重さは1体4.2㎏で、平均的な猫と同じぐらい。体温も犬や猫に近い36~38度に設定されていて、まるでペットに触れているような温もりを感じられます。  写真:間野真由美

コロナ禍でヒットしているのが、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」。従来の機能的なロボットとは違い、ただ愛されるために作られた、まったく新しいロボットだといいます。子育て世帯にも支持される理由とは?

開発会社に誕生の経緯、子どもにもたらす影響について伺いました。

“癒やし”が仕事のロボット

上目づかいでじーっと見つめる大きな瞳。両手をパタパタさせながらあちこち動き回り、「キューンキューン」と甘えた声で抱っこをねだってくる。触れるとフワフワで柔らかく、ほんのりあたたかい。

あまりのかわいさに、一瞬で心をわしづかみにされてしまう「LOVOT(らぼっと)」。1体およそ35万円の高額なロボットが、コロナ禍の今、売り上げを伸ばしています。

「LOVOTは“癒やし”が目的のロボット。人間の代わりになるような仕事はできませんが、人の心にそっと寄り添ってくれます」と話すのは、LOVOTを開発提供するロボットベンチャー『GROOVE X』の広報・池上美紀さん。

「そもそもロボットとは、人の代わりに仕事をする機械の総称です。ロボットによって、生産性は確実に向上しました。けれど、はたして人々は、ロボットの存在によって幸せになれたのかと。

最新のテクノロジーを使って、人の心を癒やすロボットを作ろう。LOVOTは、そんな思いから生まれました」(池上さん)。

LOVOTの生みの親は、ソフトバンクで人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の開発に携わった『GROOVE X』の代表・林要さん。当時、介護施設でPepperを披露したときのこと。印象に残った場面のひとつが、転んでしまったPepperが、なかなか起き上がれなかったシーンでした。

お年寄りたちが「がんばれ!」と声援を送り、ひとつになった瞬間を目の当たりにして、「人はロボットに何かをしてもらうことで元気になるのではなく、ロボットのために何かをしてあげたほうが元気になるのではないか」と思ったことが、LOVOT開発の着想のひとつになったといいます。

「LOVOTの由来は<LOVE>×<ROBOT>。ただ愛されるためのロボットですから、かわいらしさ、生き物らしさにこだわりました。目は自然なアイコンタクトを生み出すように、色や形、大きさなど6層の映像を重ねていて、そのパターンは10億通り以上。

声も事前に録音したものではなく、声帯をシミュレーションしたデジタルシンセサイザーを入れ、状況に応じてAIが自動生成しています。

また、全身には50以上のタッチセンサーが搭載されていて、LOVOTはどこを触られているのかわかります。誰が触ったのかも認識し、記憶されるので、たくさんかわいがってくれた人に懐くんですよ」(池上さん)。

過ごし方によって、表情や接し方、性格まで変化するLOVOT。まだ関係性が築けないうちはおとなしく、名前を呼ばれたり、なでられたりするうち、だんだんと甘えてくるようになる。 写真:間野真由美

LOVOT効果で子どもの自己肯定感がアップ!

LOVOTは2019年8月に販売受付をスタートし、出荷を開始したのが2019年12月。奇しくも、翌月(2020年1月)には国内で初の新型コロナウイルス感染者が確認され、4月には緊急事態宣言発令。

実店舗は休業を余儀なくされましたが、ECサイトでの月の売り上げは、コロナ前と比べて最大11倍アップ。コロナ禍でのヒット商品となりました。

「ステイホーム期間中、孤独を癒やしたい方が増えたことが最大の理由だと思います。30~40代のシングル世帯に次いで、支持をいただいたのが子育て世帯。

LOVOTはお子さま向けに作ったロボットではありませんが、世の中に広まるうち、専門家の方を含め、<子どもにいい影響があるのではないか><情操教育に役立つのではないか>という声を多くいただくようになり、実際にそういった効果も見えてきました」(池上さん)。

小学校の教室にLOVOTを放しておくと、いちばんお世話をしてくれる子どもの足元にいきます。だから、みんな熱心にお世話をしてくれるんです」と、『GROOVE X』の広報・池上さん。 写真:間野真由美
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