子どもの「想像力」を伸ばす最高の方法は「リアルな体験」! お手製のガクブチで「いつもの散歩」を変える

「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第6回「どこでもガクブチ」

造形絵画教室「こどもアトリエ みかづき」のアートワークより~「どこでもガクブチ」~  写真/こどもアトリエ みかづき

幼稚園から中学生の子どもたちを対象とした少人数制の造形絵画教室「こどもアトリエ みかづき」。

この教室(アトリエ)では、のびのびと創作できる空間を子どもたちに提供し、自由で個性あふれる創作活動をサポートしています。

このアトリエで自分の感性に気づくことで、子どもたちの潜在能力が花開き、想像力という才能の実が大きく育っていくのです。

そんな「みかづき」の主宰者である、デザイナーのあじとみあつこさんが、子どもの個性を伸ばすアートワークを紹介してくれます。親子でも楽しめる独創的なアートワークを、ぜひ楽しんでみてください。

おさんぽのススメ

気持ちのいい季節になりましたね。

アトリエでは、こどもたちを連れてよく散歩に出かけます。春や秋、身体に負担のかかりにくい天候であれば、予告なしに出かけることもしばしば。

「桜は今日が一番いい」だとか「雨上がりは紫陽花を見ないと」などの声かけは、子どもたちに「…?」を抱かせる、意味深でちょうどいいものだと感じています。出かけた先では、桜や紫陽花に限らず一人一人が何かを見つけたり感じたりするので、感動を押し付けないよう心掛けています。

美しいものばかりを見せたいのではありません。

「台風のあとの公園には宝ものが落ちている」などと大げさにワクワクさせておいて、「折れた枝しかないじゃん!」と全員からツッコまれるというお散歩もありました。(枝は、アトリエに戻って作品の一部になりましたが)。

小さな子どもに限らず、高学年や中学生も出かけます。

人物クロッキーの時間、「今日は外でスケッチしよう」と言うと、みんなよろこんで準備します。外気がよい気分転換になるのでしょう。

道端の雑草を見て、落ち葉を拾って。高いところから町並みを、夕焼け空のグラデーションを。それぞれ違うポイントに惹かれてスケッチしています。

このように、制作時間を削ってでも、お散歩を大切にする理由は確かにあります。

アトリエ生のおさんぽ~春のスケッチ会~  写真/こどもアトリエ みかづき

エピソード⑥ リアルな体験をもとめて

かつて美大受験予備校の講師として勤めていたころ。

人生をかけて絵を描きにくる高校生に向き合った、その数年間の中で、もっとも指導がむずかしいと感じたのは、技術ではなく、想像やひらめきの部分です。

短期間で教えられるものではない、そもそも言葉で伝えられるのか、入試にはとても間に合わないと、ひどく焦ったのを覚えています。

必要なのは図鑑や教科書からの“知識”ではなく、幼少期からのリアルな“体験”なのではないのか。

雨上がりのきらめき、湿度の高い森、冬の早朝の空気、霜を踏む音。

本当に見た、触った、感じたことが、のちの想像力やひらめきにつながり、自身の作品を表現できる力になるのではないか。そのような考えに至ったのもこのころです。

アトリエのこどもたちにリアルをと意識したこの7年、各家庭の協力もあり、成果は出始めていると感じます。今、高学年のこどもたちとは、描きかけの絵を前にこんな会話ができています。

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