実は子どもには難しい「想像力」の育て方 専門講師が伝授する簡単・おすすめアート
「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第3回「スクラッチで想像のお手伝い」
2024.01.24
多くの子どもがゲームに没頭する理由のひとつに、疑似体験できるから(例えば本当に空を飛んだ気持ちになれるから)だと私は思っていました。
でもそれは、主人公を自らに置き換えて想像できる人に限ったことなんですね。
大人に比べてあらゆる経験の少ない低年齢の子どもには、ゲームの中で空を飛ぶこともただの移動の動作に過ぎません。それでもなんとか、本当に空を飛んでいる想像をしてみたらどうかと、私はしつこく話しかけました。
「高いし速いしちょっと怖いかな。鳥にしがみつくように乗るかもしれないね」
「ジェットコースターに乗ったことある?」
「ブランコを高くこいだことは?」
「私が、おんぶして走ろうか!?」
絵を描いた本人でもないのに、空を飛んだこともないのに、必死で説明しているのがおかしくて、最後はふたりで大笑いしていました。
Cちゃんは「わかんないよーー」と笑いながらも、絵の中の自分の髪の毛を、少しうしろになびかせて描き終えました。
深く想像してみることで、目に見えない風やスピード感も描き加えることができたのです。私にとっても印象深いエピソードでした。
アートワーク「スクラッチで想像のお手伝い」
本屋でもよく見かけ、もはや定番といえるスクラッチアート(削り絵)ですが、子どもの想像力を刺激するのにピッタリなアートです。
スクラッチ(ひっかき絵)はまず、きれいな色を敷き詰めるのに“苦労”します。次にそれを黒で塗りつぶす“おどろき”と台無しにしたくない“葛藤”。そして最後に“感動”や“達成感”があります。
10歳くらいまでは、画用紙一面を塗りつぶすのではなく、形を指定して取り組むことで想像を広げやすくなります。
【用意するもの】
●クレパス
●白画用紙
●ティッシュペーパー
●割りばしペン(割りばしの先を鉛筆削りで尖らせる。尖らせすぎないこと)
1. 明るい色をえらび、ぬる
クレパスの箱の中から、白以外で「明るい」と感じる色を選びだす。ランダムに色を変えながらぬり込んでいく。このとき、何かの形にしておくのがオススメ。ただの長方形でも、“水そう”や“宝ばこ”などに見立てることで、ひらめきのきっかけになる。
2. 黒色でぬりつぶす
幼年は、せっかくきれいな色でぬったのにと嫌がるかもしれません。黒でなくても、濃紺色や深緑色、こげ茶色でもOK。1で敷き詰めた色の上からぬり重ねる。
3. 割りばしペンでお絵かき
割りばしペンを持ち、2に線を引いたり絵を描いて黒色をけずっていくと、1のきれいな色が再びあらわれる。ティッシュペーパーでペン先を拭き取りながら進めること。
【ポイント】
・幼年は、小さいサイズからチャレンジしてください。1、2の作業は見た目以上に握力や根気が必要です。様子をみて手助けを。
・ 割りばしペンは先を尖らせすぎると、線が細くなり下地がきれいに見えません。先端は2~3mmほどの太さを残して削ってください。
・割りばしペンの扱いには十分お気をつけください。
♦あじとみあつこ
1978年生まれ。千葉県松戸市在住。大阪芸術大学デザイン学科中退後、美大受験予備校講師などを経て、雑誌編集、イラスト・デザイン制作に携わる。2017年より造形絵画教室『こどもアトリエ みかづき』を運営。https://www.ajitomiatsuko.net