「勉強を教えない塾」がメディアで超話題 「探究学舎」の驚きのカリキュラムとは オンライン授業を「親子が初体験」
【今こそ学力観のアップデートをするとき】好奇心の種をまく探究学舎の学び#2 オンラインコース・参加ルポ
2024.07.02
ワクワクを引き出す装置が登場
ライターと長女が受けたオンライン授業(広げるコース「物理実験」第1回)は、森田氏がメイン講師。「天の声」と呼ばれるもう1人の講師とともに、2人で授業を進めていきます。
森田氏は自身を「タロちゃん」と自己紹介し、開始直後からテンポ良く子どもたちとやりとりしていきます。その雰囲気は、まるでゲーム大会のよう。ワクワク感が漂い、初めて参加する娘も自然とテンションが上がります。
2ヵ月続くコースの初回ということもあり、まずは内容を説明。森田氏は、子どもたちに話しかけたりダジャレを交えたりしながら、物理とは「身近な自然のルールを解き明かすこと」だと伝えます。
すると突然ここで、テレビ番組・ピタゴラスイッチに出てくるような巨大な「RGbマシン(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン)」という装置が登場。探究学舎がつくったというこの装置には、これから学ぶ8つの自然の法則が隠れていると説明がありました。
【RGbマシン】
1910年代にアメリカの漫画家ルーブ・ゴールドバーグが考案した「ただお肉にこしょうをかけるだけ」のような簡単な目的のために、わざわざたくさんのギミックを連鎖反応させて目的を達成させる「複雑なからくり装置」のこと。
「自然のルールがわからないと、このマシンがどうやって動いているのかわからない。でも今回の物理実験編をすべて受けると、君たちはRGbマシンが作れるようになっちゃいます! 作りたいと思った人~?」との呼びかけに、子どもたちは一斉に画面の奥で手を挙げます。特段理科が好きでもない娘も「最高じゃん! 作りたい!」と勢いよく挙手していました。
クイズで「なぜ?」を深掘り
この日の授業は、RGbマシンの最初に登場した自然の法則、「落ちるルール」の考察がテーマです。物理では「落体の法則」と呼ばれています。もちろん、授業の主眼はこうした言葉を覚えることではなく、実験しながらそのルールを解き明かして、「なるほど! おもしろい」と子どもたちが感じること。そこでまずは、子どもにとって身近な内容からクイズが出題されます。
【クイズ】
①と②、どっちが早く落ちる?
①落ち葉 ②木の実
クイズは「カフート」というスマホアプリで行われ、娘も「これは②でしょ!」などと言いながら積極的に答えていきます。このほかにも、雨と雪、花びらと枝、お札と金庫など、次々に「どちらが速く落ちるのか」というクイズが展開されます。
4つのクイズに答えたところで、子どもたちは共通点に気づき始めます。そこで森田氏はすかさず、「物によって落ちる速さが違うのはなぜだろう?」と質問。子どもたちは次々に手を挙げこう答えます。「重い物が先に落ちるから」。仮説が共有され、いよいよ実験に突入します。
自分で行う「実験タイム」でますます夢中に
オンライン授業ではあらかじめ準備物としてティッシュペーパー2枚とペットボトル(水入りと空の2本)の用意がアナウンスされており、それぞれが実験に取り組めるようになっています。
ここからは、子どもたちが考えた仮説「重い物が先に落ちる」を、実際に一人ひとりが自宅で実験することで確かめていきます。
【実験1】
ティッシュと水の入ったペットボトル、どっちが速く落ちる?
最初は一番軽い物と重い物で比較します。オンライン上で「3、2、1」とかけ声をかけると、みんな一斉にティッシュと水の入ったペットボトルを落とします。
結果はもちろん、ペットボトル。子どもたちは「やっぱり重い物が速く落ちるんだ」という表情です。でも、ここで森田氏から「本当に?」という問いが投げかけられます。
「よく考えてみて。同じ傘を『開いたまま』と『閉じた状態』だったら、同じ速度で落ちる?」今度はこれを確かめるために、実験2を行います。
【実験2】
丸めたティッシュと広げたティッシュ、どっちが速く落ちる?
さすがに傘を落とす実験を家ではできないため、ティッシュを傘に見立てました。
丸めたティッシュ(閉じた傘)のほうが速く落ちた結果に、「重さは同じなのになぜ?」とこれまでの仮説への疑いが生まれます。「もしかして形に関係するの?」など、それぞれ新しい仮説を立てる子も出始め、それを確かめるためにまだまだ実験は続きます。
【実験3】
丸めたティッシュと水の入ったペットボトル、どっちが速く落ちる?
こちらは意外にも、ほぼ同時という結果に。
「あれ? やっぱり重さは関係ない?」と、ますます疑問が湧いてきます。そして、とうとう最後の実験に移ります。
【実験4】
水の入ったペットボトルと空のペットボトル、どっちが速く落ちる?
同じ形で重さが違うとどうなるのか? ドキドキしながら実験した結果は……ほぼ同時に落ちた子がほとんどでした。こうして子どもたちは、どうやら仮説どおりではなさそうだ、と気づいていきます。
今回の実験は、ガリレオが発見した「重い物も軽い物も落ちる速さは同じ」という自然のルール(落体の法則)の再現です。
子どもたちは、普段の感覚で何となく「重いものが先に落ちる」と考えています。こうした当たり前に対し、「本当にそうなの?」という問いを投げかけたことで、「自分で確かめたい」「知りたい」という気持ちが最大限に引き出されます。
そして、自らの手を動かす実験を実施。実際にやってみたことで、実感を伴って理解することができました。
最後に、落体の法則はあくまで、「真空状態でのルール」であることが解説されます。地球上には空気があるため、最初のクイズのような結果(葉っぱと木の実では木の実が先に落ちる)になることを伝えると、子どもたちは納得した表情を浮かべていました。