おうち時間に楽しもう! ”非認知能力”を育てるアナログゲーム遊び 遊び方編
『子どもと育ち研究所』主任研究員・宍戸信子さんインタビュー 第2回
2021.02.25
子どもと育ち研究所・主任研究員:宍戸 信子
アナログゲームは大人と一緒に遊ぶことに意味がある
大人が一緒に遊ぶときの遊び方について教えてください。
「遊びながら受け答えしてあげることで“非認知能力”が育っていきます。特に小さいお子さんはまわりの大人(兄弟・姉妹や友人など自分以外の人)と一緒に遊ぶことに意味があります。
最近は、“非認知能力”と並んで、“アクティブ・ラーニング”という言葉もよく耳にされるかと思います。“アクティブ・ラーニング”とは、子どもたちが積極的、能動的に学ぶということ。幼児教育では、大人が子どもたちとどう関わっていくかが大切と言われており、親が誘って遊ぶのは受け身なので“アクティブ・ラーニング”ではないと思うかもしれません。ですが、すべての学びは”誰かから”、”何かから”の働きかけや刺激によってはじまるので、自分のことをよく知っていて、なおかつ調整してくれる人。つまりお父さんやお母さんが入り口を作ってあげることが大切なのです。
私たち保育者もそうですが、大人は子どもたちに“きっかけ”を準備して、手渡す大きな役割があるのです」
遊びはもちろん、勉強も“面白い”と思ってやれる子は続きますよね。アナログゲームもまた、学びのきっかけになるんですね。
「だからこそ大人たちは真剣に遊ばないといけないんです。アナログゲームはたくさんの種類が発売されているので、『こんなテーマのゲームが好きかな?』と、お子さんが好きな“こと”や“もの”を尊重し、また、大人自身がお子さんと共有したいテーマを選んであげるようにしてください」
一緒に遊ぶときにはどんなことに気をつけたらよいでしょうか。大人が本気で相手をして、負けると泣いてしまう子もいますよね。わざと負けてあげることも必要なのでしょうか?
「わざと負けてもいいのですが、それがバレてはいけません。自尊心が傷ついてしまいますから。
5〜6歳くらいのお子さんだったら、『ハンディをあげようか?』と聞いてみるのもいいかもしれないですね。子どもだから、ではなく、子どもの存在を尊重して受け止めることが大切です。子どもが大人にかなわないのは仕方のないこと。負けてお子さんが泣いてしまったとしても、それもひとつの学びです」
子どもが楽しめるように演出することが大切
“負けて悔しい”という経験をするのも大切ということですね。
「ただ、負けるとゲーム自体をやらなくなってしまう子もいます。そういう場合には、『お父さん、今日は疲れて弱っているから勝てるかもよ?』と、お母さんが促します。そしてお父さんは弱ったふりをして負けてみる。こんな、”子どもが勝てて楽しめる”演出をしてあげてください。
また、どんなゲームをすすめても遊ばない子もいますよね。そのとき、『うちの子はダメだ』と拙速に諦めるのではなく、『やりたくなかったんだったんだね』と寄り添うことも必要です。親としては『せっかく買ったのに……』と思うかもしれませんが、『どうして遊ばないの?』と迫るのではなく、『そういう気分じゃないんだね』と受け容れてあげてください。
ゲームでもなんでも初めてのことは慎重になるのは当たり前です。そこでは大人である私たちの“非認知能力”が必要となってきます」
「相手を配慮する」という私たち大人の“非認知能力”も必要なんですね。
「アナログゲームはひとつのゲームでも、遊び方が何通りもあります。相手の年齢や能力、人数に合わせて楽しめる方法を大人がオリジナルで考えてみてください。
例えば1人ではやりたがらない場合でも、2人で1チームになって協力し合う方法もあります。チームで知恵を出し合うことで、相談できる安心感が生まれる。だから『1人じゃないならやってもいいかな』と思う子もいるはずです。
さまざまな方法を探って、みんなの輪の中にいられる。自分も一員になれる、ということを理解して欲しいなと思います。集団の中で話が聞けない子、はみだしちゃう子、癇癪を起こしちゃう子=よくない子、ではないですからね」
遊べないときも、まずは「わかった」と受け止める
遊んであげたいけど、つい後回しにしてしまう場面もあると思います。そういう場合はどうしたらいいでしょうか?
「遊んであげたいけど時間がないときもありますよね。それにステイホームが続き、大人も遊ぶ気分じゃないときだってある。そんなときでも、まずは『あなたが遊びたい気持ちでいるのはわかったよ』ということを必ず伝えてあげてください。それだけで安心できる子は多いはずです。頭ごなしに『今はダメ!』と言われると不安になり、逆にしがみついてしまいますから」
確かに、遊んでくれるまで粘られるということが何度もありました。
「とはいっても、これは2、3歳くらいまでの間に”一緒に過ごすと楽しい”という経験をさせてあげることが大事です。そして大きくなったときに「今はダメだけど、全否定じゃない」、ということをわかってもらえるようになってきますから。
年齢にもよりますが、4歳くらいまでは言葉の内容だけではイメージできないので、『1回だけやろう』とか、ひとりでできるものなら最初一緒に遊んで、『続きはお願いしてもいい? できたら教えてね、楽しみにしてるよ』と途中から抜けたり、すぐに終わるスピード系や練習が必要な技術系のゲームを練習しておいてもらったりするのも手です。
決して自分の欲求の否定ではない、自分のことを分かってくれてるという感覚を体験したら、5歳を過ぎる頃には、『やりたいけどごめんね』とか、『これが終わったらね』といった交渉もできるようになってきますよ」
おすすめゲーム編では、宍戸さんのおすすめゲームの数々をご紹介します。
取材・文 石本真樹
宍戸 信子
『子どもと育ち総合研究所』主任研究員。京都府生まれ。平安女学院短期大学保育科卒業。幼稚園教諭・保育士。幼稚園教諭として保育に没頭後、辻井正氏の主宰する「おもちゃライブラリー」での障害児療育活動やおもちゃによる保育活動、ヨーロッパの保育との出会いを通して、保育・幼児教育を学び直す。ピラミッドメソッド・ティーチャーとチューターの両資格獲得。2002年~2003年、オーストリアのオルフ研究所にて、「創造的な音と動き―オルフ教育」のインターナショナルコースに参加。「子ども・遊び・保育素材」「幼児期の保育・教育とは」「音・動き・造形-創造的な表現活動」などを研究・実践する。さらに現在は、保育・教育現場から依頼される様々なテーマに対しての研修や保護者や福祉の支援者などへの働きかけ、遊びを使ってのワークショップなども務める。
『子どもと育ち総合研究所』主任研究員。京都府生まれ。平安女学院短期大学保育科卒業。幼稚園教諭・保育士。幼稚園教諭として保育に没頭後、辻井正氏の主宰する「おもちゃライブラリー」での障害児療育活動やおもちゃによる保育活動、ヨーロッパの保育との出会いを通して、保育・幼児教育を学び直す。ピラミッドメソッド・ティーチャーとチューターの両資格獲得。2002年~2003年、オーストリアのオルフ研究所にて、「創造的な音と動き―オルフ教育」のインターナショナルコースに参加。「子ども・遊び・保育素材」「幼児期の保育・教育とは」「音・動き・造形-創造的な表現活動」などを研究・実践する。さらに現在は、保育・教育現場から依頼される様々なテーマに対しての研修や保護者や福祉の支援者などへの働きかけ、遊びを使ってのワークショップなども務める。